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#カンヒュ好きと繋がりたい
八つ橋さん
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八つ橋さん
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#女主人公
coco🌹🫶
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商い通りに戻り、スバルはさっそく問題の偽サテラ探しに精を出していた
「なんかイマイチ時間感覚が微妙だけど、記憶だとそろそろ盗難は起きてねぇとおかしい気がするんだが……」
『最悪の出会い方をしたけど根がとても優しい八百屋のおっちゃんにでも聞いてみたら?』
「なあ、おっちゃん」
「なんだ、一文無し」
正面、八百屋の主人は再び顔を見せたスバルに嫌な顔を隠さずに言った
「おっちゃん、ひょっとしてこのへんでスリ騒ぎとかなかった?」
「なにも買わずに質問とかいい度胸してんな、お前。……それに、そんな騒ぎなんざ悪いが珍しくもなんともない」
「マジで!?」
「――が、さっきの騒ぎは珍しかったから覚えてるぞ。通りで二、三発、魔法がぶっ放されたからな。見ろ」
「おお、スゲーな」
「氷柱が矢みたいに飛んで刺さった跡だ。すぐに消えちまったがな」
『石の壁に穴あけちゃってるよ…怖いって!』
「氷の飛礫ぶつけんのとはわけが違うじゃねぇか……今回は過激なのかな」
「しかしこうなると出遅れたな、今回も」
『それなら優先すべきはフェルトだね?』
「だな。できれば盗品蔵にフェルトが入る前に捕まえて、ケータイと徽章を交換しちまいたいけど」
「遅く行きすぎても一回目の二の舞。かといってロム爺と合流してフェルトを待つと、二回目をそっくりそのまま踏襲する羽目になるし……」
やはり肝になるのはフェルトの居場所だ。
「『死に戻り』なら、いっそ今回は調べ回るために『捨て回』にするか……?」
『アホ昴!自分の命を軽く考えるな』
『自分より他人をの昴だからこそ、私は隣で昴の命を最優先に考えるよ』
『もちろん、昴を支えるためなら危険へと飛び込む背中を押すけど、自分の命を軽く見た判断は許しません』
「あー、頼もしいな」
「けっきょくは、生ある限りは精いっぱいに足掻くしかないな」
「んじゃま、世話になったな、おっちゃん。次はきっと、リンガ買わせてもらうよ」
「ああ、それなら歓迎だ。働けよ、無一文」
「ういうい。次はホント、金持ってこられるのを祈ってるよ」
おざなりに見送られてスバルは走り出す
向かう先は貧民街――ただし、盗品蔵とは別の方角だ。
『盗品蔵には下手に近づけない』
『だから、他の線から攻めよっか』
「フェルトの奴のねぐらか。そんなら、そこの通りを二本奥へ行った先だ」
「ありがとよ。助かったよ、兄弟」
「気にすんなよ、兄弟。――その、なんだ、強く生きろよ?」
そう言って、苦笑いしながら軋む戸の向こうに中年の顔が消える
終始、同情の色が消えることがなかったのを思い返し、作戦が通じていることにそっと拳を握った
『ズバリ、酷い風体で道場を買って情報を聞き出そう大作戦』
「今までの経験則だな」
「んで、四件目の情報だけど……今のとこ、三つは一致してんな」
スバルに同情し、提供された情報は、三つほどが一致している。おおむね正しいとみて問題あるまい
外れの一件も、かなり残念なくらい耳の遠い老婆の意見だから、こちらを騙そうという意図はきっとなかったに違いない
「これでかねぐらは掴めたと思うが……問題は戻ってくるか、だな」
「考えてもしょうがない。答えが出ないことは悩まない、オーライ」
固まった泥を叩き落としながら、スバルは小走りに貧民街の奥へと向かう
「頑張った自分へのご褒美……またコンポタでも開けるか、っと」
ビニール袋を漁っている最中に通りに差し掛かる。と、その向こうからふいに出てきた人影とぶつかりそうになった
慌てて身をかわして、細い通りに背中からぶつかる。そんなスバルを見て、ぶつかりかけた相手はおっとりとした仕草で、
