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レイブ達は休む事無く働き続け、学院の備蓄は潤沢になり、そろそろ一年が過ぎ様としていた頃、ズィナミが一つの提案をした。
『レイブ達と学院生の模擬戦をやりましょう』
そんな気楽な言葉が切欠(きっかけ)だった筈だ。
当時、発足から程無かった学院では、これまでとは全く違った環境で学び始めた生徒達のやる気、所謂(いわゆる)モチベを維持する為に試行錯誤を繰り返している最中であった。
具体的に言えば、お弁当を持って少し離れた場所まで皆で赴く遠足だったり、夜間、宿舎ではなく校舎に泊り込んで皆で食事を楽しむお泊り会であったり、大きな焚き火を焚いてキャンプファイヤー的なイベントを催したりして一緒に楽しく会食してみたりだとか、である。
まあ、食べ物が味も素っ気も無い硬い堅い固い、その上噛み難(がた)い干し肉と干し野菜、後は水、そんなシンプルの極みでなければ、生徒たちはもう少し笑顔を浮かべたかもしれないが……
日々を数える毎に陰鬱になる生徒たちの表情に耐え切れなくなったズィナミは、コロシアム的なイベントを考えるに至ったのだ、件の『模擬戦』発言である。
流石はバストロの同門だ、彼女もやはり脳筋であったらしい。
とは言え、日々黙々と働き続けている十一歳のレイブの姿を見ていた生徒たち、とりわけ優等生たちはこの提案を好ましく捉えた向きが多かったようだ。
曰く、
「ええっ? レイブ君ってあのレイブ君だよね? 彼って、そのぉ、闘えるの? かな?」(女子)
「ねぇ~、そんなタイプに見えないよねぇ、ちょっと可愛いタイプだしぃ~」(女子)
「あいつ…… 強そうだよな? あんなに多くの荷を背負ってぇ、普通に凄くね?」(男子)
だとか、
「あいつが? 授業も受けていないんだし雑魚だろ雑魚」(男子)
「だな、俺たちの相手にゃならねーよー」(男子)
「でもあれだろ? 『北の魔術師』、最強のバストロ最後の弟子らしいぜ、あいつ! 本当に強いのかもよ?」(男子)
「ふふふ、俺の前に立ちふさがる者に例外は無い、誰であろうとその身を紅蓮の炎に燃やし尽くされ消え去るのみっ! 地獄で後悔すれば良いわっ! くふふふ」(痛男子)
挙句の果てには、
「なに? あの子に勝ったらアタシの自由にしても良いのぉ♪ 燃えるじゃないのぉ! うふふ、バキバキにしてあげちゃいたいわぁ! んんもぉ~っ、殺したいっ!」(純男子)
「「「アタシもぉ~♪」」」(一層男子)
「掘ろうずっ!」(超男子)
「「「「「「応っ! 犯(や)って犯(や)ろうぜえっ!」」」」」」(スーパー超男子ゴッド)
と言った声が学院中に溢れかえったのである。
いつに無く盛り上がり捲った学院の模擬戦でレイブ、ギレスラ、ペトラのスリーマンセルは何気ない感じで勝ち続けた、そりゃもう普通の感じで。
ギレスラが並み居る竜種達を軽くいなし、ペトラの突進が巨大な獣奴達を全て吹き飛ばした後、粗末な服に身を包んだレイブは、勝ち残った男子、いいや純男子を組み伏せながら言った。
「もう動かないでね、次は本気でやらなくちゃいけなくなるからさっ」
純男子は答えた。
「んんんんぅ~アタシの負けよぉ、素敵ぃ! 敗者は勝者の思うがままに蹂躙されるのが常よね、受け入れるわよぉ、も、もう、どうとでもしてぇぇっ!」
「い、いや、どうともしたくは無いんだけどねぇ…………」
こうして、第一回、魔術師修練所、俗称バストロ学院の記念すべき模擬戦は終りを告げた、筈であった。
観覧席の中央でむずむずして居っ放しだった彼女が見るからにムキーッとなりながら例の倒錯を声高に叫んでしまう前までは……
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