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打ち合わせが続く杉並鬼機関の会議室。
一旦全員が現状を把握したところで、淀川が少し声を落として新たな話題を投げかける。
次の話題は…
鬼機関の中にいると思われる裏切り者についてだった。
3日前桃に襲撃された際、人手不足のために急遽出向くことになった淀川。
相手は彼の能力だけでなく、先に現場に入っていた印南・猫咲の力も把握していて…
それ故に不意打ちを喰らい、非常勤コンビは援護部隊のお世話になることになったのだ。
「俺らの能力知ってる奴は何人かいるが、効果時間・条件・発動時の特徴…全部知ってた。鬼側から情報が漏れたとしか考えられねぇ」
「…あのさ」
「ん?どうした?」
「俺、みんなの能力把握してるけど。ここにいていいの?」
淀川に促され言葉を発した鳴海は、緊張した面持ちで答えを待つ。
大人組のは互いにチラッと視線を交わすと、それぞれ反応を見せた。
安心したような表情の花魁坂、同期からの視線に静かに頷きを返す無陀野。
そして2人の反応を満足そうに見ていた淀川が、鳴海へ答えを返した。
「…今の発言でお前はシロだ」
「えっ」
「確かにお前は俺らの能力を一番把握してる。諜報活動してた時期もあって、機密情報を知るには絶好の位置にもいるしな。疑われる要素は揃ってる」
「それならクロ確だよね」
「もし鳴海が本当に内通者なら、今のこの話題は絶対に聞いておきたいはずだ。俺たちの調べがどこまで進んでるかを確認するチャンスだからな」
「でも話が始まってすぐ、なるちゃんはそれを遮った。だからシロの可能性が高い、ってわけ!」
無陀野と花魁坂の言葉に、鳴海は安堵の表情を見せる。
が、まだ一抹の不安があり、言葉を続けた。
「でもさ、そう考えるのを見越して…とか」
「俺はなるちゃんがそんな器用なことできるとは思えないけどな~ダノッチとまっすーはどう思う?」
「俺もそう思う。お前は嘘が下手だし、すぐ顔に出るだろ」
「同感だな。そもそも疑ってる奴に何回も応援要請出したりしねぇよ。…お前にはいてもらわなきゃ困る」
無陀野たちからの愛情溢れる言葉に、鳴海にいつもの笑顔が戻った。
それを見て、大人組もまた表情を緩める。
「鳴海先輩の疑いは晴れたとして…目星はついてるんですか?」
「正直全く。各自気をつけることしかできないのが現状だ」
「気をつけるったって…」
「まぁ考えたって始まらねぇ!改めてやることは鬼の救助!桃の隊長討伐!この2つだ!」
「四季以外は、真澄たちと共に救助に行け。俺は討伐の方に回る。鳴海はどうする?」
「害虫駆除、かな。人探しも兼ねてるし」
「わかった、気を付けろよ」
「四季君はどこに行くんですか?」
「四季君は今不調だからね。僕の所で負傷者の治療の手伝いをしてもらうよ」
「作戦決行は0時頃!それまで各自準備!ガキどもは寝ろ!深夜行動だから寝ねぇと体に毒だ!」
「「「(優ー!)」」」
百鬼の母を思わせるような発言で、会議は一旦終了した。
会議室を出た面々は、それぞれ割り当てられた部屋に向かう。
借りたお金を返すために女性からお金を借り、時間まで昨日とは違う女性のところに行こうとする朽森は、作戦前とは思えないほどいつも通りだった。
鳴海も部下たちと会話しながら通路を進み、自分用の部屋へと辿り着く。
だが少し仮眠をしようとベッドに寝そべった途端、辺りにけたたましい音が鳴り響いた。
突如鳴り響いた警告音。
慌ててドアを開けて廊下に出れば、他のメンバーも続々と顔を見せ始めた。
同じタイミングで出てきた一ノ瀬と共に、鳴海は無陀野たちが集まっている場所へと向かう。
「敵襲!?どどどどどうする!?帰る?」
「ロクロ君、落ち着いて…!」
「侵入者かな?まぁ奥まで来れないって…」
「真澄隊長!」
