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#学園
大正
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裏五条
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バニング・ミンガイルの全身から煌気がほとばしる。
これまでも極めて高出力の煌気を纏っていたが、勢いはその比ではない。
六駆の目から見ればもはや異常値であり、それは明らかに生命を燃やしていた。
「バニングさん。こんな事を言うのは無粋だって怒られるのは分かってますけど、一応スキル使いとして忠告だけは。そんなむちゃくちゃな事したら煌気供給器官がぶっ壊れますよ。と言うか、命そのものが危ういです」
「ふっ。無茶は承知の上に決まっている。こうでもしなければ、お前とは対等の勝負にすらならんからな。雨宮と言ったか、お前の上官は。あの者は良いアイデアをくれた」
バニングのやっている事は、雨宮順平上級監察官が数時間前に誰あろう、そのバニングを相手に土壇場で生み出した極大スキル。
『紫ってなんかセクシーな紫』の模倣であった。
この頭の悪い名前にそぐわない極大スキルは、煌気を過再生することで強制的な活性化を促し、一時的に身体能力、煌気出力を数倍以上に高めるものであり、相当なチートスキルだがその代償も大きい。
再生スキルのプロフェッショナルである雨宮ですら、その使用の負担によって未だ煌気を満足に回復させる事ができていないのだ。
バニングに再生スキルは使えない。
それどころか、治癒スキルの類もほとんど使えない。
それでも雨宮と同じように極大スキルを発現させている。
代償は大きいどころでは済まない。
「……私は元々、煌気総量が少ない人間だった。修行で煌気のコントロールは鍛えられたし、肉体に煌気を纏わせる術も……手前みそだが人並み以上のものを身に付けた」
バニングは大粒の汗を流しながら、説明を続ける。
これは明らかな時間稼ぎ。
だが、これまでバニング自身が猛者を相手に敬意をもって対応してきたように、逆神六駆も狙いを看破した上で攻撃は仕掛けない。
「しかし、煌気総量と言うものは生まれたもった才能によるところが大きい……。だから私は……。煌気の循環速度そのもののスピードを引き上げることにした……」
「そういうからくりでしたか。体の中に身体強化スキルの要領でスキル使ってるんですね? でも、それって煌気を煌気で強化してるようなものですから、下手したら、いや多分ですけど。死んじゃいますよ?」
バニングは「ふっ」と笑う。
準備が整ったようだった。
「これまで……使用を想定した煌気構築術式だけは何度と鍛錬を繰り返してきたが……! 実際に使うとやはり堪えるな……!! 名前も今付けた! うおぉぉ!! 『アクセラレーション』!!」
バニングの煌気はほとんど暴走状態へ。
だが、その出力は凄まじい。文字通り、命を削って得た超パワーであった。
「これはすごい! 正直、僕の煌気出力超えてますよ!!」
「ふっ。世辞を言うとは、まったく憎らしい若者だ。それは、『今のお前の』と注釈が付くだろう? さあ、早く本気を出せ。こちらは、長くは続かんからな」
六駆も静かに頷いて、気合を込めた。
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅんっ!!! 『煌気爆発・四重』!!!」
六駆の煌気爆発の効果はバニング、および雨宮と似ている。
が、彼の場合は『瞬動』などに代表される強化属性の逆神流の応用であり、防御や周囲に展開している基礎バリアなどの煌気を全て肉体の中で活性化させたもの。
同じ活性化でも負うリスクが違いすぎる。
「ここに至れば、もはや是非もなし。私の攻撃に応じてくれるか! 逆神六駆!!」
「良いでしょう! 僕も戦士の魂くらいは分かります!! ……けんしょうき、いえ!! あなたの矜持を奪わせてもらいますよ!! ふぅぅぅぅぅんっ!!」
土壇場で懸賞金よりも戦士としてのプライドが勝った六駆くん。
快挙である。
バニングは短く「感謝する」と答えると、左手に『魔斧』を具現化し、右の拳に残った煌気を全て集中させた。
六駆は両手を組む。
「ぬぅおぉぉあぁ!!」と大地を揺るがす雄叫びと共に、バニングが戦場を駆ける。
彼にとって、最後の一撃であった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
六駆は組んだ両手から竜の咆哮の構え。
