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オリアナが王都の門をくぐったのは、灰色の雲が空を覆う午後だった。
石畳に響く馬車の車輪の音、衛兵たちの突き刺さるような鋭い視線、そして__王子。
「ようこそ、シルビィ嬢。君のような“光”に会える日を、私は長く待っていたよ。」
第一王子「リオネル・カスティリオ」深い夜のような漆黒の髪に、陽光を閉じ込めたような琥珀色の瞳。澄んだ声、完璧な礼儀作法と穏やかな微笑み。彼の微笑みは陽だまりのようで民からは「太陽の王子」と呼ばれていた。「美しい」とは彼の為に作られた言葉のように思えた。
「ご機嫌麗しゅう。お初にお目にかかります。お、オリアナ・シルビィと申します…。」
けれどその笑みの奥にオリアナはふと、冷たい空気のようなものを感じた。艶やかで整った前髪は、どこか儚げでこころの奥底にある「冷たい闇」を物語っているようだった。
そして、その夜。
侍女から彼のある“噂”を耳にする_。
「王子様ったら、日に日に身体の体温が下がっていくんですって……氷みたいに冷たくなっていくんだって…」
「でも、どんな魔法使いも神官も治せないらしいの……」
「まあ……お可哀想なこと……太陽のようにお優しい方なのにね…。 」
まるで_
“心が、凍っていくような病“
そして迎えた最初の晩餐。オリアナは王子の向かいに座らされ、周囲の注目の中で微笑み続ける。
「ごめんね。シルビィ嬢と2人で話したいんだ。少し席を外してもらえるかな。」
「君の瞳、本当に綺麗だ。まるで伝説の聖女そのものだね。」
「い、いえそんな…身に余るお言葉です。昔は皆に醜いと嫌われたものですから……」
王子は少し微笑んで言った。
「……君なら、僕を“解ける”かもしれない。そう思うんだよ」
その時だけ、彼の笑みがほんの一瞬だけ“崩れた”。
それはまるで、「誰にも見せてはいけない何か」を閉じ込めているかのようだった。