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了解です!急展開...これからどうなるのか全く想像つきません...!次回も楽しみにしてます!
朝。目覚めると目が真っ赤に腫れていた。
これだと若井やスタッフにもバレるよなあ。
一応氷で冷やして、できる限りの対処をする。昼過ぎから仕事だが、それまでには何とかなるるだろう。正直今は元貴に会いたくない。なんならスマホを見たくもない。きっと通知が溜まっているはずだから、朝起きてから一度も開いていなかった。
でも、僕は元貴を深く傷つけた。罪悪感、ではなく本当に悪い事をしてしまった。あの時告白を断っていれば。…謝りたい。そして話をつけたい。
それから昼まで、ベットの上で今後どうすればいいかを考えた。途中、心の奥底に黒い影がじりじりと浮かんできたこともあった。元貴が好きな人がいてもいいから付き合えと言ったからじゃないか、とか。無理やりそういうことをしようとしたからこうなったんじゃないかとか。
そんな考えが浮かぶ度、自分が更に嫌いになる。元貴のことをそう思っていたなんて、自分に失望する。早く時間になればいいのに、という気持ちとずっとこのままこうしていたいという気持ちが同時にあり、ぐちゃぐちゃだった。
結局スマホは開けずいた。
◻︎◻︎◻︎
今日はレコーディングのため、いつものスタジオに行けば既に若井も元貴も到着していた。
「あ、おはよ〜涼ちゃん」
「涼ちゃんおはよ。今日はねー、今から…」
若井はともかく、元貴は怖いくらいいつも通りで。その事に内心驚きつつも、しっかり元貴の説明に耳を傾ける。タイミングは、今じゃない。必ず来るはずだ。
だが考えは甘く、気づけば今日はこれで解散でーす、という声が耳でこだましていた。
マネージャーに送って貰うため、車に乗り込むところでもう半日が経ったと、はっとする。若井が冗談を飛ばし、マネージャーが笑い、元貴が辛口でつっ込む。全て眠っているふりで誤魔化し元貴の家まで耐えた。
「じゃあお疲れ様ー、お先でーす」
今だ。
「あ、そうだ元貴!ちょっと伝えたいことがあったから僕も下りる!」
目をかっと開いて元貴がこちらを見てくる。
しまった。飛び起きる演技が下手過ぎたか。だがすぐにもとに戻り、
「あぁ、そうなの。なら僕らはここで。おつかれ、ありがとうございましたー」
とまるで追い払うかのように手を振りながら早口で言った。若井を見やると、怪訝そうだったが渋々といった感じで手を振り返してくれた。
車が走り出し、元貴に向き直ると既にマンションのエントランスへ歩き出していた。暗闇に紛れてしまいそうで歯痒かった。早足で追いつき、意を決して口を開いた時だった。
「……昨日は、ごめん」
消え入りそうな声で、呟くように元貴はそう言った。横からだが、真っ直ぐ前を写しているように見えた瞳は、動揺の色をしていた。ぽかんとしてしまい、言おうとしていたことを全て忘れてしまった。
「涼ちゃんは好きな人がいるから、俺を傷つけない様に最大限配慮してくれてたよね。なのに俺はそれを踏みにじった。私利私欲の為に」
昔話を語るように、一言一言噛み締めながら口にする懺悔だった。そんなことないよ、悪いのは僕だよと頭の中で言っていても喉で何故かつっかえる。
「…これ以上、迷惑を掛けたくない。自分から告白したのに本当にごめん」
気づくと元貴の部屋の扉の前にいた。
彼がこちらに体を向ける。目が合う。
「俺をフって下さい」
その日、短いようで長かった僕らの恋人関係は幕を下ろした。
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読んで下さりありがとうございます!
連載の更新、遅くなって申し訳ないです…😭2日に1話が普段のペースになるかと思います。遅くなったり早くなったりも多いと思いますが、ご理解頂ければと思います。
次もぜひ読んでいただけると嬉しいです。