のあさんと相談の結果、シヴァさんだけに贈る小さなホールケーキを作ることに決まった。
…もちろん、るなが全部ひとりでつくるの。
大阪にいる時に考えていて、スポンジを焼く練習はしていたのだけれど。
うまーくいく時もあれば、へたーな時もあってなかなか安定しない。
なので明日の本番前に、のあさんと練習することにした。
「お夕飯は何がいいかなぁ、るなさんシヴァさんの食べたそうなものなは何かわかりますか?」
「麻婆豆腐好きですよね、からぁーいやつ」
「んじゃもうらそれでいーかなぁ」
るなさんが案を出してくれたって言えばしばおも納得するよね。
のあさんはぶつぶつ言いながら当日いるものをリストからしていた。
ちなみにじゃぱぱさんのリクエストは蟹しゃぶなんだって。お鍋出しておかなきゃということで、明日のパーティのお手伝いも。
のあさんと倉庫からお鍋を持ってリビングに帰る途中、どこかへお出かけするなおきりさんとうりりんに会った。
「あれ?お出かけですか?」
「そーなんだよしゔ…んぐぐぐぐ」
「ちょっとうりりんをお日様にあててくるから」
「すっごい大事なことですね、お願いします」
何かを言おうとしたうりりんの口をなおきりさんが綺麗に塞いだ。
力強くないのかな?うりりんモゴモゴしてるけど大丈夫??
それにしても”お日様にあてる”だって。うりりんはお外でるよりお家にいたい派だから、なおきりさんとお散歩でもするのかな。
「るなさんはなにしてるの?」
「のあさんのお手伝いと、サプライズの準備です」
「サプライズ?」
やっと手を離してもらったうりりんが興味深げに聞いてきたので
先ほどのあさんと考えたサプライズ内容を伝えた。
「シヴァさんに手作りのケーキを作ろうと思ってて…」
「あ、それシヴァさん泣くやつだわ」
「泣く!?なんで!?」
「シヴァさん、るなさんの手作りケーキ抱えて食べるよ、きっとね」
「うわぁー想像つく」
シヴァさん泣いちゃうの??るなには想像つかないんだけど…
でもなんだか説得力があって本当にそうなりそう。シヴァさんと仲がいいふたりが言うからかな。
でもケーキは自信があんまりない。味だって形だってお店の方がいいに決まってる。
と愚痴をこぼしたらうりりんが首を横に振った。
「いやぁ、オレもなおきりさんとおんなじ意見。るなのケーキしか食べねぇな。え?予約してるおっきなケーキ??…るなが”あーん”って言ったら絶対食べるんじゃないの?」
「そ、そんなの無理だよ!」
「うりさんっ」
まったくもう、それくらいにしてください。のあさんがうりりんからのひやかしを止めてくれたおかげで、るなは真っ赤っかにならずに済んだ。
“あーん”なんてできないよ、第一シヴァさんは恥ずかしがりやさんだ。
「うーん、恥ずかしいけど内心嬉しすぎてるシヴァさんしか目に浮かばないや」
「だろぉ?」
「もー、さっさとうりさんをお日様にあててきてください」
のあさんがすごい力でうりりんとなおきりさんの背中を押した。
“じゃあ、頑張ってね”なんて、なおきりさんから応援されてしまう。
「るなのしか食べないのかなぁ、ほんとかなぁ??…失敗しちゃったらどうしよう…」
「失敗しないように、今から特訓しようね」
「!はいっ」
のあさんに笑顔で言われてハッとする。
そっか不安がってる場合じゃないや!だって初めてのクリスマスとお誕生日だもん!
部屋着が欲しいシヴァさんに似合いそうなのも、ちゃんと買ってきたし!
当日は大成功にしなきゃ
「うっ、いたた」
「るなさん大丈夫?」
「なんでもないよ、へーきです!」
気合いを入れた途端に頭痛が襲う。いやだなぁ、こんな日に限って頭が痛くなるなんて。
あとでまたお薬飲んでおかなくちゃ。
頭が痛くなってる場合じゃないの、だって大成功させたいから。
のあさんと特訓して作ったスポンジケーキはうまく焼けた。生クリームも綺麗に泡だったし、インスタ見ながらいちごも綺麗にのっけたの。
この日のためにインスタにTikTokにXを未漁って簡単でかわいいショートケーキを探した。
お目当てを保存して、見よう見まねで作ったけど…うまくない??
…本当はもっと凝ったケーキを作れたらよかったんだけど、るなにはその技術はない。
今日のお夕飯は豪華にウーバー。
…ウェンディーズにしてみました!もうコラボは終わっちゃったけどね。るな食べ損ねちゃったから、雰囲気だけでもってことで。
「るなケーキ上手じゃぁん!」
「えへー」
「んさむひゃあうむま」
「のあさんなんて??」
ケーキを食べながらポテトをつまむえとちゃんに、ほっぺが膨らんだのあさんが何か言っていた。誰も聞き取れなかった。
「私が手伝わなくてもほぼひとりで作ったよね?るなさんうまいよー上手ー」
「えへーえへへーほんと?」
「るなえらーい!」
隣に座るえとちゃんがよしよししてくれた。
たくさん褒めてもらえてるなは嬉しい!