「あら、ごめんなさい。大丈夫かしら?」
「だいじょびだいじょび。こう見えても俺って丈夫なのが取りぇぇぇっ!」
「楽しい子ね。それで本当に大丈夫?」
仕草がエロい艶っぽい美人のお姉さん――絶対に再会したくなかった
「――そんなに恐がらなくても、何もしないのだけれど」
「こわ、恐がってとか、恐がってとかねぇですよ?」
「臭い……」
「恐がってるとき、その人からは恐がってる臭いがするものよ。あなたは今、恐がっている。……それから、怒ってもいるわね。私に対して」
いっそ楽しげにこちらの内心を暴露して、上目で見上げてくるエルザ
『落ち着いて深呼吸、反撃は今じゃない』
『大丈夫、まだエルザは何もしてない』
「……少し気にかかるのだけれど、いいわ。今は騒ぎを起こすわけにいかないから」
「お、穏当じゃない発言だな。あんましビビらせると美人が台無しですぜ?」
「あら、お上手。――敵意が隠せればもっと上出来よ」
「それじゃ、失礼するわ。また会えそうな気がするわね」
「次は明るくて人がいっぱいいる場所だと、俺もリラックスできるよ」
そんな皮肉を言うのが精いっぱいだ
エルザは黒い外套を翻して路地の闇に溶ける。彼女を見送って、スバルはドッと疲れを感じながら壁に身をもたれた。
『よしよし、生きてるよ』
「フェルトのねぐらってこの奥だと思うんだが……まさか、すでにエルザが暴れたあとって可能性はないよな……?」
『ない ない、血の匂いはしなかったし、後は勘』
「信じるぜ、幾度となく俺を助けてきてくれたその感を!」
そろりそろりと忍び足で進軍を再開
やがて小汚いボロ屋に行き着いたのは、エルザとの遭遇から五分後のことだ
「情報じゃこれだと思うんだが……これ、人の住処か?」
『…狭いね』
「こんなとこで小さい体をよりちっちゃくして生きてるんだ。そりゃ性根がねじくり曲がってしまっても仕方がない。ああ、仕方ない。可哀想に。ああ、可哀想」
『昴、なんか変な人になってるよ。本人も怒ってます』
「言いすぎだろ、胸糞わりーな。人の寝床見て、どんだけだよ、兄ちゃん」
『あら、今までで1番オンボロだ。あの子が魔法をぶっ放したからかな?』
「なんでますます気の毒そーな顔すんだよ。薄汚い小娘だって舐めてんのか?」
「それとは別の感傷なんだけど……とりま、会えてなにより」
「なんだ、客か」
「ここまできたってことは、アタシに用があんだろ?ここの住人じゃなさそーだしな」
「お。俺を同類項扱いしないとは、見る目があんな」
「ここの連中でももうちょっと身綺麗にしてるっつーの。」
「で?」
「用件は?盗みの依頼なら前金出せよ」
「盗みの委託て……手癖の悪さが自慢か」
「生きる手段の問題さ。で、どーすんだ。それとも他の用事か?場合によっちゃ……」
指を小刻みに動かし、手先の器用さをアピールしたフェルト
その掌に、ふいに魔法のように小さなナイフが浮かび上がる。場合によっては、それを自衛の手段にするという戒めだろう
「俺の用件はひとつ。――お前が盗んだ徽章を、こちらで買い取りたい」
「なんで、アタシが徽章を盗っ たって知ってんだ?盗んだのはついさっきだ。小耳にはさむにゃ耳がでかすぎんじゃねーか?」
「言われてみりゃその通りだ、俺マジ迂闊!」
「……もうちょい腹の中隠さねーと交渉とかできねーぜ?」
「徽章を買い取る、っつーのはどーいうことだ?頼んできた姉さんとアンタは別口だろ?商売敵かなにか?」
「商売敵っていやぁ商売敵と言えなくもない、かもわからないこと山の如し?」
「ま、そこんとこはどーでもいいんだけど」
「アタシとしては買い取り価格が高い方に売りつけるだけだ。」
「んじゃ、交渉には乗っかってくれるってこったな?」
「儲かる可能性のある話ならなんだって聞くさ。たりめーだろ?」
『流石フェルトちゃんだねぇ』
「……こっちにゃ聖金貨で二十枚以上の価値があるものを用意してる。その条件で、お前の徽章を買い取りたい」
「へー、なるほど。けっこーな値段付けてくれんじゃん。でも、アンタの商売敵もそんぐらいの値段できてるぜ?」
「嘘こけ、聖金貨十枚の取引きだろ。欲かくと死ぬぞ、いやマジに」
