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今日はとても落ち込む出来事があった。
店の奥から風磨が出迎えてくれる。
前を開けたジャケットが、あえて崩した雰囲気で素敵だった。
風磨はしばらく私の顔を見つめたあと、ホールの人に何やら小声で相談を始めた。
そしてしばらくたってから、
「お待たせ、じゃ行こう」と手を差し出してきた。
風磨に手を預けたとたん、ぐっと握られる。
その力強さに鼓動が高なった。
導びかれたのは一番奥の席だ。そこは少し影になっていて一人分の死角ができている。
「せっかく会えたと思ったのに、元気ないじゃん」
私をその、周りからは見えない席に座らせると、風磨は自分も隣に座った。
「なんでわかったの」
と聞くと、
「わかるよ普通に、いつも見てるんだから」
と答え、
襟元が開いたシャツの首筋に
「いいよ、甘えて」と私の頭をもたれかけさせた。
私が前に贈った香水の匂いがする。
私も持っているから知ってるけど、もうラストノートーー最後に残る、深く甘い香りだった。
仕事中つけてるよ。
〇〇には元気もらってる。
そんなふうに言うから、泣けてきてしまった。
「ハハハッ、泣け泣け〜!」
小声で笑って、風磨は指先で、私の髪をとくように撫でる。
温かい風磨の素肌に、甘くて深い香り。
涙が流れ落ち、荒れていた気持ちは
たちまち安心に変わっていった。
今夜はよく眠れそう。
ありがとう、風磨。
end