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あ、また。
最近元貴は映画の撮影で出会ったという女の子と話していることが多い。
今もそうだ。
せっかく部屋で2人きりなのにな。
ゲームしよって急に誘ったのは僕だけど、一緒にいる時くらいスマホじゃなくてこっち見てよ。
そんな女の子じゃなくて…
そんな事本人に言えるはずもなくて。
言ってしまえば元貴のことが好きだとばれてしまう。今の関係が崩れるのは何よりも怖い。
少し目頭がツンとなる感覚がしてソファの端で膝を抱えてまるくなる。
その様子を見てか
「どーしたの、若井。ごめんね暇だったでしょ」
と言いながら頭を撫でて微笑んでくる。そんな元貴がたまらなく好きだと、実感させられる。ほんと罪なやつだ。
…もしかしたら、あの女の子にもこんな顔を向けてるのかな…?
いや、これ以上に甘い顔かもしれない。
あ、無理だ。
泣きそうになるのを必死にこらえて
「よし!やっとゲームできるね!」
なんて大声で言う。
どこからどう見ても空元気だろうが、今はこうしてないとやってられない。
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ゲームを1度始めるとお互い熱中してしまいあっという間に時間が過ぎた。
気づくともう深夜。
「ね〜、今日泊まってってもいい?」
もう夜遅いしな。
頷くと
「よっしゃ〜!」
ってにこにこしながら返事が返ってきた
元貴がお風呂に入っている間、ふと思いたって写真の整理をすることにした。
うわ、なつかし!
箱の中から見つけたのは中学生の頃の、元貴とのツーショットだった。
恋心を自覚したのは数年前だが、もしかしたらこの時から好きだったのかもしれないなぁ、なんて考えていると自然と口角が上がってしまう。
しばらくその頃の写真を眺めていると
ピロン
と通知音がなった。
スマホを見ても通知は来ていない。
ソファの方を見ると元貴のスマホが忘れられていた。
ふと気になり表示されている通知を確認する
『ですね!来週楽しみにしてます💕︎』
あ、あの子からだ。
来週?
遊びに行くのかな?
もしかして2人で?
きっとそうなのだろう。
最近、というかあの子と出会ってから元貴は楽しそうだ。なんとなくだが彼女のことが好きなのだろう、と思っていた。
このメールを見る限り彼女も元貴のことを思っている。
つまり両想い…
苦しい。
俺の方が元貴のこと知ってるのに。
大好きなのに。
なんでなの。
嫉妬でおかしくなってしまいそうだった。
自分が女だったら、なんて言う妄想をしてまたしんどくなってしまう。
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頭からふわふわとした感覚がする。
目を開くと元貴がいた。
どうやら頭を撫でていたらしい。
元貴は何かと頭を撫でてくる。
理由は分からない。
今までは心地よくてなんの抵抗もせず大人しく撫でられていた。
でも今日は余計に胸が締め付けられる。
「あ、起きた。お風呂ありがと」
元貴の声にろくに反応もせずぽやぽやした頭のまま足早にお風呂場へ向かった。
湯船にぶくぶくと沈んでみる。
とにかく今は元貴の顔を見ることが憂鬱だった。
また思わせぶり。
片思いなんて辛いだけだ。
ましてや相手が親友なんて。
それでも俺には元貴が必要なんだ。
だからこそこの恋が報われないとしても元貴を応援していたい。応援できる立場でありたい。
…けど元貴には僕が必要なのかな。
十数分経つとさすがにのぼせてきて諦めてお風呂から出た。
髪を乾かそうと思ったけど洗面台にドライヤーが見当たらない。
リビングに持ってったのか
リビングに行くと案の定ドライヤーは元貴が持っていた。
髪がびしょびしょに濡れているのを見てか、
「乾かしたげる」と言いながら元貴の足の間の床を指さしている。
もちろんそんな気には到底なれなくて。
もう誑かされなんかしない。
元貴の思い通り(?)にはさせない。
「自分でやるからいい」
と無理やり奪おうとすると、形のいい唇をツンと尖らせながら避けてくる。
イラッとして少し振りかぶってドライヤーに手を伸ばすとのぼせているせいかバランスを崩してソファの方へ倒れ込んでしまった。
目をぱちぱち開くと目の前には元貴の顔。
相変わらず綺麗な顔立ちだ。
少ししてから元貴との距離が10センチもないことに気が付き、慌てておきあがる。
途端に手首を掴まれて引き寄せられた。
「…ん、ふっ 」
頭では何が起こっているのか理解出来なかったが、脳がピリピリとしてダメだと訴えかけてくる。
息をするために開いた口に少しざらついた感触がしたところで元貴の肩をグッと押し返した。
「もういい。返して、」
動かない元貴からドライヤーを奪い、
「ベッド使っていいから。」
とだけ言い残し洗面台に再び向かった。
ドライヤーをかけながら思わず溢れてきてしまった涙を拭う。
また、期待だけさせて。
なんであんなことしたのか全く分からない。
あの子と間違えたの?
応援したいと思った気持ちも決して嘘では無いのに。
あの子に取られなくない、と思ってしまう。
本当の想いを見失ってしまった。
悶々と考えてはまた涙が零れる。
独りで寂しい。と洗面所でうずくまって静かに泣いた。
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結局ほとんど寝れずに朝になってしまった。
元貴と顔を合わせないように早く用意をして家を出ることにした。
健気にも作ってしまった朝食に
『昨日のはなかったことにしよ。鍵は郵便受けにいれといて』
と書いたメモと鍵を添えて家を出た。
外はさすがにまだ寒くて身震いしてしまう。
だいぶ早い時間だしなー。
どこ行こーかな。
無理やりに元貴のことを考えないよう思考をそらすことに必死だった。
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以上です!お読みいただきありがとうございました!
前の続き書いていないのに新しいのすみません。
しかも同じようなお話ですね💦
実はこのお話ある曲をイメージしているんですが、なにか分かりますか?
よければコメントしてくださると嬉しいです!
コメント
6件
若井さんが悲しむ度に胸がギュンッて なりました。 やっぱひそさんのお話好きです!
相変わらず、素晴らしい語彙力ですね… 切なさだけではなく、愛おしいと思う気持ちを捨てきれない若井さんが見ていてグッときます😭😭 あと、間違えてたら申し訳ないのですが、かなり文の中にProposeを感じました…✋️