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四月二十二日……正午……。

ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)はようやく『トワイライト・アクセル』さんから解放された。


「ナオトさーん、もう少しだけ私の抱き枕になってくださいよー」


水色のショートヘアとテニスウェアのような服と水色の瞳が特徴的な『トワイライト・アクセル』さんが彼にすがると彼はピシャリと、こう言った。


「それは無理だ。これ以上は付き合えきれない」


「えー、そんなー。もっとナオトさんを感じていたいですー」


「誤解されるようなことを言うな! とにかく、お茶の間に行くぞ!」


彼が彼女の手を引っ張ると、彼女は鼻から滝のように鼻血を出した。


「あー! ショタが私を強引に引っ張ってるー! 私もう死んでもいいですー!」


「おい! 勝手に死のうとするな! ほら、行くぞ!」


「はいー」


彼は彼女の手が捥《も》げない程度に、お茶の間まで引っ張った。



「おーい、ミノリー。今日の昼ごはんは何だー?」


彼がミノリにそう言うと、台所の方からミノリの声がした。


「今日は『牛丼』よー!」


「何!? 『牛丼』だと!? やったー!」


彼が両手を振り上げると、トワイライトさんは天井に頭から突っ込んだ。


「……あっ」


「ショタコンの道は険《けわ》しく、長……かった」


「お、おい! 勝手に死ぬな! 今、助けるから!」


彼は背中から鎖を二本出すと、それでトワイライトさんを天井から引き抜いた。


「ツキネ! 頼む!」


「はーい」


ツキネ(変身型スライム)はそう言うと、固有魔法で天井を元通りにした。

ただ水をかけたようにしか見えないが、それには特殊な魔力が込められているため物を修理したり、傷を癒《いや》してくれる。


「ありがとう、ツキネ。助かったよ」


「いやあ、それほどでもー」


彼女がニコニコ笑っていると、周りに座っている者《もの》たちは頬をぷくーっと膨《ふく》らませた。


「おい、大丈夫か? 返事をしろ!」


「あー……ここは天国ですか? ショタが私の身を案じてくれるなんて、夢みたいですー」


「夢じゃない。あんたはまだ生きてる」


彼は彼女の頭を太ももに乗せると、優しく彼女の頭を撫でた。


「あー、気持ちいいですー。やっぱりここは天国なんですねー」


「おーい、勝手に天国に行くなー。戻ってこーい」


彼が彼女のおでこにデコピンをすると、彼女はようやく正気に戻った。


「あれ? 私、何して……。というか、どうしてナオトさんの顔がこんなに近くにあるんですか?」


「別にあんたは知らなくていい。それより、どこか痛むところはないか?」


「え? あー、えーっと、胸とか脇とか腹部が痛いですー。あー、あと、下の方も……」


「ここから追い出されたいのか?」


「ごめんなさい、忘れてください」


「よろしい。じゃあ、昼ごはんができるまで安静にしてろ」


「え? あっ、はい、分かりました」


「なんだ? 俺なんか変なこと言ったか?」


「いえ、別に何も……」


「そうか」


その直後、『牛丼』を作り終えたミノリ(吸血鬼)が全員分の『牛丼』を持ってきた。


「みんなー、ごはんよー」


『はーい!』


「おっ、来た来たー! おい、ミノリ! こっちにも頼む!」


ミノリ(黒髪ツインテール)は「はいはい」と言いながら、彼とトワイライトさんの分の『牛丼』をお盆に載《の》せて持っていった。


「おー! うまそうだなー! それじゃあ、早速。いっただっきまー……」


「ナオトさん」


「ん? なんだ?」


「私、ここから動けないほど、お腹が空《す》いているので食べさせてもらってもいいですか?」


「え? そうなのか? なら、しょうがないな。体起こせるか?」


「はい」


彼女が上体を起こすと、彼は彼女を壁に寄りかからせた。

彼は自分が手に持っていた『丼』をお盆に載《の》せると、トワイライトさんのそれと交換した。


「うーんと、こういう時は箸《はし》よりスプーンの方がいいよな。おーい! ミノリー! スプーンを一つ持ってきてくれー!」


「はーい」


ナオトにスプーンを手渡す時、ミノリ(吸血鬼)はトワイライトさんが片目を瞑《つむ》って舌を出しているのを目撃したが、彼女はそれを見なかったことにした。


「ナオトさん、フーフーしてください」


「分かってるよ、フー……フー……ほら、口開けろ」


「あーんって言ってくれないと開けません」


彼女がそっぽを向くと、彼はため息を吐《つ》いた。


「分かったよ。ほら、あーん」


「あーん……もぐもぐもぐ……」


「どうだ? おいしいか?」


「はい、とってもおいしいです。牛丼というよりナオトさんの味がしますー」


「俺の味って、どんな味だよ、まったく」


二人がイチャイチャしているのを目の当たりにした女の子たちは、トワイライトさんに対して羨望《せんぼう》と嫉妬《しっと》と憎悪《ぞうお》などが混じった眼差しを向けた。



昼ごはんを食べ終わると、ナオトはミノリ(吸血鬼)と共にミノリの作業部屋にやってきた。

二人は向かい合ったまま、立ち尽くしている。


「おい、ミノリ。俺にいったい何の用だ?」


ミノリ(吸血鬼)は何も言わずに、彼をギュッと抱きしめた。


「ミノリ?」


彼が彼女の体に触れようとすると、ミノリは彼を押し倒した。


「お、おい、ミノリ! いきなり何す……」


「欲しい……」


「えっ?」


「ナオトの血が……欲しい」


「えっ? あっ、そういうことか。それなら、そうと言ってくれよー」


「ねえ、ナオト……」


「ん? なんだ?」


「今日はいつもより、たくさん吸っていい?」


ミノリの雰囲気がいつもと違う。

なんとなく脅迫《きょうはく》されているような気がする。


「あ、ああ、いいぞ。死なない程度でなら」


「そう……。じゃあ、行くわよ」


彼は彼女から、ただならぬ気配を感じたがミノリの吸血衝動がいつもより強くなっているせいだと思ったため、拒絶しなかった。


「……カプッ!」


「……っ!? お、おい、ミノリ。もうちょっと優しく」


彼女がいつもより強めに首筋に噛みついてきたため、彼は彼女を一旦離そうとした。

しかし、ものすごい力で抱きしめられているせいで、そうすることができなかった。


「お、おい、ミノリ。一旦、離れてくれよ……。マジでやばいから」


「おいしい……おいしい……」


彼女の様子が明らかにおかしいと思った彼は大声で彼女の名前を呼んだ。


「ミノリ!!」


「……!!」


ようやく我に返ったミノリは瞬時に彼から離れて、頭を抱えた。


「あたし……いったい何を……」


彼は自分の行動をはっきりと覚えていないミノリ(吸血鬼)に近づくと、彼女をギュッと抱きしめた。


「ミノリは何もしてないよ。だから、一旦落ち着け」


「……でも、あたし、あんたを殺そうと……」


「ミノリ、今は何も考えるな。お前が落ち着くまで、こうしててやるから」


「……うん……分かった……そうする……」


ミノリ(吸血鬼)は彼に身を委《ゆだ》ねると微笑《ほほえ》みを浮かべた。

彼は彼女が落ち着くまで、優しく彼女の頭を撫で続けていた。

ダンボール箱の中に入っていた〇〇とその同類たちと共に異世界を旅することになった件 〜ダン件〜

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