「しばおこれ抱えて食べるな」
「えー?そかなぁ??それなおきりさんもうりりんも言ってたよ…?」
「るなが作ったらたとえ米粒でも抱えて食べるでしょ」
「んで私たちには一口もくれないですよね」
「そーそー、ちょーだいよーって言ったら、”えぇ〜やだよぉ、俺のだもん”とかなんとか言うわ」
えとちゃんシヴァさんの真似が上手なんだけど。そこ指摘したらちょっとヤダななんて笑い出した。
「シヴァさんさ、うちらと三人でよく飲んでたのにパタっとこなくなったの」
「…え?」
「ね、禁酒でもしたの?って聞いたら”そうじゃないけど…ま、嫌だなって思うことはしたくないんだ”って」
…あ、るなだ。この間るながヤキモチやいたからだ。
「まぁ私らはね、別にいいけどシヴァさんがそこまで徹底するタイプだと思わなくて」
「ごめんねるなさん。あんまり考えずに誘っちゃった…彼氏だものね。」
のあさんに謝られて首を振った。そんな、いいのに…と思う裏腹、実際にヤキモチを妬いてしまったのだ。またあのモヤモヤが復活するかもしれないと思うと、大丈夫です!とおっきな声で言えなかった。
「い、いいの。るなはちゃんとわかってます!…でも、やっぱりたまにモヤモヤしちゃう時もあって。二人のことが嫌とかではないんだよ!?」
そこだけははっきり否定した。だってシヴァさんとおんなじくらい、大好きなふたりだもん。
オロオロしてるとのあさんに大丈夫だからと背中をぽんぽんされた。
「好きなら当たり前のことなんだよ。悪いことじゃないの。ヤキモチをむやみに消そうとしないでね、辛くなっちゃうから」
「そうそう、吐き出せ吐き出せ!」
いぇい!ってえとちゃんがいつのまにかほろよいを天高らかに上げていた。あら、お酒タイムだ。
「シヴァさんなんて嫉妬しまくりでしょ」
「しまくりではないと思うけど…あ、寝る時なおきりさんの配信聴いて寝るって言ったらちょっとやだったみたい」
るな、なおきりさんの配信聴くの?と聞かれて、アーカイブ残ってるからと答えたら二人とも納得した。
「俺の声を聞け!てきな?」
「だからね、寝る時は電話するんだよ。電話してって言われたから…」
「わぁ、ごちそうさまです♡」
「のあさんもうお腹いっぱいなの?」
「るな、ちがうちがう」
お腹いっぱいのごちそうさまじゃないんだって、るなとシヴァさんのお話が甘すぎて胸がいっぱいってこと…みたい。
そんなつもりじゃなかったんだけどな。
「ねぇねぇ、るな…一つ聞きたいなー…ちゅーとかした??」
「えとさんそれ聞いちゃうの?…でも私も聞きたい」
「えぇっ、ちゅー!?」
まさか聞かれるとは思わなかった。えとちゃんもシラフなら聞いてこないだろう。のあさんちゃっかり便乗してくるしえとちゃんは…お酒飲んじゃったからかな?ぐいぐい聞いてくる。
あの、あの…うまく伝えられなくてもじもじしてたら、察したふたりが”ぴゃー!!”って叫び出した。
「るななにも言ってないよ!?」
「もーわかるわかる、大丈夫」
「のあさんそーゆーの大好きー…よかったね」
「その、した…はしたんだけどね…
キスってとっても特別なんだね…」
思い出したらどきどきしてきた。
一回したらまた、もう一度したくなっちゃうあの感情。溢れ出てくる気持ちに蓋ができなくて、溺れていくようなあの感覚。
ふわふわして、よくわからなくなるの。
だめだ、思い出すと危険なやつだ。
赤くなって居た堪れなくて顔を伏せた。
「…?のあさん?えとちゃん?」
ふたりがふるふる震えてると思いきや、次にさっきよりも何倍もの”きゃー!!”が部屋中に響き渡った。
「うーわ!すごいの聞いちゃった!」
「やだーもうーごちそうさまです…」
あれ、るな変なこと言っちゃったかな。
二人の騒ぎっぷりが半端ない。
「るなさん、愛されてるんですね」
「だねー、相当大事にしてんなぁ…しばお頑張ったな」
「ね」
「えっ、えっ、なにが??」
るなだけ会話についていけずうろたえる。
確かに、シヴァさんにはとっても優しくしてもらってるけど…どうして今の話でわかったのかなぁ。
でも、そろそろるなの話じゃなくて二人の話が聞きたい!
