俺が目を覚ましたのは、誰にも見向きされず、朽ち果てた遺跡の中だった。
薄暗い空気の中、埃っぽい匂いが鼻をつく。
外の光は壁の隙間からかすかに差し込んでいるだけで、まるで世界から切り離された空間にいるみたいだった。
「こんな場所に……よくもまあ、3000万年も閉じ込めたもんだな」
俺は独り言を呟く。
声が響いて、寂しさが胸に広がった。
遺跡の壁を伝う古代文字が微かに光を反射している。
そこに刻まれた意味はもう誰にも読めないのだろう。
俺はゆっくりと立ち上がった。
体の動きはぎこちなく、まだ眠りから完全には覚めきっていない感じがあった。
外に出ようと遺跡の入り口へ向かうと、遠くから声が聞こえた。
「ねえ、こっちだよー!」
明るくて、元気な声だ。
俺は思わず振り返る。
一人の少女が駆けてきた。
年の頃は十代後半、明るい笑顔で無邪気な雰囲気をまとっている。
「え……っと、ここは……?」
俺は戸惑いながら声をかけた。
「ここ?ここは遺跡だよ!みんなはもう来ないけど、私は来るの!」
「なぜ、そんなところに?」
少女は首をかしげた。
「だって面白そうじゃん!誰もいないし、秘密基地みたいでさ!」
俺は少しだけ笑った。
こんな無邪気な存在がいるなんて、久しぶりだった。
「俺は……さっきまで長く眠っていたんだ」
「えっ!?すごいね!どんな夢見てたの?」
「夢なんて……ほとんど覚えていない」
でも、心の奥で何かが動き出すのを感じた。
彼女の明るさが、俺の閉ざされた感情を少しずつ溶かしていくような気がした。
「俺の名前は夢希。お前は?」
「私はリナ。よろしくね、夢希くん!」
こうして、俺の新しい旅が始まった。
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