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悠人はいつも強引過ぎる。
「穂乃果ちゃん。それならそうと言ってくれれば良かったのに。本当におめでたいことだよ」
違うんだってば……
結婚とか、全く決まってないから。
私達はまだ付き合ってもいないんだし。
でも……
ここまできたら話を合わすしかない。わざわざ来てくれた悠人にも申し訳ないし。
「い、いろいろとありがとうございました。突然で本当にごめんなさい。今月いっぱいで退職させていただきたいのですが……」
「私からもお願いします。今、忙しい時期ですし、もし良かったら、新しい方が見つかるまでうちの美容師を派遣させていただきます」
悠人の優しい気遣いが嬉しい。
「まあ、嬉しいです。でも、大丈夫ですよ。うちは細々とやってますから。手伝いに来てくれる友達もいますし、募集しながら気長に待ちます。穂乃果ちゃん、今月と言わず、すぐに月城さんの店に行きなさい」
オーナー、そんな友達本当にいるのかな?
私のために嘘ついてくれてるの?
「オーナー、本当に大丈夫なんですか?」
「私はこれでもプロだよ。おばちゃんだけどね。ああそうだ、穂乃果ちゃん、あなたが月城さんの指導で1人前になったら、私の髪を切ってね。楽しみにしてるから。頑張りなよ、応援してる。今まで助けてくれてありがとうね。月城さん、穂乃果ちゃんを幸せにしてやって下さいね。こんないい子、なかなかいないですよ。結婚決まったら、必ず教えてね」
ダメだ……
泣けちゃうよ。
「はい。必ず幸せにします。お心に感謝致します。ありがとうございます。それでももし、何かお困りなことがありましたら、その名刺の番号にいつでも電話をください」
オーナーは涙をぬぐった。
「優しい彼氏で……穂乃果ちゃんは幸せだね」
「ありがとうございます。本当に……お世話になりました」
胸がいっぱいになる。
私達はオーナーに何度も丁寧にお礼を言ってから、店を出た。
「素晴らしいオーナーさんだな。穂乃果のことを思って、ああ言って下さったんだな」