「やっぱり最高の力で応じなければですよ!!」と、最も得意とするスキルを選ぶ。
「なるほどな……!! それに耐えれば、私の勝ちか!! シンプルで良い!!」
「本気で行きますよ!! ふぅぅぅぅぅぅぅぅんっ!!! 『蓋世・大竜砲』!!!」
『煌気爆発』で最大強化された『大竜砲』の上位版。
その威力は既に凶悪と評しても良いレベルに達しており、バニングの体を竜の咆哮が覆うと、まず先に後方の山が爆ぜた。
だが、バニング・ミンガイルは長くアトミルカの中核を担い続け、アリナ・クロイツェルに尽くしてきた男。
その得難き時間を否定させる事は、どんな猛者にも許さない。
「ぬぅおおぉぉぉぉぁぁっ!! 『ブリッツシュラーク』!!!」
『煌気爆発魔斧《ベルテ》』で繰り出すのは落雷の一撃。
真横に轟く稲妻は、六駆の『煌気爆発大竜砲《ドラグーン》』を切り裂いた。
「おわっ!! これは!! 計算外ですね!!」
「私は……!! 戦う事でしか!! あの方に寄りそう事がもう!! できないのだ!! ぐぅあぁぁぁぁぁ!! 『灰燼の拳』!!!」
全身全霊を込めたバニングの拳が六駆に迫る。
この時ばかりは最強の男も真剣な表情になり、熱気を宿しながらも冷静な瞳が勝ちへの道筋を探し当てた。
「ふぅぅぅんっ!!! 『大竜砲』!! もう一発!! 『大竜砲』!!! ぐぅぅぅっ!! これはさすがにキツい!! 合わせてぇ!! ふぅぅぅぅぅぅぅぅんっ!!! 『大双竜砲』!!!」
フルパワーで再度放たれる2発の竜の咆哮がバニングを逆撃した。
1発目で彼の渾身の拳を相殺し、残った竜には2匹目の竜が喰らいつく。
六駆も身を削った極大スキルの重ね技。
最強の男をここまで追いつめた事実は、バニングの心の隙間を少しだけ埋めた。
「……ふっ。……見事」
「おっと! あなたこそ! 僕が今まで戦った人の中で、間違いなく1番強かったですよ!!」
逆神六駆とバニング・ミンガイルの決戦。
勝者はやはり、逆神六駆。
だが、逆神六駆の目はかつてないほど澄んでおり、どうやら懸賞金の事をすっかり忘れている様子。
あの六駆から金銭欲を奪った事実は、誰に誇っても憚る事なき勲章である。
◆◇◆◇◆◇◆◇
六駆は意識を失ったバニングを地面に寝かせた。
まず、触診で。続いて『観察眼』で、彼の容態を見る。
「久坂さん!! ちょっとお願いできますか!!」
固唾をのんで血戦を見守っていた老兵は「よしきた!」とすぐに駆けつける。
六駆は久坂に簡単な頼みごとをした。
「すみませんが、煌気力場を構築してもらえます?」
「おお。そりゃあ構わんが。どがいするんじゃ? この男、ワシの目から見る限りじゃと命すら危ういように見えるがのぉ?」
「そうなんですよ。僕ね、しょーもない崇高な使命とか言って、異世界の戦争ツアーしてましたけど、ひとつだけ自慢があるんです! 人を殺した事ってないんですよね! あっ! 尊敬できる人ってことですよ? さっきのじいさんみたいな人っぽい何かはノーカウント!!」
ハーパー理事、既に六駆くんの中でご逝去していた。
なお、まだしぶとく生きております。
「六駆の、お主まさか。いやいや! 気持ちは分かるけどのぉ! まだ敵さんの大将が残っちょるで!? さすがにワシじゃあ相手にならんわい!!」
「大丈夫ですよ! 僕の彼女、結構強いって知ってます?」
そう言って、六駆は莉子を見るとウインクした。
その絶妙にダサいおっさん臭漂う行為は、莉子さんの控えめな胸を弾ませる。
莉子さんの胸を弾ませるとか、これはもう事件である。
「あとの戦いは莉子に任せます!! 僕は人命救助!! ふぅぅぅぅんっ!! 『時間超越陣』!!!」
「おおおっ! なんちゅう煌気じゃ!! こりゃあ、ワシも全力出さんと邪魔するだけじゃのぉ! 55の!! サーベイランスの操作、任せたで!!」
逆神六駆に死なせたくないと思わせた男、バニング・ミンガイル。
ならば、救って見せなければ。それができずして何が最強か。
六駆の極大スキル連発はまだ続く。
コメント
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うわっ、494話でこの熱量はヤバいっすね…!バニングさん、まさか雨宮さんのスキルを模倣して自分を犠牲にするとは。命削って「アクセラレーション」とか、漢すぎて泣けるわ。六駆もそれに応えて全力の「大双竜砲」でぶつかる展開、最高でした。そして何より「人を♡♡♡たことない」って宣言して、バニングを救おうとする六駆の姿勢にグッときた。莉子にウインクするところも含めて、キャラの魅力が爆発してる回でしたね🔥