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夜のナイトレイブンカレッジは、昼間よりも少しだけ本音に近い。
ほとんどの寮生が眠りについた頃、ハーツラビュル寮のラウンジに灯りがひとつ残っていた。
「……まだ起きてたのか」
ドアを開けたのはトレイ。
ソファにはリドルが座っていて、珍しくネクタイを緩めている。
「君こそ。消灯時間はとっくに過ぎているはずだよ」
そう言いながらも、リドルは咎める声色じゃなかった。
テーブルの上には、湯気の立つティーカップが二つ。
トレイはそれを見て、ふっと笑う。
「また紅茶の実験か? 今度は爆発しないやつ?」
「失礼だな。これは“心を落ち着かせる配合”だよ。
最近、寮生たちが無理をしている気がしてね」
トレイはカップを手に取る。
一口飲んで、目を細めた。
「……甘いけど、後味が軽い。悪くない」
「だろう?」
リドルは少しだけ胸を張る。
沈黙が落ちる。
でも気まずさはない。ただ、夜が静かなだけ。
「リドル」
「何だい?」
「寮長ってのはさ、大変だな」
その言葉に、リドルは一瞬だけ目を伏せた。
それから、カップを見つめたまま答える。
「……大変だけど、嫌いじゃない。
誰かの居場所を守るのは、悪くない気分だ」
トレイは何も言わず、もう一口紅茶を飲んだ。
ラウンジの時計が、静かに時を刻む。
今夜のハーツラビュルは、珍しくとても穏やかだった。