降谷side
最近、セリに会わない。いや、教場が同じだから会うには会うんだけれど。例えば、朝のランニング。いつも一緒に走ってるのに今は僕達より遥か後ろを走る。休み時間、授業が終わると同時に教室から姿を消す。移動教室だって1人で行ってしまう。お昼だっていつの間にか1人で行ってしまって早々に食べ終え姿を消す。何かしただろうか。
「最近、セリに避けられてる気がするんだけど」
「ヒロもか」
「2人だけじゃないよ。俺らもセリちゃんに全然会えない」
「セリの奴、目あったら逸らしやがった」
「俺ら五条になんかやったか?」
「「「「…いや」」」」
全員思い当たる節はない。
「こりゃ、本人に聞くしかねえな」
「そうだな」
芹那side
空き教室で1人外を眺める。
「ひまー」
そう。暇なのだ。みんなといるから楽しかったのだが、あの紙に従って動いているためみんなを避けている。そのため只今ぼっちなのだ。
「嫌だなー…みんなと仲良くしたい」
「すればいいじゃねーか」
「松田?!」
「1人でなーに溜め込んでんの?」
「萩原…それにみんな。え、なんでここが分かったの」
松田と萩原を筆頭にみんなが空き教室に集まっていた。
「セリの後つけてた。ごめんね」
諸伏が可愛く謝る。私としたことが尾行に気づかないとは。それほど精神的に疲れてたのか。脅迫文がある今、それはよろしくない。
「あー、えーと、その」
「下手な言い訳はやめるんだな。なにを隠してるんだセリ」
「なんでもないよお」
「じゃあなんで避けてんだ」
「避けてないよ」
「いや、避けてんじゃん」
「うーん」
「…俺ら何かしたか?」
「なんも!みんなは悪くないんだよ」
「じゃあ何だ」
言うべきか。どうするべきか。どう言い訳するか。言ってしまえば巻き込むことは確実だ。でもここまで来てどう言い逃れる。
「セリのことだから迷惑がーとかしょうもないこと考えてんだろ?」
「しょうもなくないよ」
「俺らはそんな頼りない?」
「そんなことない」
「じゃ、教えろよ。なにを隠してんのか」
「…」
「セリちゃん、俺ら友達だろ?」
「…うん」
「じゃ、話してくれるな」
「…実は───────」
観念して話した。ここ最近、机の中に手紙が入っていること。内容は告白だったこと。だが次第に脅迫文と化していったこと。言われた通りにしたら手紙は止んだこと。そして、いつも感じる視線。きっと他教場の人間であること。
「で?脅迫文ってのは?」
「…みんなに近づくなって。近づいたらみんなに危害を加えるって」
「そうか」
「セリ、話してくれてありがとう」
「溜め込んで辛かったね。萩原さん胸貸すよ?」
萩原が手を広げる。
「萩てめえ、ふざけたこと…は?!」
私は萩原に抱きつく。
「疲れた」
「そうだねー。よしよし」
「萩原顔真っ赤じゃねえか」
「班長!しっ!!」
「「「はーぎーわーらー」」」
「で、でも、この後どうする?」
萩原が露骨に話題を変える。私は萩原の腕の中のまま。
「もう、俺らを避けるのは無しな」
「でもそしたらみんなに被害が」
「それでいいんだよ」
「は?分かっていってる?」
「わかって言ってる」
ヒロ提案。その名も誘き寄せ大作戦。(萩原命名)わざといつも通り6人で居て犯人が出てきたところを捕まえる。
「いいの?みんなが危ないんだよ?」
「そんなやられそうな奴らに見えるか?」
「そう言うわけじゃないけど」
「じゃ、心配いらねーよ」
「…ありがと」
私は萩原の胸に顔を埋めてボソッと言う。
「かんわいい!!!」
「おい萩!いつまでセリとくっついてんだよ!!離れやがれ!!」
「えー」
「萩原まだ顔真っ赤だな」
「班長!」
「「はーぎーわーらー」」
「幼馴染組怖い!」