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『都会の交差点で出会った君へ』 ③ 好きっ て気持ちが、静かに動き出す
その日も、放課後。
蓮翔と璃蓮はいつものように、コンビニで甘いもの を買って、近くの公園に向かった。
ベンチに座って、お互いの好きなお菓子を食べなが ら、どうでもいいような話で笑い合う。
「なあ蓮翔ってさ、なんでそんな優しいん?」
璃蓮がぽつりと聞いた。
「… え?」
「うち、最初会ったときから思っててん。 落とした荷物も、寒い日も、いつも先に気づいてく れる。
そういうとこ、なんか… あったかい。」
蓮翔は、不意に心臓がどくんと鳴った。
「… 別に。璃蓮が困ってたら、放っとけへんだ け。」
「ふふ、そういうとこやって!」
璃蓮は笑って、チョコのついた指先で、蓮翔のほっ ぺをツンとつついた。
「も、もう…! なにしてんねん」
「んー?なんとなく?」
いつもは天然で、明るくて、なんでも笑い飛ばす璃 蓮が、
今だけちょっとだけ違う顔をしてる気がした。
そのあと、少しの沈黙。
でも、変な気まずさはなかった。
「… なあ、璃蓮。」
「ん?」
「もし、誰かが璃蓮のこと好きって言ったら… どう する?」
璃蓮はちょっと驚いた顔をして、それから笑った。
「んー、わからんけど…
その人が“蓮翔”やったら、たぶん…..嬉しいと思 う。」
蓮翔の顔が熱くなった。
璃蓮はそのまま立ち上がって、振り返ってニコッと 笑った。
「… はよ帰らんと、晩ごはん怒られる〜! また明日 な、蓮翔!」
そして、何事もなかったように走っていった。
残された蓮翔は、胸を押さえながら、 「今の… マジで脈あるやつちゃうん…..?」とつぶや いた。
–こうして、蓮翔の恋は確かに動き出した。