しょう来のゆめは、い者になることです。
ずっとそうだった。
理由なんて聞かれても、そんなものはない。
強いていうなら、
親に期待されている……から…?
🍌「ッッ!…はぁ……」
今日もまたこんな夢。
将来に悩む夢。
自分の気持ちがわからなくなる夢。
ぐるぐると色々な考えが巡って気分が悪い。
もうこんな夢の事なんか考えないようにしよう。
いつも通り支度をして家を出る。
学校に着いたら自分の教室に向かい、誰もいない部屋で勉強する。
私立の中学には受験に失敗して行けず、僕が今通うのは当たり障りも無い学校。
高校の受験は必ず第一志望に受かりたいから、中学受験が終わった直後から高校受験の勉強をし始めた。
いや、させられた…?
ううん!そんな事…ないよ。
なに考えてんだ。
今は勉強に集中しないと。
えっと、確かここは…
『ねえねえ。』
この公式で…
『おーい?』
よし、もう少し、
『わっ!』
白い手が視界を遮る。
「もう!さっきから……ッ!」
『やっほ!』
「あ、雪流(せつる)くん…」
クラスメイトの男子の一人、雪流おらふくん。
こんな早い時間に学校に来てどうしたんだ?
『ごめんなぁ。勉強の邪魔して』
「いや、別にいいですけど…なんですか?」
『このハンカチ!』
「あ…」
彼の手には黄色のハンカチ。僕のだ。
『小さく「おんりー」って刺繍されてたから、もしかしてって思って!』
「ありがとう…ございます。」
『なぁなぁ。こんな時間から学校来て勉強してるん?偉いわぁ』
「まぁ、はい。」
別に普段そんなに仲良くしてないのに、なんでこんなに話しかけてくるんだ?
早く勉強したいんだけど…
『勉強頑張ってるって事は、将来の夢とかってあるん?』
雪流さんは僕に質問を吹っかけてくる。
将来の夢…
「…医者。医者になりたいです。」
『医者かぁ!ええなぁ。おんりーに似合うなぁ。』
いきなり名前呼び…しかも呼び捨て…
「あの…」
『あ!敬語じゃなくてええからね〜 』
『僕の名前は雪流おらふ!』
知ってる…
『おらふって呼んでや〜』
「おらふ…………くん」
ちょっと抵抗があったからくん付けで呼んだ。
「逆に、おらふくんは将来の夢あるの…?」
『僕?僕はね〜』
そう問いかけるとおらふくんは自慢げな笑顔で、
『YouTuberになること!!YouTuberになって、皆を楽しませること!』
そう言ったんだ。
かっこいい。
僕はなぜかそう思った。
なぜそう思ったのか少し考えたら
答えはすぐにわかった。
彼は、彼が思うように生きているから。
それに対して僕は親の敷いたレールの上を生きてきて、
ずっと自分で夢、わくわくを抱いた事が無かった。
親に言われて見てこなかった動画アプリ、「YouTube」。
そこで活動する人、「YouTuber」。
彼は“それ”になりたいと言っている。
“それ”が何かはよくわからない。
けど、僕は“それ”になりたいと強く思った。
いや、
“それ”になりたい訳じゃない。
おらふくんみたいになりたいんだ。
「僕もッ………YouTuberになる…! 」
『えええ⁉お医者さんは⁉』
「ううん、気が変わった。僕はおらふくんと一緒に“自分の夢”を追いたい。」
『そっかぁ…wじゃあ一緒に頑張ろーっ!えいえいおー!』
「ふふwおーっ!」
ありがとう。おらふくん。
急に僕の目の前に現れた君のお陰で、僕の世界はこんなにも広がったんだ!
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将来の夢か…夢…夢…何になろっかなぁ