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見つけたわ!
この女!映画館で見た女!
由香は騙してたのね!いつも鈍感な癖にこういう時だけ鋭いんだから。
『あのぉ…すみません』
由香と女が別れた後、私は女を尾行した。
そして人気の少ない所に来たので、私は声をかけた。
女は振り返り私を見下ろした。
ムカつく、私より不細工で胸が小さくて地味なくせに、私を見下ろしやがって。
『道に迷っちゃって…ここに行くにはどうすればいいか分かりますか?』
スマホであるカフェの写真を見せた。
女はその写真を見るなり、
『私もそこに用事があるので一緒に行きましょう。』
と言った。
『そうなんですか!?じゃあお願いします!』
私は女の後ろを付いていった。
女は話すのが苦手なようで、特に声を掛けてこない。
まぁ丁度良い。
私はポケットに忍び込ませていた果物ナイフを、バレないように取り出し、
女の首に刺そうと
『美琴!逃げて!!!』
後ろから突然由香の声が聞こえた。
それでも私は振り下ろすのを止めなかった。
由香も殺ってしまえば良い。
『は?』
美琴と呼ばれた女はナイフを見るなり私の腕を掴んだ。
なんという反射神経。
『由香!警察…!』
私の腕を抑えつつそう言った。
『なに…余裕ぶってんだよ!泥棒猫!!!』
思いっきり引いたら美琴の手が離れたのでもう一度振り下ろす。
美琴は腕で防いだ。
そして振り払うなり私を押し倒した。
何があったの?突然視界が地面いっぱいになった。
『泥棒、猫って…どう言うことですか…!?』
頭の上から美琴の声が聞こえる。
息が荒い。痛いのを我慢しているのだろう。
『離しなさい!お前が!お前ごときが幸村君の隣に立って良いわけ無いのよ!
私が!幸村君の隣にいるべき女なの!!!』
息を呑んだ音がした。
自覚あるんでしょ?
『…それは幸村さんが決めることでしょう?
私達ファンの分際で決めることなんて出来やしません
幸村さんが私を選んだ。それを貴女が否定する権利などありません!』
『うるさい!!!お前は何としてでも殺してやる!!
幸村君の隣にいるのは私なのよ!!!』
私は物音を聞き付けて集まってきた人を見ると
『たすけて!!!』
と叫んだ。
美琴は抑え続けるものの、それは虚しく通りすがりの男達に私から引き剥がされた。
『止めてください!彼女を離しては…』
美琴の腹部から血が滲む。
私はこんなこともあろうかと、二本持ってきてたのだ。
しかも包丁。
果物ナイフより切れ味の良い包丁。
美琴を引き剥がした男達は悲鳴をあげるなり、尻餅をついた。
美琴は包丁を抜かれまい、と私の手を抑えている
なんてしぶとい女なの。
『死ねよ。さっさと死ね!』
バチン!
私の頬に激痛が走った。
美琴が…私にビンタをした。
『痛いじゃない!』
『この程度で?』
美琴の目は、声は、
『この程度で痛いと?』
やめてよ
『私と同じ目に会ってみますか?』
いやだ
『美琴!!!』
由香が私を突き飛ばした
恐怖で手元が緩んでいたから、包丁を引き抜けなかった。
逃げなきゃ、殺される。
尻餅をついた私は立ち上がろうと、体を捻って…
『どこに行くの?』
右肩に激痛が走った。踏まれている。
『痛い!離して!』
そう叫んで、私を踏む相手を見上げた。
『嫌だ。離したらあんた逃げるやろ?』
『え…ゆきむ』
『あんたに名前呼ばれたない。ったく、クソが…』
何で?何で?何で?何で?何で?何で?
本当にその女を選ぶの?
駄目だよ。
その女は。
きっと…私より意地悪な女なんだから。
『びゃぁぁあ!み゛ごどー!!!』
目が覚めると由香の悲鳴が聞こえた。
よく理解できていない脳ミソで、なんとか起き上がろうとするが、痛みが走った。
『美琴ちゃん!駄目よ、寝転がっていなさい!』
姉さんもいる。
『……えっと…私…。確か…』
『陽菜って奴に刺されて意識失ってたんだよ!
ああ…アタシのせいだぁ…友達って言ったから…
嫌な予感がして美琴の方に行ったら刺されかけてるし…
美琴合気道?空手?やってたらしいからなんとかなったけど
ほんまにごめんねぇぇぇぇ!』
『えぇ…。そんな謝らなくても…。』
『美琴ちゃん。貴女一週間も目を覚まさなかってん。
命に別状はないって言われたけど
お姉ちゃん凄く凄く心配で…母さんも寝不足だし…
今はいないけど幸村君も魂抜けた顔してたし…仕事に支障きたしてるって…』
『すみません…、心配かけてしまって…』
『良いよぉ。謝らんといてぇ。
陽菜は現行犯で捕まったし、てか悪いのは陽菜だし』
『そう、ですか。』
目覚めた後、ゆきくんが仕事帰り、病院に立ち寄って、わんわん泣いていた。
失うんじゃないか、と怖かったらしい。
その後色々聞き、警察にも事情聴取され、なんとか退院した。
どうやら左腕と腹部の傷は残るらしい。
綺麗にしてきたのになぁ、と私は少し残念に思った。
陽菜さんは嫉妬による犯行で、未成年(この世界では二十歳が成人)だったので名前、顔は伏せられ、
未遂で終わったため数年で出てくるとか。
ゆきくんは一旦俳優業を休み、私と付きっきりになった。
大学卒業後、私達、姫路裏家は地元の大阪に帰ることになり、
ゆきくんも『俺も帰る~!』と大阪に引っ越した。
俳優業を再開してからは、大阪から頑張って撮影現場に通っている。
由香はやりたいことが東京にあるから、と東京に残るらしい。
数年後、ゆきくんの我儘で結婚する事になった。
いや、我儘と言うのも失礼ですね。
私も満更でもないのですから。
神前式を終えて、親族から
『美琴ちゃん、別嬪さんやけど…まさか人気俳優と結婚なんてねぇ…』
『私ちょうどファンだったのよ。サイン貰っても良いかしら?』
『くっそー、イケメン俳優に美琴ねーちゃん取られた!結婚しても遊びに来てよ…?』
とゆきくんについて結構聞かれた。
毎度説明するの面倒なんですよね。
手っ取り早い方法はないのでしょうか…。
『美琴。ずっと二人でいよな。ずっと二人っきり。』
宴会の席で、ゆきくんがそう言った。
私はその言葉に重さを感じつつも
『愛してやまない貴方なら喜んで。』
と言った。
終