ひび割れる音が、
空そのものから響いた。
アビーの空間――
歪められ、再現されていた世界が、
限界を迎える。
城壁が砕け、
塔が霧のようにほどけ、
偽りのハイラルは崩壊していった。
次の瞬間、
五人の足裏に伝わる感触が変わる。
土。
草。
湿った空気。
「……戻ったな」
タヴェルが周囲を見回す。
そこは、
元の禍々しい森だった。
だが、
安堵する暇はない。
前方、
邪の気配が二つ、
明確に存在している。
アビーとラナ。
二人の“邪”は、
互いを守るように並び立っていた。
「行くぞ」
リンクの声は、低く、落ち着いている。
もう、恐れはない。
「チップ、先手を頼む」
「う、うん……!」
チップが
カガヤキの実を放る。
光が弾け、
森の陰に潜んでいた
パペットが動揺する。
「今だ!」
エンゲルとバブルが同時に踏み込み、
古代の刃が閃く。
存在の根幹を断たれ、
パペットは音もなく消える。
「……連携、完璧だな」
タヴェルが弓を構えながら言う。
「次、右から来る!」
リンクが即座に指示。
ラナが、
認識反転の刃を振るう。
刃は確かに届く。
だが――
「効かないって言っただろ」
リンクは
正面から受け止め、
跳躍。
――バレットタイム。
時間が落ちる中、
獣神の弓が唸る。
矢は、
邪の動きを制限する位置へ
正確に撃ち込まれた。
「タヴェル!」
「了解!」
ハヤブサの弓がしなり、
古代兵装・矢が
アビーの空間干渉を
正確に貫く。
邪の形成が、
一瞬、乱れる。
その隙を、
リンクは逃さない。
だが――
アビーの邪が前に出た。
ラナの前へ、
庇うように。
「……守る、のか」
リンクが息を呑む。
アビーの能力が発動し、
空間が再び歪もうとする。
しかし――
完成する前だった。
リンクは踏み込み、
マスターソードを振り抜く。
長い刀身が描く軌道は、
一切の迷いがない。
退魔の光。
二つの邪を、同時に貫く。
衝撃は、
破壊ではなく――
解放だった。
アビーの邪が、
静かに崩れ始める。
ラナの邪も、
それに続く。
二人の輪郭が、
柔らかく揺れ、
光へと変わっていく。
「……ごめん」
微かな声。
誰のものかは、
もう分からない。
だが、
確かにそこに
人の心があった。
魂は、
森の空へ溶け、
風に散っていった。
静寂。
鳥の声が、
遠くで戻ってくる。
リンクは剣を下ろし、
目を閉じる。
「……終わった」
エンゲルが、
小さく息を吐く。
「これで……残り2箇所、か」
チップは、
胸の前で手を握りしめていた。
「……助けられた、のかな」
「少なくとも」
タヴェルが答える。
「縛られてたものは、 解けた」
リンクは、
崩れ行く森を見渡す。
もう、
歪みはない。
邪は消え、
世界は元に戻った。
「行こう」
リンクは言う。
「行くべきポイントが、
まだ残ってる」
五人は、
並んで歩き出した。
体育館の出口へ。
次の未来へ。






