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「ああ、会いたい。いつか、あいつに会って話をするのが楽しみなんだ」
「必ず会えます。会った時に、たくさんたくさん話して下さいね」
「そうだな、ありがとう。彩葉は本当に優しいな」
君を好きになれて、君が側にいてくれて……
そして今、全て話せたことで、俺が抱えていた苦悩はスっと消えていった。
いつか必ず弟に会える、彩葉の言葉で、それは確信に変わった。
「慶都さんには、いつも笑顔でいてほしいです」
「笑顔……ずっと忘れてたよ。さっきみたいに心から笑うことを。そんな当たり前のことを思い出させてくれた君には感謝しかない」
「慶都さん……」
「彩葉を好きになれて本当に良かったと思ってる。海外にいる間も、他の誰にも目移りすることなく、ただ君を一途に想ってた」
この気持ち、全て君に届けばいいのに……
いったい、どういう言葉で伝えればいいんだろうか?
あまり恋愛をしてこなかったからか、自分の語彙力の乏しさにもどかしくなる。
こればかりは、どんなにテストの点数が良くても意味が無いようだ。
「私、ここまで慶都さんに想ってもらえて幸せです。ずっと遠くから見つめていられるだけで良かったのに、今はこんな近くにいられて……これは夢なんでしょうか?」
夢なんかじゃない、目の前の俺をちゃんと見てほしい。
「最初からこうなるべきだったんだ。これからはすぐ近くでずっと君を守る。だから……」
ちゃんと言葉にして、君に伝える。
治まらない動悸を必死で隠して、息を整え……
「慶都さん?」
「彩葉、俺と結婚してくれないか? そして、可愛い雪都と3人で一緒に暮らそう」
そう告げた瞬間、彩葉は目を真っ赤にした。
「雪都は俺によく似てる。保育園で初めて会った時、こんな小さな体で一生懸命生きてるんだって思うと、この子の成長をずっと見守りたいと思った。この腕でギュッと抱きしめてやりたかった」
堪えきれずに涙を流す彩葉。
ダメだ、情けないが、俺も……
子どものことになると、親はこんなにも涙もろくなるものなんだ……
初めて、子を持つ親の本当の思いを知った気がした。
「自分の血が流れてる愛おしい雪都とたくさん遊びたいし、いろいろ話したい。子どもが見てる世界を俺も一緒に見てみたい。雪都が受け入れてくれるなら……これからは父親として、毎日側にいてやりたいんだ」
「嬉しくて、感謝でいっぱいです。雪都はきっと慶都さんのことを父親として受け入れます。でも、私は、本当にこのまま慶都さんの申し出をお受けしてもいいんでしょうか?」
申し訳なさそうに下を向く彩葉。
「当たり前だ。もうすぐ俺は九条グループの副社長になる。その時、君には側にいて俺を支えてもらいたい。他の女性ではダメなんだ」
「……」
「どうした?」
黙ってうつむいていた彩葉が、ゆっくりと話し出す。
「すみません……マリエさんのこと、私、ご本人からいろいろと聞いてしまいました」
「彼女、君のところに行ったのか?」
彩葉がうなづく。
「すまない。彼女には何度話しても理解してもらえず、仕方なく君の名前を出してしまった。でも、わかってもらえるまでキチンと話をするつもりだ。だから、心配しないでほしい」