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俊之と出会って
愛を知ってから、驚く程に全てが順調だった。やりたい仕事、人間関係、それに……恋人と過ごすプライベート。
色んな人の後押しがあって、色んな人に支えられて、今がある。
俊之がそう言った意味が、今なら分かる。私が、誰かを支えたことも。
私が、私らしくいられる。私が私らしくいられるように、彼はいつも優しい目を向けてくれていた。
……私を知ろうと。
ベッドから下りても、愛を語る。完璧な恋人だった。
なぜ、こんな私を好きなのだろう。以前なら、そう思っていた私が調子に乗る程に愛してくれた。
愛される幸せを知った。まわりの人たちが、お似合いだって、言ってくれた。
それが私に、彼の隣にいてもいいのだと思わせてくれた。
勝手に勘違いして、空回りして、大騒ぎして、尚且つ責める私に「こんな顔でごめん」そう言ってくれる。そんな彼に……
ハンカチも手鏡もバッグに入れて持ち歩くくらいの女子力は備えておこうと思う。恥ずかしくないように。
努力は、する。
たぶん。
優しい人。極めて温厚。いつも、優しく笑う。人間的に大きい。余裕がある。
それを、彼は自分で自覚している。それ故、無自覚なのだろう。その部分は。
母性本能を擽られる。そんな可愛さがある。
私を物凄く分析して、頷いているところ。
自分の大きさを読めずに、よく頭をぶつけるところ。
老け顔を気にしているところ。老け顔っていうか、包容力と貫禄だよね。
自分がモテるのは自覚している。でも、それは、役職故だと思っているところ。そこに行き着くまでの、努力と力量を皆判断してるというのに。それ以前に、全てが完璧なのに。
私のロック画面が自分の横顔だった時に、嬉しそうだったところ。この角度が好きなの。
SNSはX派。しかも、発信はしない。チェックだけ。
私の会社のインスタをチェックしているところ。
私のアイコンをよく見ているところ。ド近眼かというくらい、画面に顔を近づけて。
うちの所長が苦手なところ。たぶん、元祖ちょいワルだから。
吉良くんが好きなところ。でも、私が彼の事を聞くとちょっと不機嫌。
麗佳さんに、めっぽう弱いところ。それは、そうか。あんな美人。
私の料理を美味しいと言うとき、笑えていないところ。料理の練習をしている。もう、いっそ、俺が作ろうとでも思っているところ。
アボガドとパプリカの区別がつかないところ。アボカドのお使い頼んだらパプリカ買ってきた。
ワサビやカラシをめちゃめちゃつけて、いちいち涙目になるところ。
泣き真似にひっかかるところ。
最近、ハンカチタオルを持っているところ。
ラグジュアリーなホテルとか、温泉とかシチュエーションに燃えること。
ベタに胸フェチ、尻フェチなところ。
私の下着は白が好きなところ。白だと少し、テンションが上がっているところ。
私の体重が増えているか、会う度ボディチェックしているところ。
とりあえずエロいところ。
容赦ないところ。
今、私の身体を開発するのが楽しくて仕方がないところ。まぁ、これは……うん……
夜中目覚めた私に、付き合ってくれるところ。
朝、起きて、ベッドに私がいなければめちゃめちゃ探してるところ。寝惚けてるのか、押し入れとか開けてる。私はドラえもんか。
朝に帰るのを許してくれないところ。
私のことを好きなところ。もう、ほら、たぶん好きすぎて、また、じーっと見てる。
ああ、愛しい。なんて、可愛いんでしょう。
自分は、大人だと思っているところが、また愛しい。
朝が来るのが怖かった。あなたと過ごせない朝が。
あなたが、誰かの元へ行ってしまうかもしれない。
覚悟を決めても尚、そんな朝が怖かった。
だけど……ここは……他の誰でもない私の居場所だった。私だけの。
今は、朝が愛しい。また、彼と共に始まる新しい1日が。
「そろそろ、一緒に住まないか?」
「うん、考えとく」
同棲じゃなくて、結婚という意味で彼は言う。何度も何度も。
いつか
「はい」と、言える日まで。もう少し、この幸せに慣れるまで。
夜をこえて あなたと過ごす
朝を想う。
あなたの、隣で。
あなたの、腕のなかで。
何度も、何度も。
愛がある この場所で。
──END
西原衣都
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コメント
1件
みぅです🥀 「朝が来るのが怖かった」のに「今は朝が愛しい」──この変化がもう、すべてを物語ってるなって思いました。 一人称で綴られる彼の細かいクセ(パプリカとアボカド間違えるとか、押し入れ探すとことか)のひとつひとつに愛おしさが滲んでて、読んでるこっちまでじんわり温かくなりました。 「完璧な恋人」像じゃなくて、ちょっと抜けてる部分も含めて好きなんだな、って伝わるのがすごくいい。 最終話、お疲れさまでした🌙