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速いな。あの赤い悪魔、ゼパルと同じかそれ以上に速い。こっちの人間でもこんな速度を出せるものなのか。


「凄いな。やっぱり、一級くらい強いんじゃないか?」


「そうでなければ、この役は務まらんでござる。国の管理下にない個人を止める戦力を国が持っていないというのは危険でござろう?」


忍刀を弾いた筈が、その刀はもう片方の手に移っており、そのまま忍者は刀を斬り上げる。ギリギリで刃を回避し、お返しの蹴りを入れるが、歪曲の術で俺の足は歪んだ空間に囚われた。


「まぁ、そうだな。俺は異界に入れる奴はもっと選定すべきだと思うんだがな。異界なんていう危険な空間に十八から入れるなんて、おかしい話じゃないか?」


「慎重になるには異界は魅力的過ぎたんでござるよ。あそこから得られる利益を前に足踏みなんてしている暇は無かったんでござろう。そうしている間に、他の国はどんどんと開拓を進めて行くんでござるからな」


歪んだ空間から足を引っ張り出したところで、忍刀が俺の肩辺りに迫る。それを回避し、そのまま腕を掴んだが、するりと忍者の腕は俺の手を抜けて行った。


「……これ、口寄せも使えんでござるか」


「転移系統は粗方防げる。身代わりを無効化する為に、置換も出来なくしてある」


とはいえ、この結界はフィールド効果のようなものだ。俺自身もその効果が適用されてしまう。尤も、門にして鍵《アウターロード》や私用空間《プライベートスペース》のような転移ではなく空間の接続が原理である魔術は使えるようにしているが。


「さぁ、行くぞ」


偶には、本気で切り結ぼう。


「ッ!」


一瞬で忍者の懐まで距離を詰め、剣を振り上げる。忍者はそれを潜るように回避し、忍刀を突き出してきたが、俺は身を引きながらその刃を掴み止めた。


「ござァッ!?」


「割れないか」


力を加えても刀は割れない。よっぽどの特別製なのだろう。


「捨てるか」


「致し方なしでござるッ!」


かなりの業物に見える刀を即座に放棄し、既に懐に潜っていた忍者はそのまま拳を突き出してきた。


「なッ!?」


俺は拳の触れる場所に魔力を集中させ、限定的に強化した。拳はポスッと音を立てて俺の腹に受け止められた。


「終わりだな」


俺は忍刀で忍者の左腕を、剣で右腕を斬り落とした。


「安心しろ。このくらいなら後で治してや、る……ッ!?」


忍者の体から歪に魔力が、呪力が、溢れる。


「切り札を見せるでござるよ」


「アンタ、どういうつもりだ」


これは自爆だ。間違いなく、そうだ。意味が分からない。ここで死んでまで俺を仕留めようとする意味があるのか? いや、そもそも自分で殺せないと予想している以上、俺を殺すのが狙いな訳が無い。


「ッ、爆発す――――」


考えが纏まるよりも早く、忍者の体が爆発した。


「……何なんだ」


障壁を展開して身を守れはしたが、ここで自爆した意味は分からないままだった。


「いや、これは……」


魔力や闘気、エネルギーの渦に囲まれた俺は、その外側から迫る幾つもの強い気配に気付いた。既に、囲まれている。


「「「さっきぶりでござるな」」」


爆煙の外側から現れたのは同じ装いの忍者達。同時に忍刀を持って襲い掛かる八体の忍者だ。この至近距離であれば本体か偽物かの判別は付く、が。


「……どういうことだ?」


全員が、本体だ。


「流石に驚いてくれたでござるか?」

「切り札でござるからなぁ」

「しかし、げに硬い障壁でござるな」


似ているだけで別の忍者か? いや、有り得ないな。気配も魔力も闘気も、完全に同じだ。


「さっき見た分身とは随分違うようだが」


ゴリゴリと削られていく障壁を維持しながら、俺は呟いた。


「さっきまでの分身は、分身の術でござるよ」


「そして、この分身は……異能による分身でござる」


八本の魔呪霊氣刀によって、遂に障壁が破壊された。


「全員が本体と同じ性能を持つ分身、とっておきの必殺技にござるよ」


刃が迫る。腕を、足を、斬り落とさんと迫る。八本の刃だ。


「そうか」


刃が触れる寸前、俺の体内に刻まれた魔術が、刻印が……一斉に起動した。



「――――戦闘術式、展開」



幾重にも重なる障壁、背理の城塞《ゼノン・アルチス》が展開されて忍者たちの刀を防いだ。回生障壁《ファーストウォール》は超えたようだが、検知障壁《セカンドウォール》を超えた先の停留障壁《サードウォール》によって止められた。


「ッ!? 動かんでござァッ!?」


攻撃を停留させ、エネルギーを回収する停留障壁《サードウォール》に囚われた八本の忍刀。流石に焦ったようだが、歪曲の術を利用して忍刀は回収された。


「確かにこれまで身体強化の類いは使ってないように見えたでござるが……それは反則でござろうよ」


「分身の異能なんてものを使ってる奴が良く言えたな」


しかし、流石は国直属の精鋭なだけはあるな。


「その分身、七体まで出せるのか? いや、さっき死んだ奴も含めれば八体か」


「然り。拙者の異能は高性能でござるゆえ、修行の末に八体まで出せるようになったでござる」


異能か。向こうの世界でも無かったものだからな。どれだけ確かめても原理が分からない。いや、寧ろ原理自体が存在しない力なのかも知れないが。


「アンタが九体か……一級くらいには強いって言ったが、それ以上かも知れないな」


一級相当に強い奴が八体か。一番渡っちゃいけない類いの奴に分身の異能が渡ったらしいな。

異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。

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