風磨くんからのメッセージに返信して、そっとスマホを机に置いた。
ふぅ、と思わずため息が出てぼんやりしていた僕は元貴が隣で僕を見つめていることに気づかなかった。
「今日の涼ちゃんはため息ばっかりでそのくせソワソワしてて見てて落ち着かない」
「えっ?!あっ、びっくりしたぁ、そんなことないよ、ソワソワしてないしっ」
急に話しかけるのやめてくんないかな、びっくりしちゃう。元貴は何もかも見透かしてしまうような感じで僕を見つめた。
「風磨くんにキスされたから?それとも好きって言われたから? 」
「はぁっ?!なんで知ってるの?!」
思わずおっきな声が出て周りをみたけど誰もいなくて良かった···ほっとしてけどなんで元貴がそんなの知ってるのってヒソヒソと詰め寄った。
「風磨くんと涼ちゃんさっきおかしかったじゃん、だから聞いたら喋ってくれた」
「ちが···キスは違わないけど、好きも違わないけど、別にそのせいでソワソワしてるわけじゃないよ」
「ふぅん?じゃ、涼ちゃんは別に風磨くんのことなんとも思ってないんだ」
風磨くんのこと···僕はどう思ってるんだろう?
「別になんとも···それに、風磨くんは好きな人がいるって言ってたし」
だから、僕へのキスとか好きっていうのはきっと酔っていたからで、本気じゃない。
「ふぅぅーん。そっかそっか、じゃあ風磨くんと俺が付き合ってもいいのね?風磨くんの好きな人って実は俺なんだよね」
「えぇぇっ?そうなの?!」
まさか、風磨くんがあんなに愛おしそうに話してた人って元貴だったの?!
衝撃の事実に驚きを隠せない。
「涼ちゃんは風磨くんのことなんとも思ってないならいいよね?」
風磨くんと、元貴が幸せになるなら。
そう言いたかったのに、声が出ない。
なんで元貴が好きなら僕に会えて嬉しいって言ったの?僕の手に風磨くんが手を重ねてきたのはどうして?優しくしてくれて キスして好きだって言ってくれたのはなんで???
「やだ···やだよ、なんでかわかんないけどやだぁ···」
なんでおめでとうって言えないの。
どうして僕は寂しいって思って泣いてるの。驚いたけどキスが嫌じゃなかったって今更ドキドキしているの。
「涼ちゃんがあんなに楽しそうに風磨くんとのこと話してて俺ちょっと驚いたよ」
風磨くんと食事に行った時のこと、メッセージのやり取り。僕は元貴に色々と報告してたんだった。
「風磨くんのこと涼ちゃんはどう思う?どんな存在?」
僕?
僕は···風磨くんのこと···。
「風磨くんは···優しくていつも僕を褒めてくれて···話してて楽しくって大事にしてくれて···手を握るとドキドキして、キスも嫌じゃなくって恥ずかしかったけど嬉しくて···。けど元貴と付き合うって考えたら嫌なの···もう会えないのも嫌だ、これからも仲良しでいたい···」
「それが好きってことなんじゃない?」
「好き?僕は···風磨くんのことが好きなの?」
「たぶんね、良かったね」
元貴はうふふって笑うけど、僕は少しパニックになる。
「けど風磨くんは元貴を好きなんだよね?」
「あれは嘘!風磨くんの好きな人は知ってるけど俺じゃないよ、それに俺には別に好きな人がいるし」
「えぇ···?!」
「俺のことはいいからさ、早く風磨くんが本当は誰を好きか聞きに行きなよ。このあと番組一緒なんだからいるでしょ。タイミング逃したらすれ違うこともあるんだから···」
元貴のことも気になるけど、今は風磨くんに会いたい。さっきも変な態度をとっちゃったから。
「···行ってくる!」
「ん、頑張って」
そう言うと涼ちゃんは慌ただしく控室を出ていった。
「まぁ、悪いようにはなんないよね」
「なんの話?涼ちゃんすごい勢いで出て行ったけど」
入れ替わりに若井が部屋に帰ってきた。
「風磨くんに会いに行くんだって」
「へぇ、うまくいったらいいね」
若井は俺から話を聞いていたからすんなり状況がわかったらしい。
「そうだね。それよりさ、珍しく2人きりなんですけど?」
「うん」
「忙しくてなかなかそんな時間ないからさ、可愛い恋人にキスくらいしてほしいなぁ」
若井は隣に座ると、嬉しそうに笑って俺にキスをくれる。
「ねぇ、ぎゅってして」
「元貴かわいい···」
涼ちゃんのいないうちに、俺と若井は束の間の恋人同士の時間を楽しむ。
しばらく帰ってきませんように。
まぁ、そんな願いは割と早めに打ち砕かれたわけなんだけど。
コメント
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うあぁぁ… なんか完結してないのにもうすっごい多幸感に包まれてる… 焦るふまくんも、鈍めな涼ちゃんも、サポートしつつも自分は恋人に甘えちゃうもっくんも、それに従ってくれるひろぱもぜんぶかわいい…♡
あー⋯いいなぁ。恋したいわ。リアルなんてロクなのいないけどね。