テラーノベル
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兄弟対決から数日後の昼下がり。トオルは自宅のガレージで180SXを軽く整備している。ターボとウィングが加わった愛車を磨きながら、「VTEC兄弟、元気にしてるかな」と呟きながら手を動かす。ラジオから流れる音楽が静かなガレージに響き、穏やかな時間が流れる。トオルは「次はマコトだな…ケンジさんのパーツ、全部取り戻す」と決意を新たにし、ボンネットを拭く。
その時、遠くからけたたましいエンジン音が近づいてくる。トオルが顔を上げると、ガレージ前に赤いフェラーリF40が停まる。流線型のボディと低い車高が異様な存在感を放ち、トオルが「何!? フェラーリ!?」と驚く。車から降りてきたのは、落ち着いた雰囲気の50代くらいの男だ。グレーのジャケットを羽織り、サングラスを外しながらトオルに近づく。「君たちの走りを見てたよ」と一言。トオルは工具を手に持ったまま、「あなたは…?」と戸惑いながら尋ねる。
男は微笑み、「なあに、通りすがりの車好きのおじさんだよ」と軽く返す。トオルの180SXに目をやり、「整備してるその車、なんだか懐かしい雰囲気がするな」と呟く。トオルが「只者じゃないですよね? 昔、C1走ってたんですか?」と直感で聞くと、男は小さく笑い、「ふふ、そうだよ。君くらいの歳の時に毎晩走ってたんだ」と答える。トオルはピンと来て、「もしかして…緑の180SXについて知ってますか?」と切り出す。男の目が一瞬鋭くなり、「懐かしいな。やっぱりそうか。この180からはあいつの雰囲気が伝わるよ」と静かに言う。
トオルが「え、あいつって…?」と息を呑むと、男はガレージの壁に寄りかかり、遠くを見るように話し始める。「高木ケンジだよ。俺の時代じゃあいつが後輩で、C1を一緒に走ってた。あの緑の180SXは特別だった」。トオルが「じゃあ、あなたは…」と声を震わせると、男は穏やかに頷き、「松本タケシだ。当時はフルチューンのS30Zに乗ってて、C1の初代帝王って呼ばれてたよ」と衝撃の事実を明かす。トオルは「初代帝王!? 本当ですか!?」と目を丸くし、工具を落とす。
松本はF40のボンネットに手を置き、「あの頃は毎晩C1が戦場だった。俺のZとケンジの180SXでバトルして、後輩たちを引き連れて走りまくったよ。ケンジは俺を超える才能があった」と懐かしそうに語る。トオルが「この180SX、ケンジさんの車のパーツが入ってるんです。俺、帝王目指してて…」と興奮気味に言うと、松本は目を細め、「そうか。お前がその車を引き継いだなら、ケンジも喜ぶだろうな。雰囲気そっくりだ」と笑う。トオルは「松本さん、マコトのこと知ってますか? ケンジさんのパーツがR34に…」と聞くと、松本は「篠原マコトか。あいつも帝王の血を引いてる。ケンジのパーツがそこにあるなら、お前が取り戻すしかないな」と静かに激励。
松本はF40に乗り込み、「お前ならやれるよ、トオル。C1は今も生きてる」と言い残し、エンジンを唸らせて去る。トオルはフェラーリのテールランプを見送り、「初代帝王…松本タケシさんか。ケンジさんの先輩が俺を見ててくれたなんて」と感慨に浸る。180SXに触れ、「マコトとの戦い、絶対勝つ。初代も見てるんだ」と決意を新たにする。遠くのC1の音が、過去と未来を繋ぐ。
**桜井トオル**:日常の中で初代帝王と出会い、衝撃と感動で夢への意欲がさらに高まる。
**松本タケシ**:C1の初代帝王で、ケンジの先輩。フェラーリF40を駆り、穏やかだが威厳ある雰囲気を持つ40代の男。S30Zの過去が伝説として語られる。
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