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[荒い息遣い]
若井side
ぐったりとした涼架を抱き抱え、俺は保健室へと急いだ
廊下の窓から差し込む夕日が、二人の影を長く伸ばす。
涼架の体は、予想以上に軽かった
ここ最近、ろくに食事も取れていなかったのだろう
俺の胸は、罪悪感と彼女をなんとか助けたいという焦りでいっぱいだった。
「ごめん…っ、もう少しだから…っ」
俺は、少しでも早く保健室に着こうと、足早に廊下を進む
しかし、その時俺の腕の中にいる涼架の様子がおかしくなってきた
「はっ…は…っ…」
彼女の呼吸が、どんどん荒くなっていく
肩が小刻みに震え、まるで何かに怯えてるかのように、彼女は俺のジャージをぎゅっと掴んだ
熱を持った彼女の体から、冷たい汗が噴き出している
「おい!どうした、大丈夫か!?」
俺は、立ち止まって涼架の顔を覗き込んだ
涼架の目は固く閉じられ、唇は震えていた
彼女は、何か言おうとしているようだが、息が荒く言葉にならない
「ごめ…っ…ごめんなさい…っ…」
聞こえてきたのは、かすれた謝罪の言葉だった。
俺は、涼架が今もなお自分のせいでギターが壊れたことを悔やみ、苦しんでいるのだと悟った
彼女の荒い息遣いは、単なる体調不良ではなく、彼女の心が張りつめた糸のように張りつめていることを示していた。
俺は、涼架を抱きしめる腕にさらに力を込めた
俺が守ると決めた、この小さな体を今度こそ絶対に離さないと心に誓いながら
若井の心臓の鼓動が、涼架の荒い呼吸に寄り添うように力強く響いていた。
俺は、涼架を抱きかかえたまま保健室の重い扉を肩で押し開けた
消毒液と薬品の匂いが、彼らの周りを包み込む。
中にいた先生が驚いた表情で振り返ると若井が**「お願いします!」**とだけ言って、涼架をベッドにそっと下ろした。
涼架の荒い呼吸はまだ続いていた。
俺は、彼女をベッドに横たえると冷や汗で濡れた髪を額から払い、熱を持った額を優しく撫でた
保険室の先生は、若井に 「あとは先生に任せて、もう帰りなさい」 と言ったが若井は首を横に振った。
「いえ、俺ここにいます」
俺は、涼架のベッドの横に置かれた椅子に腰掛けると彼女の小さな手を優しく握りしめた
「馬鹿だなぁ…」
若井は、涼架の手を握ったままそっと呟いた。
その声は、怒りでもなく、悲しみでもなく、ただひたすらに涼架に対する深い愛情と彼女を守りたいという強い決意に満ちていた。
彼女は、保健室のベッドでうなされ続けていた
彼女の体は、高熱で熱く、小さな体は小刻みに震えている
荒い呼吸は一向に治まる気配がなく、まるで深い海の底で溺れているかのように苦しそうだった。
「ひっ…う…っ…や…やだ…っ…」
うわごとのように、涼架の口から震える声が漏れる。
彼女の閉ざされた瞼の下で、瞳が激しく動いていた
「ごめん…なさい…っ…ごめんなさい…っ…」
何度も繰り返される謝罪の言葉が、俺の心をえぐった。
俺は、その手をさらに強く握りしめ彼女の耳元で、優しく語りかけた
「大丈夫だから。ここには、涼架を傷つける人はいないから大丈夫だよ」
しかし、俺の声は涼架の意識に届かない
彼女の呼吸はさらに荒くなり、苦しそうに喉を鳴らした。
「やめて…っ…ギター…っ…ギター、壊さないで…っ…」
彼女の叫び声は、絶望に満ちていた。
俺は、その声を聞いて彼女がどれほどの恐怖と戦っているのか、痛いほど伝わってきた
「俺はここにいる。涼架のそばにいるから。一人じゃないから…っ」
俺は、自分の存在を証明するように彼女の手を握り続けた
次回予告
[目を覚ましたシンデレラ]
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コメント
4件
ホンマに好き
早く続き読みたい💕
また私の投稿見てください!