その時はただ、選択があった。
手をとるか、とらないか。
本当にそれだけだった。
「kz〜」
「んぁ?あぁkne、どした?」
「なんもなーい!」
「おまっ、はい有罪ー!」
「なんでだよw」
いつもとあまり変わりのない会話。からかわれて、からかって。からかって、からかわれて。楽しくて、ずっと続けばいいのにとまで思える時間。
「なーんてのは嘘で、本当はkzhの予定を聞きにきたの!」
「俺の予定ぃ?またなんでそんなもん…」
「僕がkzhと遊びたいから!別にいいでしょ〜?次の週末とかあいてる?」
「はあ、まあ、あいてるけど〜…」
「!じゃあ僕の家に泊まりに来てよ!久々にオフコラボしよ!週末まで3日あるし泊まりの準備もできるよね?」
「いいけどぉ〜、準備ダル。前みたいにその時その時必要なもん買いに行く感じでよくね?」
そんな話をしながら泊まる日の予定も決めて、そのまま少し2人で遊びに行って、日付が変わった頃に家に帰った。
家に帰ってベッドにダイブした俺は叫んでいた。
「んぁ〜〜〜〜!!3日後、いや2日後にはkneん家!??無理無理!心臓破裂する!!けど嬉しい!!」
そう、俺はkneが好きなのだ。それもかなり前から。
けど種族は別、それなのに性別は同じ。そんな俺なんかは相手にされないことなんて分かりきっている。だから、ずっとこの気持ちだけは隠している。バレないように、気づかれないように。俺だけが知っていればいい片思い。
けれど、お泊まりにも誘われるくらいならもしかすると…なんて。都合のいい解釈は止まらなくて。
「やばい週末までの2日間何にも集中出来なそう…」
その2日間はあっという間に過ぎた。もちろん何にも、ゲームにさえあまり集中出来なかった。今はkneの家に向かうタクシーの中で、緊張でソワソワしっぱなし。その緊張が伝わったのか、タクシーの運転手の人に「これからデートですか?」なんて聞かれてしまった。
「っいえ、デートでは無いんですが、その、好きな人の家に泊まることになってっ、」
「そうでしたか。いや、いいですね。好きな人の家でお泊まり会。告白なんかもするつもりなんですか?」
「いや、決心できなくてまだ…」
「そうですか。まあこの機会、後悔することは無いことを祈っています。さあ着きましたよ、頑張って下さい!」
「ありがとうございます!」
そんな勢いでタクシーを降りたが、やはり緊張は変わらない。kneの家の扉の前までがひどく長く感じる。扉の前で吸って、吐いての深い深呼吸をしてからチャイムを押す。それからすぐに「どうぞ入って〜」なんて言いながらkneがでてくる。
「お、邪魔します…」
「なんだよ堅苦しいなwどうぞ〜」
「あ、ちょっと待ってkne。ん、これ。一応手土産持ってきた。前にスタッフさんに貰ったやつなんだけど、なんか有名な所の小さいケーキ。甘さ控えめのもあるらしいから一緒に食べよ」
「わ、ありがとう〜。冷蔵庫入れておいて配信の後にでも食べよっか」
「ん、早く配信しようぜ」
『皆さんこんにちは〜。kneです』
『えー、kzhです』
そんな挨拶から始まる配信。
『えー、なんとですね、今日はkzhが僕の家に泊まりに来ています!オフコラボ!』
コメント欄には「久々のオフコラボ助かる」「じゃあ今日も蚊帳の外確定か」「今日は何のゲームするの?」などの声がよせられる。
『やべ何のゲームするか決めてなかった』
『この対戦ゲームでいいんじゃない?』
『あー!いいじゃん、新作のやつ!俺これやってみたかったんだよな〜。じゃあ今日はこのゲームやっていきまーす』
ゲームを初めて数時間、初めはkneの隣に座ってることに対して緊張してたものの、新しいゲームに集中することによって気が紛れてきた。けど、ゲームを初めて数時間、つまり配信を初めて数時間。もうそろそろ終わりの時間が近づいてきた。
『んじゃそろそろ配信終わろっか、kzh』
『んっ、うん。じゃあ、また次の配信で』
やばい、配信終わった途端集中するものがなくなって緊張してきた。どうしよう、なんか話題ふる?けど面白い話できる自信ない、どうしよ、
「…zh!kzh!」
「へっ、?kne?」
「んもー!話聞いてなかったでしょkzh。ケーキ食べよって」
「あ、あぁ、うん」
とりあえずケーキのことで話は繋げれそうだな…。そのあとは、まあ、なるようになれ!
「ん〜、うま!このケーキ。どこのやつか多分説明してくれてたからきちんと聞いておけばよかった」
「wwまた会った時にでも聞こうよ」
「そうだな〜」
「ね〜」
「…………」
え、何これ何この謎の間。俺なんか変なこと言ったか?どうしよう、なんか言うか?
