渡辺も目黒も平和でニコニコしている。こういう時に限って、厄災が足音忍ばせてやって来るのだが、今回はそれもなく、無事に福岡コンサートを迎えられそうだと2人は話していた。渡辺は専務のことを「死神」と呼ぶ。社長のことは「鬼」と呼ぶ。
目黒の家で2人で晩ご飯を食べている。ため息を吐く渡辺。
目黒は笑うしかないけど、笑ったら拗ねる。箸を置いた手をそっと握る。
渡辺ー鬼に2枚渡したんだろ?
目黒ー頼まれて。
渡辺ー死神も2枚言ってきたんだけど。
目黒ー関係者席は嫌だって言ってるから、制作開放席しかありませんって言ったんだけど。
渡辺ー娘が友達と行くんだろ?
目黒ー翔太くん、気にしないの。
渡辺ーたとえ、制作開放席だとしても、ファンが座るべきだろ? 親を使って、ちゃっかり席を用意してもらうなんて、ファンに悪い。
目黒ーでも、来ちゃうんだな。
渡辺ーお前のファンじゃないか。
目黒ーうん。
渡辺ー無視しろ、その席。
目黒ーすぐ隣りには、普通のファンが座るけど?
渡辺ーだめ、鬼と死神の娘は無視。
目黒ー翔太くん・・。
渡辺の発言が天に聞こえたか、その日の夜から高熱と頭痛で困っている。熱は39度越え、頭痛で動けない。
そんな日が2日続いた。渡辺は目黒のベッドで唸っている。
目黒ー病院行ったのに熱、下がんないね。
渡辺ー寝てるから、練習行って来い。
目黒ー今日はそばにいるよ。
渡辺ーごめん。
シーツに潜って眠っている。
光も辛いみたいで、カーテンを閉め部屋を暗くして眠っているが、熱が下がらない。病院に行って点滴をしたのに、38度までしか下がらなかった。アイスノンと冷えピタで眠っているが効果はない。
渡辺はシーツに潜っている。
目黒は晩ご飯を作っている。渡辺が食べるか分からない。食べてもちょっとだろうと、1人分より少し多いくらい。
目黒ー翔太くん?
渡辺ー頭痛い。
目黒ーおいで。
渡辺をシーツごと、抱き寄せ抱えてソファに連れてきた。
目黒が、箸で摘んで口に運ぶが食べない。目黒にもたれて、目を閉じている。
目黒ー少し食べないと。
渡辺ーんっ・・頭痛い・・。
目黒ー翔太くん、このまま寝る?
渡辺ー抱きしめてて。
目黒ーどうしたんだろうね、こんなに熱が下がらないの。
渡辺ーあの2人の呪いだ。
目黒ーこら、そんなこと言ったらだめ。
渡辺ーもっと強く抱いて。
シーツごと目黒に抱きしめてもらい、大きな息を吐き出す。
熱の原因は分からない、頭痛は普段から持っている。熱の原因は、もしかしたらと思うことがある。
目黒には言っていない
コンサートの構成は、阿部と深澤が考えて、皆んなで相談して決める。言ってくるのだ。
2人して、娘のそばを目黒のフロートが通り立ち止まるようにしろと。
娘2人の席はフロートは確かに通る、だが娘のために目黒のだけ止まらせるわけにはいかない。そんなことも分からないのだろうか?
目黒ー何かあったね?
渡辺ー・・。
目黒ー約束。
渡辺は、2人の話をして聞かせる。
目黒は黙って聞いていたが、渡辺を抱きしめる。
また、1人、辛い目に遭ってる。
目黒は次の日、事務所に行き、娘さんのためにコンサートをしているわけじゃない。
そんな勝手出来ないと言いに行った。
目黒ー言ってきた。
渡辺ー・・お仕置き?
目黒ー黙ってたからね。
梨花さんと約束してから、お仕置きは甘いものになった。
渡辺が我を忘れ目黒を求めて腰を振り、助けを呼びそれでも快感を得られない。「おかしくなるかと思った」と言う。
目黒ーコンサートはいつも通りする。あの2人の娘さんのことは知らない。
渡辺ーん。
目黒ー熱、測ってみて?
平熱とはいかないが、微熱程度まで下がった。
シーツの海で目黒と2人抱き合っている。
渡辺ー今日はだめだからな。
目黒ー何で?
渡辺ー眠いし、頭痛いし。
目黒ー治るんじゃない?
渡辺ーバカ言え。
目黒ーこの間は熱下がったじゃない?
渡辺ー・・。
目黒ーお仕置きの続きね。
渡辺ーばか、お仕置き済んだ。
目黒ー愛したいの。
渡辺ー・・あんな風にしない?
目黒ーん、お仕置きは終わりでしょ?
渡辺ーはぁはぁ・・いっしょ・・。
目黒ー違うよ、大事にしてるの。
渡辺ーやだ・・またおかしくなる。
目黒に愛されてるけど、快感が強すぎて辛い。
渡辺ーあっ・・あっ・・はぁ・・。
渡辺ーたすけ・・て・・いい・・。
笑ってる目黒。渡辺を激しく突き上げる。
渡辺ーだめ・・もう・・もう・・。
目黒ーいいよ。
渡辺ーはぁはぁ・・でる・・で・・る・・れ・・ん。
意識を飛ばして倒れてくる渡辺。
目黒は愛おしそうに抱きしめる。
頬にキスして、目覚めるのを待つ。
目黒ーあんな鬼と死神の言う通りにすることないから。
目黒は渡辺を抱きしめ、そう呟く。
鬼は鬼でも、「翔太溺愛の鬼」をなめるな。
完
コメント
8件
最高過ぎる😆 翔太溺愛の鬼(蓮)にかかると死神と鬼も影を潜めるのかな🤣