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「だから、幸せな人ってのは美しく見えるんだって」
「じゃあやっぱあの人は幸せなのね」
「そりゃそうでしょ。彼女ができたんだから」
「もう私なにやってるのよ。ばかみたいじゃない」
「ほんとそうよ。あなたはバカよ」
「いや私だって、私がこんなに彼のことを思っていたなんてわかってなかったんだもん」
「あんだけ遊んどいてこの泣き方はないでしょ。あんたよりよっぽど可哀想よ彼」
「そんなこと言ったって〜」
涙が止まらない。勢い余って咳が続く。背中をユーイがさすってくれるが、私の心は落ち着かない。
先ほど私たちが話してた彼、雀くんに彼女ができたことを知ったのは昨日のことだ。学校で男子がなにやら雀くんをからかっており、耳をそばだてると「おいおい彼女持ち~」やらなんやらと聞こえた。え、まさか、と私は思ってクラスの女子に確認すると、雀くんは隣のクラスの女子と交際を始めたらしいのだ。雀くんが放課後告白し、その告白された女子も雀くんのことが好きで、両思いで告白成功した、らしい。
別にそれだけなら私が悲しむことも何もないのだが、私は実は、雀くんのことを好きになってしまっていたらしい。
私はモテた。様々な要素が男子に刺さりやすく、男には困らなかった。彼氏を作るのが簡単になってしまい、いつしか私はそれを娯楽として捉えるようになった。狙った男子をどれだけの期間で落とせるか、という遊びだ。そして、そのターゲットとなったのが雀くんだった、というわけだ。
私はほとんど話したこともない雀くんに近寄り、(といってもその時は席替えで隣になっていたのだが)たくさん声をかけた。体を寄せると頬を赤く染める雀くんはとても可愛らしかった。彼は優しかった。忘れ物を貸してくれたり、勉強を教えてくれたり、いつしか私は彼を落とすことを忘れ、純粋に彼と過ごす時間を楽しんでいたようだ。
そんなことが一ヶ月続いたあと、知ったのがさっきの「雀くんが付き合ってる」という話だ。当初私は、別にショックもなにも受けない、と思っていた。しかしなぜか、帰り道、目には涙がたまっていた。嘘でしょ、と思いながら私は目を赤く染めた。
「あんたのそんな顔をみられただけで私は満足だけどね」
「ひどい、ユーイひどい」
「さあさあ、学校行くよ。昨日泊めさせてあげたんだから、遅刻されたら困るって」
「わかったわかった。うー」
泣いて腫れた顔のまま準備をし、登校する。もう雀くんのことは忘れよう。まだ席は隣だけど、あまり接触しないようにしよう。雀くんと彼女の関係を壊すのは嫌だから。
学校に着く。教室に入る。いつものように、私の席の隣には雀くんが座っている。私も席へ行く。雀くんに軽く「おはよう」と言う。さすがに挨拶はしないといけない。なるべく目も合わしたくないけど。
するとおもむろに雀くんが立ち上がって、顔を見て言ってくる。
「大丈夫?目が赤いよ?目薬、さす?」
私はもう我慢できなかった。大声で泣き出した。ハンカチを差し伸べてくれる雀くんを見ながら、ただただ私の思いが流れていくのを感じていた。