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そしてようやく修さんの店へ着いて中を覗くと。
やっぱりカウンターに見つけた彼女の姿。
オレは彼女の姿を見つけて無意識にニヤけてしまう。
やべっ。さりげなく、さりげなく。
「やっぱりいた」
カウンターの彼女に近付いて、まだ気付いてない彼女の背後から声をかける。
「おっ、いらっしゃい」
すると、カウンターの中からオレに気付いて声をかけてくれる美咲さん。
「いつものでいい?」
「はい」
いつものオーダーをいつものように通してくれる。
この後会社戻るけど、まぁちょっとした整理なだけだし。
まぁ一杯くらいなら影響ないし。
「あっ、ごめんね透子!ちょっとまた後で聞く!修~!」
「はいは~い」
美咲さんはそう彼女に伝えてキッチンの中に入って行く。
すると、一人になった彼女は目の前の飲み物を勢いよく飲み込む。
オレはカウンターの隣にさりげなく座った。
ホラ。やっぱりオレがこうやって隣に来たところで彼女は気付きもしない。
そう。彼女はずっとこういう人だ。
きっと別に防御しているワケでもないのだろうけど、いつもこうやって自分一人の世界で生きてる人。
オレがこの店で見かけてるだけでも、こうやって周りを気にせず一人飲みをしているところを何度も見かけた。
そんな一人の世界に生きている彼女が、魅力的でもあり安心でもあり寂しい。
そんな大人な雰囲気を醸し出すのが魅力な彼女。
だからこそ、他の男もきっと声をかけにくくて、そこは安心出来る所。
だけど、その分きっと彼女はなかなか心を開かない。
きっとまだまだオレの存在なんて彼女の中にいない。
相変らず手強い相手。
「どうも」
まだ全然オレに気付かない彼女に隣から声をかける。
すると飲んでる途中でグラスに口をつけながら、こっちに振り向いた瞬間、オレとようやく気付いて驚いてる彼女。
「ゴホゴホッ!!」
そしてわかりやすくむせる。
うん。なんかこういう可愛いとこあるんだよね、この人。
自分の予測してない驚いたことを目の当たりにすると、わかりやすく動揺する。
ずっとなんでも完璧だと思っていた人。
だけど、ここでこういう姿を見れるのが案外嬉しくて。
いや、きっとそういう彼女にさせているのはオレなんだと思いたい。
「大丈夫?」
「ちょ!なんであんたがいんのよ!」
「なんでってオレ元々ここの常連だし」
「は?私全然知らないし」
ホラ。やっぱり彼女はまだ心を開いてくれない。
オレはなかなか手強い相手に片想いをしてしまったようだ。
きっと今までの女なら、ここまでオレが近付けばそろそろその気になってくれるのに。
予想はしていたけど、彼女は当然そうはいかない。
「自分が気付いてなかっただけじゃない?」
今だってオレ来てたの全然気付いてなかったくせに。
だからオレは何年もかかって今こうやってあなたと話を出来てるというのに。
「それ・・はそうだけど・・」
「はい。樹くん。いつものね~」
すると美咲さんがいつものを持ってきてくれる。
「あれ?あんた達もうそんな仲良かったっけ?」
「いや、別に仲いいとかじゃないから」
美咲さんがオレたちが話しているのを見て嬉しいことを言ってくれたのに、彼女はそんな言葉もなかったかのように、すぐ否定する。
「え~またそんな冷たいこと~。特別な仲なのに」
だけどオレは負けずにニコッと笑ってその気にさせにかかる。
「美咲。この人そんな前から常連!?」
いや、そんな身乗り出してまで必死に確認しなくても。
「そうね~。樹くん、修がここやる前にバイトしてた時にずっと可愛がってた後輩でさ。オープンからずーっと通ってくれてる常連さん」
「えっ!そうなの!?」
オレはずっとその頃からもうあなたの存在知っていたけどね。
「透子も最初から来てたのに、全然気付いてなかったかもね~。あんた一人でいるか私と飲んでること多いから」
美咲さんがその当時の彼女もオレの様子も知っているだけに、ナイスなアシストをしてくれた。
「ね?」
隣の彼女にオレはまた二コッと自信ありげに笑いかける。
「そっか。透子に結局紹介してなかったんだっけ?」
「知らないよ」
その彼女の言葉に、ホントに一瞬でもオレが視界に入ったこともないんだとわかって少し胸が痛む。
「だってあんたここ最近恋愛に前向きじゃなかったし」
美咲さんは彼女のことをすべて理解して、いつも彼女の気持ちにこうやって寄り添っている。
オレもなんかあったら修さんに相談しちゃうし、ホント頼りになる夫婦だな、この二人は。
「いや。うん、恋愛はいらないんだけどさ・・・」
「ほら。そうなるから」
「確かに」
ホント恋愛は彼女にとって今まで避けて来たことなのかと実感する。
「だけどこの前はちょっといつもと雰囲気違ったし、樹くんどうにかしてくれるかな~って思ったから、ちょっと放っておいた♪」
「何それ!?」
美咲さんはオレの気持ちを当然わかっていて。
何かチャンスがあれば、こうやって協力してくれるホント有難い存在。
「てか、もう二人仲良くしてるみたいで安心したわ~」
「なってないから!」
そしていくら美咲さんがこんな風にいい流れに持っていこうとしてくれても、頑なに彼女は否定をする。
「あら?この前ドキドキに前向きだったのに?」
「あれは・・! あの時だけ! てか、この人とは今度仕事のプロジェクトで一緒にすることになって、そんな関係もう無理なんだってば」
なんで仕事一緒ならダメなの?
なんでそんなにそこにこだわるの?
「え!そうなの!? やだ~なんて偶然」
「オレは別に全然気にしてないんですけどね」
オレはあなたと一緒にいられて嬉しいのに。
ようやくあなたの前でカッコイイ自分が見せられるかもしれないチャンスなのに。
「え~でもドキドキだけなら樹くんにお願いしちゃったら~?樹くんイケメンでかっこいいしさ~。あんたもそこそこあの時その気になってたじゃない」
「ちょ! 美咲! 違うから! そんなんじゃないし!」
美咲さんナイス!!
てか、それマジで?