「んだよ、そこまで知ってんのかよ。といっても、交渉相手が出たと知れたらもっと出すかもしんねーけどな?」
「素直にこっちで手ぇ打っておけ、って言っても聞かないんだろうな」
「たりめーよ。ってか、そもそもアンタのさっきの話も眉唾だ」
『昴』
「わかってる」
スバルはその懐から交渉のキーアイテムである携帯電話を取り出す
「それが聖金貨二十枚か?アタシにゃ手鏡かなんかにしか見えねーが」
「これは大流行の『魔法器』ってやつだ。時間を切り取り、凍結させる。さあ、受けて見るがいい――NATUKIフラッシュ8連射!!」
連続シャッター機能をオンにして、機械的な撮影音と光が連発
スバルは少女に画面を突きつけると、赤い双眸が驚きに見開かれる。
「これがこの『魔法器』の力だ。こうして精巧な絵を残すことができる。さあ、どうよ」
「……嘘、じゃなさそーだな。でも、きれいに世界を切り取るって言うんなら、アタシはもっと美人だと思うぞ」
「素材はよさそうな気がするけど、こんだけ飾り付けが酷いと何とも言えねぇな」
「物珍しさは認めるけどどんだけの金になるかは微妙だぜ?言っとくが、信じてやるほど頭が空っぽってわけじゃねーんだ」
「……それはまぁ、当然だろな。第三者の意見は必要ですことよ」
『勢いで持ってければよかったけど、ここまでは想定内』
「この貧民街の奥に、盗品蔵って場所がある。名前のまんまの場所なんだけど、そこにいる偏屈爺さんに聞くのが手っ取り早いだろーさ。物を見る目は公平だぜ?」
「やっぱ、そうくるよなぁ……」
「そのジジイに見てもらうのはまったく反対しねぇんだけど……」
「会ったこともない相手をいきなりジジイ扱いとか、会って後悔するかもしんねーぞ? 意外とおっかねーんだよ、礼儀知らずには」
「そのわりには口悪い小娘にミルク出してやったりとか甲斐甲斐しいような……」
『なるべく盗品蔵には近づきたくないんだよなぁ…おっかないお姉さんがいるから』
『ラインハルトくんの方がえげつないのはそうなんだけどさ』
「なにを問題にしてんのかわかんねーけど、急ぐならとっとと盗品蔵に行こーぜ。ホントはちょいちょいやりたいこともあったんだけど」
「やりたいことって?」
「いや、意外と持ち主が根性入ってて、逃げ切るの大変だから妨害工作。ちょっと金渡せば喜んで周りの連中がやってくれっからさー」
「よし行こうすぐ行こうパッと行こうちゃちゃっと行こう」
「ただし、ちゃっと見てもらってスパッと終わらせてバシッと出るかんな」
「兄さん、なんでそんな焦ってんだよ。汗ダラダラだぜ、強く生きろよ」
「貧民街だとみんなそれ言うんだけどなんか合言葉なの!?」
「大ネズミに」
『毒だよ昴』
「ホウ酸団子ってどこで売ってんの?毒」
「スケルトンに」
『落とし穴』
「意外と掘るのって労力いるよな。落とし穴」
「我らが貴きドラゴン様に」
『クソったれ』
「ファンタジー世界だから実際いるんだろうけど、直接対面したらなんにもできないこと請け合い。でもロマンだから会いたいのも事実。そんな曖昧な自分の心に嘘をつくこともできなくて、ところがそんな自分がやっぱり 嫌いじゃない。クソったれな気分」
『全部一言余計』
「余計な枕詞つけんと合言葉も言えんのか!余計に腹立たしいわ!」
扉が内側から蹴破られるように開かれるが、それを予期していたスバルは素早く後方に飛びのいてノーダメージ
「あんま頭に血ぃ上らせてると血管切れるぜ」
「体に悪いとわかっとるなら怒らせるんじゃないわ!今日は人払いしなきゃならんから入れんぞ!ざまー見さらせ!」
大人げなく地面を踏み鳴らすロム爺。だが、そんな彼のしてやったり顔を覆したのは、
「あー、悪い。コイツもアタシの客なんだ。入れてやってよ、ロム爺」
スバルの背後に隠れていたフェルトだった
彼女はがっくりと肩を落とすロム爺を同情的な目で見て、それからしらっとした顔で口笛など吹いているスバルを横目に、
「アンタ、かなり性格悪いな。控えめに言って最悪だ」
「なんかからかいたくなる性格なんだよな。いじられてこそ光るタイプというか……Mだと発覚したはずなのに、俺はやっぱりSっ気もあったのか……攻守万能だな!?」
『昴はMです、絶対にM』
幼馴染からの評価が悲しいよ俺は!!
