「本当に……私……慶都さんの側にいてもいいんですか?」
「もちろんだ。ずっと側にいてほしい」
ニコッと笑いかけたら、彩葉はギュッと目を閉じて、ポロポロと大粒の涙を落とした。
「慶都……さん、私……あなたの側にいたい。ずっと一緒に……」
必死で涙を堪え、絞り出すように言ってくれたその言葉。
震える唇が、その言葉の重さを物語っている。
彩葉の気持ちは……嘘じゃない。
一生懸命想いを語るこの人を、今度こそ死ぬ気で守り抜きたいと強く思った。
「雪都と3人で幸せになろう。毎日笑顔で過ごせるように、ずっと待たせた分も、彩葉の心を俺の愛でいっぱい満たしてやるから」
美しい肌を涙で濡らして、彩葉はうなづいた。
「本当に夢みたいです。ずっとずっと……私も慶都さんが好きでした」
そう言って、言葉を詰まらせる彩葉の肩にそっと手を差し伸べ、ゆっくりとさすった。
「すみません、ありがとうございます。何だか胸がいっぱいで」
「ゆっくりでいい。彩葉の想い、ちゃんと聞かせて」
「はい……私、慶都さんとは釣り合わないから、必死で忘れなきゃって思って、何度も何度も忘れる努力をしました。でも、慶都さんを忘れることなんてできなくて。いっつもグズグズ悩んでました。なのに……あなたはこんな私をずっと想っててくれたんですね。信じられないけど、すごく嬉しいです」
「彩葉……」
「やっと、自分の本当の気持ちに素直になりたいって思えました。だって、こんなにも胸が熱いから。私、慶都さんの胸に飛び込みたい。もう、迷いたくないです」
その瞬間……
夜空を彩るように、一輪の大きな花が美しく咲いた。
まるで、2人を祝福するかのように。
俺は彩葉の顔を覗きこんでうなづいてから、その手を取って、そっと握った。
繋いだ手から伝わってくるぬくもりに、心は深くつき動かされ……
たとえ全て失っても、世界で1番愛おしい人の、この手だけは絶対に離さないと誓った。
地上から高く上へと勢いよく飛び出し、その豪華な姿を魅せる花火達。
次から次へと鮮やかな色で、大きく、くっきりと描かれていく。
咲いてはすぐに散りゆく、たった数秒間の儚くも美しい花火の競演。
川の向こう岸に見える低い花火は、水面にも映り込み、キラキラときらめいて、また違う趣で皆を楽しませている。
「すごく綺麗」
「ああ、綺麗だ」
十分過ぎる程堪能した最後を飾るのは、メインのスターマイン。
数百発の様々な花火が連続して見事に打ち上がる。
あまりにも壮大で美しい世界観。
目の前に広がる夢のような光景に、心をグッと掴まれ、何ともいえない感動が胸に押し寄せた。
涙を堪える自分を見せるのは、正直、はばかられる。
今まで、人前で泣くことなど1度もなかったから。
でも、彩葉になら、自分の弱さも含めた全てを見せてもいいと思った。
どうしてそんなに可愛いのか、どうしてそんなに魅力的なのか、どうしてそんなに……
どんどん溢れ出すこの想い。
彩葉、君が愛おしい。
ずっと君を見ていたい。
君にもう一度出会えて……本当に良かった。
花火が終わってもその感動が冷めることはなく、余韻を噛み締めるように、俺達は手を繋いだまま……同じ道を帰った。