テラーノベル
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『消えたクラス』
高校二年の春。朝、教室に入った瞬間、僕は違和感を覚えた。
教室の全員が、僕を見て一斉に微笑んだのだ。
「おはよう、ユウタ」
誰も彼もが、声をそろえたように同じトーンで挨拶をしてくる。
——気持ち悪い。
授業が始まっても、先生は何も教えない。ただ黒板に「0」とだけ書いて、にっこり笑っている。
休み時間になると、クラスメイトたちは僕の机をぐるりと囲んだ。
「今日で終わりだよ、ユウタ」
その言葉と同時に、みんなの顔がぺたりと剥がれ落ちた。中から現れたのは同じ「僕」の顔。
教室にいる三十人全員が、僕と同じ顔をしていた。
「ずっと探してた。君が“本物”だ」
気づけば教室の扉も窓もなくなり、世界が白一色に塗りつぶされていく。
耳の奥で声が響く。
——君はもう一人じゃない。これからは、みんなで一つになるんだ。
そして最後に僕の体も、まるでコピー機に吸い込まれるみたいに、薄く透けて消えていった。
翌日の朝刊には、小さな記事が載った。
「県立第二高校二年C組、クラス全員が行方不明」
終 作:暗黒魔彩(ダークネスマサイ)
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