「上がるぞ、ロム爺」
うなだれるロム爺の横を抜けて、フェルトが当たり前のように盗品蔵へ
「マイペースな奴はこれだから困る。俺らみたいな一般人は置き去りだぜ、なあ?」
「言葉の定義付けからやり直したいとこじゃの……とっとと入れ」
呑気にカウンターの上に腰掛けて、フェルトは他人の住居で自分の家よろしくミルクを勝手に傾けている。視線に気付き、
「なんだよ。冷えてんのはこれ一本だ。やんねーぞ」
「ふてぶてしすぎて神経ぶれねぇな、お前。俺は酒でいいよ、爺さん」
「お前さんも相当図々しいな!分けん!」
のしのしと床を軋ませて巨体が走り、カウンターの向こうの酒蔵らしき木箱を視線から守ろうとする
「なるほど、酒はそこか。場所さえわかればこっちのもんだぜ……」
「本音が漏れとるぞ! 盗品蔵の主から酒を盗もうなぞ、極悪の下をいくな!?」
「そんな……照れる。それに盗むときは自力じゃやらねぇよ。フェルトに依頼する」
「ゴメンな、ロム爺。依頼されたら断れねーわ」
「味方おらんのか、ここって儂の家じゃなかったかの!?」
「さて、爺さん。本題に入りたい」
「……なんじゃい」
「頼みたいのは鑑定、って感じになるかな。俺の持ってきた『魔法器』に値段をつけて、それをフェルトに対して保障してもらいたい」
話が商談ともなれば、ロム爺の灰色がかった瞳が真剣味を帯びる
彼は確認するようにフェルトを見やり、彼女の肯定の頷きを見ると視線を戻した
スバルは懐から携帯電話を取り出す
メタリックな見た目がまずその興味を惹き、大きすぎる手の中にあってはまさしく玩具のような機器を繊細な指触りが確かめるように撫でた
「これが魔法器。さしもの儂も見るのは初めてじゃが……」
「たぶん世界に一個しかない。あと、わりとデリケートな機械だから扱いには注意。ぶっ壊されるとマジで死ななきゃいけないレベル」
しげしげと外装を確かめるロム爺が、折り畳み式のケータイをゆるやかに開く。起動音がして最初の驚きを誘い、さらに待ち受け画面が二発目の驚きを誘発
「この絵は……」
「タイミング的にちょうどいいかと思ってな。効果のほどを見せつける意味で、フェルトちゃんを待ち受けにしてみた」
待ち受け画像は先ほど撮影したフェルトの画像の中の一枚だ
「これは驚いた。こんだけ精巧な絵を描けるもんはおらんじゃろうな」
「時間を切り取って、そこに封じ込める魔法器さ。人の手によるもんじゃ、到底できない綺麗さだろ?なんなら爺さんも撮影するけど」
「興味はあるが、おっかない感じもするのぅ。命とか取られんか?」
「やっぱどの時代のどの世界でも、写真見て思うのはそういう迷信なんだな……」
「撮影されても八十まで普通に生きる」
と答えて、そのカメラ機能でロム爺を撮影。
出来上がった画像を見て、「ううむ」とうなるロム爺
目の前でこれを見せられれば、ケータイの性能実験としては十分だろう。
「これは確かに恐れ入ったわい。もしも儂が取り扱うなら、聖金貨で十五……いや、二十枚は下らずにさばいてみせる。
売人としての職人魂が刺激されたのか、やたらと瞳を輝かせるロム爺
「とまぁ、俺の手札はこんな感じだ。宣言通り、聖金貨で二十枚以上の品物。これでお前の徽章との物々交換を申し込みたい」
「その顔、ちょいちょい挟むけどムカつくなぁ」
「ま、それが金になるって保障がついたのは素直に嬉しいさ。聖金貨二十枚ってのも疑わないで済みそーだし」
「だろ!?んじゃ、交渉成立ってことで。うまく売るのはそっちのやりようだ。ガンバ!それじゃ俺は急ぐんで、ここらで失礼させてもらおうかと……」
「ちょっと待て。なんでそんなに急いでんだ?」
「急いでるとか、そんなこと別にねぇですよ?あ、あとあんま顔、近付けんな」
「なんだよ。女の子の顔が近いと照れちゃうタチか?」
「いやお前、何日か風呂とか入ってねぇだろ。目に沁みる刺激臭がする」
「そんな臭うかな……」
「照れ隠しの口先、って言ってやりたいけど。俺って自分に嘘はつけないっ」
「わかった、ちょっと待て。話を戻そう。落ち着いて、冷静にな」
