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第五章 交渉
各国はそれぞれ違う車両に乗っていた…
アメリカの車内。
「……ずいぶんと凄い歓迎だったな」
外交官が、窓の外を眺めながら呟いた。
だが、その隣に座る特殊部隊員は返事をしなかった。
「……護衛」
「護衛がどうしたんだ?」
外交官が聞き返す。
隊員は少し間を置いてから口を開いた。
「シャーロットとかいう外交官の横にいた奴だ」
「あの護衛が?」
「ああ」
特殊部隊員の表情は真剣だった。
「俺たちが一対一で戦ったとして……勝てる可能性は低い」
外交官は思わず笑った。
「いやいや、そんなわけないだろ」
しかし、隊員は首を横に振る。
「違う。強いとか、そういう単純な話じゃない」
「あいつの立ち方、視線、周囲への警戒……全部が普通じゃない」
「……あれは別格だ」
外交官は黙り込んだ。
グリーンベレーとして、数多くの戦場を経験してきた人間が言う言葉だったからだ。
「それに……」
隊員が窓の外へ視線を向ける。
「大体……200メートル」
「何が?」
外交官が聞き返す。
隊員は小さく息を吐いた。
「遠くの建物の影……車両の裏側」
「そこにいた」
「……何が?」
「狙撃手だ」
外交官の表情が変わった。
「……見えたのか?」
隊員は淡々と答える。
「一応な」
「嘘だろ……」
「ここで嘘をつくと思うか?」
隊員は冗談を言っている顔ではなかった。
ナシルの歓迎は、表向きには穏やかだった。
しかし――
特殊部隊員たちは理解していた。
これは歓迎ではない。
「我々はあなた方を歓迎する」
そう言いながら。
同時に。
「我々はあなた方を常に見ている」
そう…思えるものだった。
イギリスの車内。
車は静かにナシル王都の街並みを進んでいた。
窓の外を眺めながら、外交官が小さく呟く。
「我々は……自国のために動く」
「そして同時に、世界のために動いてきた」
「それは……昔から変わらない」
しばらく沈黙が続く。
外交官は視線を外へ向けたまま、低い声で続けた。
「だがな……」
「これは、ただの調査ではない気がする」
SAS隊員が横目で見る。
「何を言っている?」
外交官は少し間を置いた。
「……勘だよ」
「だが」
「我々は……無事に帰れるのか、少し怪しい気がしている」
SAS隊員は小さく息を吐いた。
「帰れなくなるなんてことは、流石にまだないだろう」
「我々は国連の調査団だ」
「ナシルだって、そう簡単に手を出せる立場じゃない」
そう言いながらも。
彼自身も完全には否定できなかった。
なぜなら――
空港で見たナシル兵。
整然とした警備。
そして、あの護衛。
どれも普通の国家の対応ではなかった。
その時。
車内の隅で、一人のジャーナリストが黙々とカメラを整備していた。
レンズを確認する。
バッテリーを確認する。
記録媒体を確認する。
彼は一言も発しなかった。
ただ。
この日、自分が撮影するものが――
世界の歴史を変える瞬間になるかもしれないことを。
ドイツの車内
重い空気を切るように外交官が言った
「ナシルとは昔からの付き合いだ」
「何があっても我々は…ナシルとの利益を求める、必要があればナシルの肩を持つ、我々は…ナシルに助けられてきた…だが今回、ナシルは…首筋にナイフを当ててきてるようだよ」
特殊部隊員は…
「まあ…そうだろうな。
ナシルだって、いつ、大国に潰されるか分からないんだ、疑心暗鬼にもなるだろうよ」
外交官は窓の外を見つめながら呟いた
「………ここが俺たちの墓場にならないことを祈るばかりだな」
ロシアの車内
少し暗い車内で特殊部隊が口を開いた
「今回、俺たちはおそらく死ぬかもしれない、だから全員!遺書を書いてきた。外交官の方もそれをわかっている…だが…どうしてもやるせないんだよ…」
全員が何も喋らず…時間だけが過ぎていった。
日本の車内
少々重い空気が流れる…それは、なぜかナシルの外交官と護衛2名が乗っているからである
そしてシャーロットが口を開く
「ずいぶんと警戒されてますね、まあ…私達は武力で殴ってこない限り、問題ありません」
「ところで…日本には美味しいものが沢山あるようですね?」
シャーロットの目は子供の様にキラキラしていた
「いやぁ私ね?日本のお菓子が大好きでね!
年に2回ぐらいは旅行に行くんですよ!!」
そうやって流暢な日本語でシャーロットは話す
日本の外交官は目を疑う
「えっ?日本語?」
それはそうである、本来ここでは聞こえることの無いと言っても過言ではない言語が、目の前のナシル外交官、シャーロットから発せられた物だからだ、
「日本の和菓子がお好きなんですか?」
日本の外交官は、そう問いかける
シャーロットは
「ええ!もちろんですとも!!あの優しい甘み…あれこそ日本文化の醍醐味ですよ!!」
日本から来た全員は…『今度来る時…手土産でも持ってくるか…』そう思ったのであった
《同日朝8時》
交渉は王宮内の会議室で始まった。
国連調査団の各国代表らの前には、ナシルの外交官が座っていた。
両者が向かい合うこの場は、さながら国際協議の場とも言えた。
だが、その実態は『国際協議』とはかけ離れたものと言えた。
世界的な利益を求め、人類の繁栄の為に行動してきた国連。
そして、ナシルという祖国を守るため、秘密を守るために立つ者たち。
この相容れることのできない両者が、同じ場に存在していた。
議題は、とても単純だった。
《水晶内》への国際調査権限。
国連側は『人類全体の利益』。
そして『水晶内の人々の人権回復』を主張する。
対してナシル側は、それを『自国領域への過度な介入』と一瞥した。
両者の主張は交わることなく、緊張だけが積み重なっていく。
《同日午前11時》
2時間以上に及んだ交渉は、一時中止された。
しかし、それは決裂を意味するものではなかった。
国連調査団とナシル政府の間で続いた協議の末、ナシルの監視の下で、国連調査団の《水晶》内部への立ち入りを認める決定を下した。
それはナシルにとって、大きな譲歩であった。
数十年もの間、自国のみが管理し続けてきた絶対的な未知の領域。
世界に存在を知られてからも、決して外部の手を入れなかった場所。
その扉が、ついに開かれる。
国連調査団の各国は、必要最低限の装備を整え、《水晶》へ向かう。
彼らが向かう先に存在するものが、人類の新たな可能性なのか。
それとも――
世界の秩序を揺るがす何かなのか。
コメント
1件
うわっ、各国の車内の空気感がぜんぜん違ってて、一気に引き込まれた…!アメリカ隊員の「シャーロットの護衛は別格」って冷静な分析、めっちゃゾクゾクした。でも日本車両でいきなりシャーロットが流暢な日本語で和菓子の話し始めて、緊張ぶち壊しに来るの好き🤍笑 あれで日本の外交官たちも警戒ちょっと緩んだんじゃないかな。ついに水晶内部への立ち入りかぁ…何が待ってるのか、ドキドキする🥀