「どうしたぁ?」
「大勢の桃が迷うことなくこっちに向かってます!」
「どうゆうことだ?」
「わかりません…ただ道を塞いでる時間がありません」
「(誰かが地下の情報を流したか?にしたって迷わず来るのは難しいはずだ…)」
「戦闘に備えろ。四季は部屋にいろ。鳴海対応可能か?」
「もちろん」
「いや…!俺もやる!」
「四季…気をつけてね。無理はしないで…!」
「うん、ありがと!」
鳴海からの優しい言葉に、一ノ瀬は笑顔を見せた。
その間に淀川・並木度の練馬コンビが相手の状況を探り、隊員たちに指示を出す。
次の瞬間には、通路の向こうから大勢の桃の足音が聞こえてきた。
「あの馬鹿チンコ、女の所で寝てんな!」
「無陀野ぉ、ここはお前らに任せるぞ」
「あぁ」
「無陀野先輩!鳴海先輩の力を借りてぇんだが!」
「え?」「内容による」
「うちの馬鹿がまだ来てない。それを連れて来て欲しい!」
「…いけるか?」
「顔の原型が無くなってもいいのなら」
「ある程度原型が残ってたら治せるから構わない」
「あれは?」
「邪魔なら片付けていいぞ。お前なら造作もないだろう?」
「ここから1区画以内にある部屋片っ端から開けて構いません!俺が許可します! 」
「行ってきま~す」
会話が終わると同時に、鳴海はかけだした。
鳴海を見送った無陀野と百鬼は、向かって来る桃に対して戦闘態勢に入った。
百鬼からの指示を受け、言われた通り片っ端から部屋を開けていく鳴海。
そのうちのいくつかには人がおり、驚く相手に対して謝罪をしながら任務を進めて行った。
そして辿り着いた1つの部屋。
勢いよく開けると、驚いた女性の声に続いて、気だるげな男性の声が聞こえてきた。
「キャッ…!」
「どしたの~?」
「お、ビンゴ」
当たりを引いて喜んだのも束の間、目の前に現れた上半身裸の朽森に鳴海は危うく拳を出しそうになる。
何とか堪えて室内を見回し、男物と思われる服をかき集めると、朽森の首根っこを掴んで外へ連れ出した。
「先輩離してくださーい。首ちぎれちゃいますー」
「そんだけ元気なら大丈夫そうだね。ヤリチン」
「あれ、何かあったんですか?」
「桃が大勢押し寄せてんの。とりあえず上着だけでも着てくれる?」
「はいは~い」
鳴海から上着を受け取りサッと羽織ると、朽森は慌てることなく通路を進む。
残りの服を抱えた鳴海もまた、焦る気持ちを隠しながら後に続くのだった。
2人が到着した時、場の盛り上がりは最高潮であり、皆が皆桃を相手に立ち回っていた。
「やばぁ…俺相当出遅れた感じ?てか先輩なんでそんな血塗れなんです?」
「もう10分以上経ってるからね。あとこれは返り血。」
「あのボケやっと来やがった!鳴海先輩、ありがとうございます!怪我したんすか!?」
「いいえ〜。これ返り血だから大丈夫よ」
「大我めっちゃ怒ってんじゃん。ここは少しやる気出すかぁ。先輩俺のかっこいいところ見ててね」
後ろを振り返りながら笑顔でそう言うと、朽森は指先を噛んで血を解放した。
彼の血蝕解放である”聖人廃業”は、教科書の一部を再現する力がある。
「水魅射《すいみい》」
「(能力的には俺と似たり寄ったりだから参考にはなるんだけどなぁ…)」
血でできた小さな魚が集まり、大魚の形を成す。
そしてそのまま桃が集まっている場所へと向かって行き、打撃のように相手を貫くのだった。
その攻撃力は、隊長を務めるだけの強さを持っていた。
「おっせぇんだよ!」
「ごめーん、エッチしてたー」
「史上一番最低な遅刻の理由だな。そんなの鳴海ちゃんに聞かせないでよね」
「一気に畳みかけるぞぉ!紫苑、鳴海先輩の援護しろよ!」
「任して~…わぁ、先輩それはやめて欲しいかも」
朽森が加わったことで、戦況は一気に鬼側が有利になる。
それから30分も経たないうちに桃は全滅し、場は再び落ち着きを取り戻した。