どうも皆様、サカナです
もう旧国カプじゃなくて独墺集じゃないですか、ここ
イタ王ちゃそとか書く予定だったんですけどね…不思議ですね
Twitterで神みたいなシチュエーション見つけまして、それ書きます
花吐き病ですわよ
ろてが報われません、NTRで脳が破壊される方には向いとりませんので、お気をつけくださいまし
私には、たった1人の恋人がいる。
名前はドイツ帝国と言って、無口で無愛想ながら、ミステリアスな雰囲気が美しい人だ。
いつも凛とした真っ直ぐに見つめてくる赤い瞳はルビーよりも綺麗で、時々発せられる声は低くて麗しい。
私は初対面から惚れてしまい、何度もアタックしていた。
花や手紙を送ったり、彼への愛を囁いたり、茶会に誘ったり、とにかく色々。
でも彼は全く靡かなくて、そんな強情なところにもすごく惹かれてしまった。
一年ほど粘ってようやく付き合えた苦労は愛に変わって、蝶よ花よと愛でて、愛していたのだ。
そんなドイツ帝国が、花吐き病を発症した。
よく口を押さえてお手洗いか外へ行くことが増えたから、心配になって問い詰め、その結果がそれである。
「花吐き病って、あの…?」
「…あぁ」
ドイツ帝国を追いかけていた時、息子から「いつか花吐き病になりそうだな」と言われたことから、その病について調べた。
正式名称は確か「嘔吐中枢花被性疾患」
簡単に言えば恋の病。
それも、片思いを拗らせた者が発症する。
私とドイツ帝国は付き合っているのに、そんな病に罹るということは。
「…私のこと、嫌い?」
「!ち、ちがう、そんなこと……ぅ…」
ドイツ帝国が否定しようとした矢先、口を押さえた。
「吐いてみてよ、ねえ」
ドイツ帝国は口を押さえたまま首を振る。
逃げようとしているが、私が片腕を掴んでいるから無理だろう。
花吐き病の患者が吐く花は、罹患者の感情が花として現れるらしい。
「吐け」
ぐぐぐ…と掴んでいる腕に力を込め、口を押さえている方の腕も掴む。
力は私の方が強いのだから、ドイツ帝国は抵抗するだけ無駄だ。
彼は青褪めて必死に抵抗している。
そんなに吐いては拙い花なのか?それとも、花に触れたら感染るからか?
私の本命は君なのだから、吐くわけがない。
「吐けと言っているだろう?」
「ぁ…」
ドイツ帝国の口に当てられていた手を引き剥がした途端、彼の口からは花弁が出てきた。
「苦しいだろ?全部吐いてくれ。私の目の前で、な?」
「ぅ、あ……おぇッ…げほッ…」
アネモネ、ヒヤシンス、沈丁花、マリーゴールド、オダマキ
他にも吐いているが、主な種類はそれだろう。
「随分多いね、重症じゃないか」
またマリーゴールドを吐いた。
「けほっ…ロ、ロシア帝国…これは…」
「この花には別の意味も含まれてるけど、君の心情的にはネガティブなものばかりなんじゃない?」
アネモネ… 「はかない恋」「恋の苦しみ」「見放された」「見捨てられた」
紫のヒヤシンス…「哀しみ」「悲哀」「初恋のひたむきさ」「許してください」
沈丁花…「実らぬ恋」
マリーゴールド…「絶望」「悲嘆」「悲しみ」
赤いオダマキ…「愚か」「心配して震えている」
もちろん他の花もあるし、これらの花は明るい意味も待ち合わせている。
だが、きっとドイツ帝国が吐いた理由はこれなんだろう。
何が実らぬ恋だ、恋の苦しみだ、絶望だ、私の目の前でそんなものを吐くなんて、何のつもりだ?
「なんで私と付き合ったの?他に好きな人がいるのに、どうして?」
ドイツ帝国が吐いた花を踏み散らし、彼を押し倒した。
「相手は誰だ?いつからそうなったの?私のこと嫌いなのか?」
ギュウウ、と細い首を締め上げる。
苦しそうに花弁を1枚吐いて、抵抗してきた。
「ロ…シ……」
怒りで力加減を間違えたらしく、ドイツ帝国は話すこともままならない。
一言二言意味をなさない単語を呟いて、ふっと意識を失った。
「…私、本命じゃなかったんだな」
相手は誰だと問うたものの、きっと二重帝国の野郎に違いない。
あいつと話す時のドイツ帝国は、私の時より嬉しそうだから。
いつも気に掛かっていたけど、選ばれたのは、付き合えたのは私だと信じて疑わなかった。
アネモネの花言葉から察するに、浮気はしていないはず。
でも、もう私への気持ちはない。
ドイツ帝国が吐いた花でいっぱいの部屋は、甘い匂いに満ちて気持ち悪かった。
「…ん…」
酸素がなくなって意識を落としたはずが、どうやらまだ生きている。
ロシア帝国の怒りの強さからして、殺されてもおかしくないと思ったのに。
チカチカと光に目が眩んで、瞬きをした。
あたりにはバラバラにされた花が散っている。
「ロシア帝国…」
彼は怒っていると同時に、泣いていた。
当然だ、彼には自惚れるくらい愛されていたのだから。
私はその気持ちを、最も最悪な形で裏切ってしまった。
いつも飄々している彼のあの顔が、忘れられない。
「…?」
ロシア帝国を探していると、机の上にメモを見つけた。
『ドイツ帝国へ
花を吐くくらいその人のことが好きなら、私とは 別れよう。
直接言えなくてごめんね。
今君に会ったら、殺してしまいそうなんだ。
お幸せに
ロシア帝国』
彼の字だったが、走り書きで少し崩れた文字だ。
それに、彼から私へ手紙やメッセージが送られる時、彼は『君のロシア帝国より』なんてキザな書き方をする。
もう、彼は私のものではない。
もう、私は彼のものではない。
ロマンチストなロシア帝国がこんなメッセージを寄越してきたなんて、相当傷つけてしまった。
「…すまない、ロシア帝国…」
きっと、また私と顔を合わせてくれることはないのだろう。
花が、口から溢れた。
紫色のヒヤシンス…「哀しみ」「悲哀」「初恋のひたむきさ」「許してください」
「悲しみを超えた愛」
暗い部屋の窓から、ロシア帝国はデートするドイツ帝国とその恋人である二重帝国を眺めている。
ぼーっと何も考えず、泣いて泣いて赤く腫れた目元は痛々しいが、それでもその場から動かない。
半開きの口からは大量の花が溢れ、甘い匂いで部屋を満たしていった。
彼は白銀の百合を吐いたのだろうか、自分は黒い薔薇や黄色の水仙、チョコレートコスモスなんかを吐き続けている。
君の隣は私のはずだっただろう。
水を与えないでくれ。
一度咲いた花は、水を待ち続けてしまうだろう。
1人、暗い土の中で、種のまま枯れたかった。
コメント
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報われない露帝ちゃん…誘拐してもいいですか? 露帝ちゃんは私が幸せにします!!(?)