「話を戻す、か。そうだな。とりあえず、寝床の環境を整えるところから始めるのがいいと思うぜ」
「アタシの臭いの話から離れて、もうひとつ戻ってみよーぜ!?」
「……お前、も……足が、出るの、早いよ……」
照れ隠しに出た前蹴りが、位置的にしゃがんでいたスバルの顎をクリーンヒット
「血ってあんま飲み込んでると、すっげぇ気持ち悪くなんだぞ……」
「それに懲りたらもっと真剣にアタシとの対話に応じろよ。んで、話を戻しに戻した上でもう一回聞くけど、なんでそんなに急ぐんだよ」
「人生ってのは有限なんだ。一秒一秒を大切に、無駄を極力省くことで……」
「あー、はいはい。そーゆーのはいいんで。つかさ……」
「そもそも、なんで兄さんはこの徽章を欲しがんだよ?」
「アタシに依頼してきた姉さんも話したがらなかったけど、兄ちゃんもそーだな?」
「……そもそも、盗み自体がいかがわしい話なんだから、後ろ暗い理由があるのは誰でも一緒だと思うんですがー」
「でも、特にアンタは後ろ暗いわけだ。ま、落ち着いて考えてみりゃー、盗みを依頼された品物を横からかすめ取ろうってんだしな」
「この徽章は、なんだ? 実はこいつには、この見た目以上の、魔法器以上の価値があるんだ。だから欲しがるんだろ?」
『その考えはすごく危ない…』
「待て、フェルト。お前、その考えはマジに危ないぞ」
「聖金貨二十枚以上、その価値で手ぇ打っとけ!お前に依頼した奴だって、聖金貨二十枚が限度だ!」
「なんでアンタがそれを知ってんだよ」
「あ……」
「語るに落ちてるぜ。関係者だってな」
『力尽くで奪い取るとか考えないでよ、私が干渉できるならともかく昴じゃ勝てないので』
「いいようにやられとるのぅ、小僧っ子。年下の小娘に情けない」
「あんたの手ほどきの所為だろ、これ。手強すぎて泣きそうだ」
「フェルト、頼む……」
「アンタを交渉相手としては認めるよ。でも、相手方の意見も聞かなきゃフェアじゃねーだろ?」
問い詰める瞳には微塵の容赦も慈悲もない。
「俺がそれを欲しがるのは……元の持ち主に返したいからだ」
「は?」
だから、本音をこぼすのがスバルの持てる誠意の全てだった
「俺はそれを持ち主に返したい。だから徽章を欲しがってる。それだけだ」
「……フェルト。どうもこの小僧、嘘をついてるようには見えんが」
「ロム爺までほだされんなよ。冗談に決まってんだろ?大金まで払って盗んだ相手から買い戻してかよ?馬鹿馬鹿しい」
「つくならもっとマシな嘘をつけよ。真剣なふりしても騙されねーよ。そうじゃなきゃ、アタシは……そうさ。アタシは騙されない」
「フェルト……」
なにかを振り切るように、フェルトは絞るような掠れた声を出す
気遣わしげなロム爺は彼女の胸中を知っているのか、その表情は痛ましげだ
つまり交渉は、失敗に終わったということだ
「――誰だ」
ロム爺がその表情を変えて、盗品蔵の入口を睨んだのはそのときだ
鋭いノックの音が何度か続き、沈黙にロム爺が振り返る
その視線を受けて頷いたのはフェルトだ
「アタシの客かもしれねー。まだ早い気がするけど」
盗品蔵、ノック、フェルトの客それらが符合し、導き出される答えはひとつ。
『エルザ!?』
「開けるな!殺されるぞ!!」
『予定より早い、!』
そんなスバルの悲壮感に満ちた叫びもむなしく、制止の声は戸を開けるフェルトの動きを躊躇させることはできなかった
扉が開かれて、夕焼け色の光が盗品蔵の薄闇をぼんやりと淡く振り払う
「殺すとか、そんなおっかないこと、いきなりしないわよ」
仏頂面で唇を尖らせて、銀髪の少女が蔵の中へと足を踏み入れていた
コメント
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続き待ってるヨォ
第9話読み終えたよ〜!!😭💕 スバル、フェルトとの交渉めっちゃ苦戦してたね…「元の持ち主に返したい」って本音言ったのに信じてもらえなくて胸が痛かったよ…フェルトの「騙されない」って台詞に過去の傷が見えた気がする。 最後の銀髪の少女の登場でまさかの展開!続きが気になりすぎるよ!!次回も楽しみにしてるね🌸✨