身を乗り出してそう言おうとした時---
スマホが鳴った。シヴァさんだ。
お部屋の時計に目をやると、あ、いつも電話する時間。
シヴァさんはるながシェアハウスにいることを知らないから、いつもの時間にかけてきてくれたんだ。
「どしたの?」
「どうしよう、シヴァさんから電話が…いつもこの時間に電話するから」
「ここでお話ししたらばれちゃいますもんね。るなさんが使うゲストルームも他の人の声が入るかもだし。…そうだ編集部屋は?」
編集部屋はシェアハウスの二階にあって、今は誰も作業していないらしい。編集部屋を管理してるのあさんから鍵を預かった。
電話が切れてしまったので急いでLINEする。
“出れなくてごめんなさい”
“るなからかけます”
するとカエルさんが”OK”と言っているかわいいスタンプが送られてきた。よし。
「のあさんありがとう、ちょっと電話してきますね」
「るな、シェアハウスにいることバレないようにね」
「うん、がんばる…!」
「私たちのことはいいから、ゆっくりどうぞ」
バレないようにおしゃべりできるかな。スマホを胸に抱えて、急いで編集部屋へと向かった。
「すみません、ええとお友達とお喋りしてて」
『そうなんだ、無理にかけてこなくてもよかったのに』
「そ、そんなわけにはいきませんよ」
のあさんとえとちゃんには悪いけれど、シヴァさんのお電話を無下にはできない。
『もうクリスマスなんて早いね…』
「そ、そうですね」
『るなさんなんか隠してる?』
「えっな、なんで!?」
『なんかいつもよりソワソワしてない?』
なんでシヴァさん鋭いんだろう!実はシェアハウスにいて、明日内緒で渡すケーキの練習をしてました!とは、言えない。
明日のことをずっと考えているから、ソワソワしちゃうのかな。
「だって、明日はクリスマスですよ?そりゃ、ソワソワしちゃいます!」
『そっか、そうだよな』
スマホの向こうでシヴァさんが笑った。
窓の外を眺めた。郊外にあるシェアハウス、窓の向こうはお家の灯りだけが見えた。夜空は漆黒で、寒々しい。
「雪が降ったらすごいですね、ホワイトクリスマスにならないかなぁ」
『何日か前に初雪降ったよ』
「えっ?東京でですか?」
『そう、でもすぐみぞれになっちゃったけどなぁ』
「…降っちゃったんですか?残念だなぁ」
『…』
「でも東京、クリスマスに雪降ったことってないですよね…もしもし?」
声が聞こえてこなくて尋ねてみると、あぁごめん、と一言シヴァさんの低い声。
『や、明日やっと会えるのかって』
「みんなに?」
『るなさんにだよ』
「…へぁ」
びっくりして変な声でた。だってそんなこと初めて言ってくれて…あ、恥ずかしそうに笑ってる。るなもつられて照れて笑っちゃった。
嬉しいけれど、シヴァさんすいません。るなもう東京にいるんです…。
“ごめんなさい、実は今東京います!”そう伝えたい気持ちを頑張って抑えた。
やっぱりシェアハウスじゃなくてシヴァさんに会いにいったらよかったかなぁ。でもそしたら、内緒でケーキ作れないし。
『俺午前中にはシェアハウスにいるから。るなさんはお昼にシェアハウスに着くんだっけ』
「え?ああ、はい!そうですそうです!」
そうだそんな感じの予定だった!忘れていた当初伝えていた予定を思い出した。
『明日朝早いよな?もう寝る?』
「うん、うんもう寝ます!」
『のわりには、声元気だね』
「るなは電話切ったら三秒で寝れますから!」
『わはは、はぇーな』
いつもあくび連発して、シヴァさんが切ろうかって声かけてくれるんだ。いけない今日はベッドの上じゃなくて編集部屋だもの。
これ以上お話ししてたらボロが出ちゃう。
おやすみなさいを言って、バツのボタンをタップした。
「あ、あぶなぁ…よし、明日がんばろ!」
いっぱい寝て、気合い十分にしなくちゃね。
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「…なんか隠してんな」
るなさんの様子がおかしい。ソワソワしてると言うか、あれは何かを隠してるふうだ。…なんだろ。
「電話切るのも早かったし」
いつももう少し…と粘られてるなさんが寝落ちしておしまいなのだが、今日は自ら電話切った。
るるの気配もない。いつも部屋にいるのに。あとは聞きなれない機械音。るなさんつかうのiPadだろ?ハイスペのデスクトップの音がしたが??
シェアハウスの編集部屋に置いてあるやつみたいな。
「いろんなことがなんか違ったな…なんだ?なんか違う…」
え?気のせい?いや、俺耳いいほうだし勘もいいのよ。…悪いことじゃないよなぁ。
うわー気になる、早く会って確かめたい。
…別れます、とか言われたらどうしよ…
え、困る。しんど。いやいや、それはない。しっかりしろ俺…!!
「だぁあ気になる!」
奇しくも両思いになれた初めてのクリスマスと誕生日を前に、るなさんの行動が気になって仕方なかった。
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あけましておめでとうございます!!✨️今回も最高でした!! 久しぶりの🍪🍫❄組みれて大満足です(?)😢💕 これをみてると本当に🌈🍑みてるみたいな感じになるんですよねぇ……笑その中でもうちょっと尊いみたいな、、 今年ものななさんの作品楽しみにしています!!🎶
間違えて消してしまいました。 皆様あけましておめでとうございます。 今年も自分のペースで皆様に妄想をお届けいたします🙇♀️