嵐の後半戦。
午後からの会議は俺に加えて若井まで不機嫌になり、周りのスタッフたちがオロオロしているのがわかったが、気を配る余裕なんかない。もちろん午後の会議も全く話が決まらず早めのお開きとなった。
気分が悪く、俺がさっさと帰ろうと控室で帰り支度をしていると涼ちゃんが声をかけてきた。
さっき若井と交わした会話が思い出され、涼ちゃんの顔を見る事ができず、俺は手を動かし続ける。
「俺、元貴の気に触ることしちゃった?」
恐る恐るといった感じで話しかけくる涼ちゃんに、一気になんだかもうどうでもいいような気分になってきた。
「…涼ちゃんさ。若井と何かあった?」
「えっ?」
「俺のいない間、若井の家に泊まってたんだろ?その間に何かあった?」
涼ちゃんは驚いたように目を見開く。
「…もしかして若井と浮気しちゃった?」
そう聞く俺に涼ちゃんは慌てて否定してくる。そりゃ否定するよね。
「…キスマーク」
俺がそう言ってやると涼ちゃんは咄嗟に首元に手をやる。
「あの日もなんか涼ちゃんおかしかったもんね」
言い訳をはじめる涼ちゃんに俺はたたみかけるように言う。
「俺の事若井に『セフレ』だって言ったんだって?」
若井のこの言葉が耳から離れない。それにそんな話題を出す事自体が普通の状況では考えられないのだ。
「何?俺から若井に乗り換えるの?そうしたいなら乗り換えればいいじゃないか!」
そう怒鳴りつけた俺に涼ちゃんはしばらくの間何も言い返してこない。
「元貴は俺の事そんな軽いヤツだと思ってるんだ…」
冷たい声色で涼ちゃんが呟く。
俺はハッと顔を上げて涼ちゃんを見る。
「…だって俺たち付き合ってるわけじゃないでしょ?だったら『セフレ』以外の何物でもないじゃない」
涼ちゃんのその言葉にハッとさせられる。
「なんだよ!元貴なんて何も言ってくれないくせに!」
目に涙をにじませながらそう叫び、涼ちゃんは部屋を飛び出していった。
そんな涼ちゃんを呆然と見送りながら俺は思う。
俺と涼ちゃんは付き合っているわけじゃない。でもエッチはしている。確かにこんなの『セフレ』以外の何物でもない。まして俺は涼ちゃんに何も気持ちを伝えていない。
俺がいつまでも怖がって気持ちを伝える事から逃げ回っていたからだ。
頭に血がのぼって言い過ぎてしまった。
すぐに謝らなくちゃ、と涼ちゃんを探して俺も廊下に飛び出す。
涼ちゃんを探して廊下を歩いていると、近くで涼ちゃんの泣き声が聞こえた気がして足を止める。こっちの方からだ。
近づいて開いていた扉から中をそっと覗いて見る。
扉の向こうに見えたのは、泣く涼ちゃんを優しく抱きしめてなぐさめている若井の姿。
その光景にショックを受けた。
…俺とは逆だ。
俺と涼ちゃんはいつだって俺が泣いてそれを涼ちゃんになぐさめてもらうばかり。だからあんな風に悲しそうに泣いている涼ちゃんを見るのは初めてで…。
涼ちゃんをあんな風に泣かせたのは俺。そして悲しそうに泣く涼ちゃんをなぐさめるのは俺ではなく若井。
胸がズキンと痛む。
俺には涼ちゃんしかいなくても、涼ちゃんにとっては俺より若井との方がもしかしたら幸せなのかもしれない。
見ていられなくなった俺は静かにその場を立ち去った…。
やっともっくんが涼ちゃんの状況まで追いついた。もっくん精神的にボコボコにやられてトドメまで刺されてました😅
次回からは涼ちゃん視点に戻ります。
さぁ、これからどうやってハッピーエンドに持っていくでしょうか?
楽しみにしててくださいね。
コメント
7件
こっちの心臓もボコボコです🥲
2人がだんだん子犬に見えてきた、、、可愛すぎて、、、これは病気かもしれない、、、
おぉ✨ハッピーエンドになるのね!楽しみですわぁ!