「えと、kne…?」
「ッkzh」
「ん?」
「今日実は、伝えたいことがあって呼んだんだ。気持ち悪いかもしれないけど、聞いて欲しい」
待ってこれは…告白されるのでは…!!いやけど期待して違った時、ダメージが酷くなるだろうから期待はあまりしないでおこう。いやけどこの空気は…。本当にやばい動悸が凄すぎて心臓破裂する。
「同性で、種族が違うことも分かってる。けどっ、ずっと前から僕、kzhのことが好きで、そのっ、」
あれ?なんか…
「kzhさえ良ければ、付き合って下さい!」
おかしい。俺はkneのことが好きなはずなのに、嬉しいはずなのに…。
なんか、気持ち悪い。
俺の目の前に差し出されたkneの手。好きならすぐに手を取るはずなのに、自分の手を差し出せない。kneの手をとれない。おかしい、おかしいっ!!
「え、と…。少しだけ、待って欲しい…。心が落ち着いてからで、いい?」
「あっ、うん、もちろん!僕こそ急にごめんね、急がなくていいから、気持ちが固まったら教えて」
「うん、ありがと」
「…………」
「じゃ、じゃあそろそろお風呂入ろっか!お湯ためてるし、kz先に入っていいよ!」
「ありがと」
何かおかしい。
kneは俺に告白する時、恥ずかしそうに頬を赤らめてて、緊張してるのか手が震えてて、それさえ愛おしく思った。はずなのに。何か、おかしくて、こんなはずじゃない、好きなのに。
kneが、気持ち悪いなんて……。
先に風呂に入った俺はずっと同じようなことを考えていた。自分の気持ちとkneの言葉を最確認して、気持ち悪くなって吐き気がして。頭を洗うのも一苦労で。
「どうしちゃったんだよ俺ぇ…」
「kne〜、風呂ありがと。」
「あっ、うん。どういたしまして。じゃあ次僕入ってくるね。冷蔵庫の中の飲み物とか勝手にとっていいからね」
「ん〜、」
とてつもなく酷い状況だ。なんか、気まずい。俺とkneとの距離感ってこんなもんだったっけ。どうしよう、なんて言うべきなんだろ。正直に言う?本当は好きなはずなんだけど告白された瞬間なんか気持ち悪くなっちゃった、って?なんでわざわざ傷つけるようなことを言わなきゃいけないんだよ!好きなはずなんだけど、って期待させてから気持ち悪くなっちゃった、なんて言わなくていいだろ!けど、他になんて言うべきかわかんねぇし…。
断る?けど本当は好きなはずだし、これからのコラボとか収録とか気まずくなりそうだし…。
………うん、決めた。俺は____。
「ん〜〜、2日間、あっという間だったね〜」
「そうだな。」
「…………」
「ねえ、kz。帰る前に昨日の返事、聞かせてもらっても、いい?」
「ん、」
俺は昨日決心したはずだ。大丈夫、言うセリフまで決めたんだ、大丈夫。落ち着け。
「…じゃあ、もう1回言わせてもらうね。kzh、僕と、付き合って下さい」
昨日と同じように、目の前にkneの手を差し出される。違うところは、今日は腹を括ったようにkneの手が震えていないところ。
目の前には選択だけがある。kneの手をとるか、とらないか。
「………俺は、kneの優しすぎるところとか、頼りになるところとか、大好きなところを沢山知ってる」
「うん」
「けど、俺、なんかわかんなくなっちゃった…」
「kzh、?」
ダメだ。セリフもきちんと考えたはずなのに、kneの前になった途端ぐちゃぐちゃになって、思ってた言葉と全然違うこと言ってしまう。
「ごめんっ、俺、っ!」
口、止まれッ、これ以上喋ったら…!
はい、すみません、この後の展開で物語が大きく変わってくるのでここで1回区切ります。
ハッピーエンドもバッドエンドも書くつもりですがコメントでどちらの方が先に見たいのかなどをよろしければ教えてください。
気が向いたらkz目線が終わったあとにkne目線のハッピーエンド、バッドエンドやどちらかの目線でのみのメリーバッドエンドも書いてみようかなと思っています。
まだまだ練習段階の初心者なので話の内容が読めないところやキャラ崩壊、誤字脱字などもあるかもしれませんが良ければ見守って下さい。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
コメント
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蛙化って辛いよね。射手座の人がなりやすいらしくて僕(私)射手座で、好きな人がいるんだけどみんながカッコイイとかキュンとしてることがどうしても気持ち悪く思えちゃう…好きな人もいてその好きな人は僕のことが好きって噂聞いたけど気持ち悪いって言うより僕の場合怖かったです(?) とりあえず付き合うのか付き合わないのかは葛葉次第だけど見てる側は付き合ってほしいな(((