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[目を覚ましたシンデレラ]
若井side
涼架のうなされ方は、どんどん激しくなっていった。
全身から脂汗が吹き出し、俺の手を握る力が弱々しかったはずなのに、次第に強くなっていく
閉ざされた瞼の下で、瞳が左右に激しく揺れ恐怖に歪んだ表情は、見るに堪えないものだった
「や…っ…やめて…っ!来ないで…っ…」
彼女のうめき声は悲痛な叫びに変わり、ベッドの上で小刻みに震える始める。
彼女は、焼きそばをかけられた体育館での出来事やいじめっ子たちの嘲笑、そして壊れたギターの夢を何度も繰り返しているのだろう。
「ごめん…なさい…っ…ごめんなさい…っ…私の…っ…せいだから…っ…」
彼女の謝罪の言葉は、まるで自分を責める呪いのようだった。
俺は、彼女のそばにいながら彼女の痛みに気づいてやれなかった
彼女が一人で無理をし、自分を追い詰めているのに止めてやれなかった
その不甲斐なさと罪悪感で胸が張り裂けそうだった。
若井は、見ていられなくなり先生に
「すいません、起こしてもいいですか…?」
先生は、若井の切実な表情をみて何も言わずに頷いた。
「ごめん…っ、ごめんね、涼架。こんなことして、本当ごめん…」
俺は、申し訳なさと彼女を救いたい一心で優しくでもはっきりと彼女の頬を叩いた
「涼架!しっかりしろ!俺の声聞こえるか⁉︎」
涼架は、俺の声に反応しうっすら瞼を開ける。
焦点の定まらない瞳は、まだ悪夢の中にいるようだった
俺は、彼女の顔を両手で包み込み自分の存在を伝えるように、何度も呼びかけた
「俺だよ!若井!俺はここにいるから!一人じゃないから!大丈夫だから!」
涼架side
若井の必死な呼びかけと頬を叩かれた衝撃で、涼架の意識はゆっくり覚醒していった。
焦点の定まらない瞳が、若井君の顔を捉える
涙と汗でぐちゃぐちゃになった視界に映るのは、心配そうな表情を浮かべた若井君だ
「わか…い、くん…?」
か細い声で、彼の名前を呼ぶ
涼架は、完全に現実に戻れていなかった。
焼きそばが頭からかかった瞬間、いじめっ子たちの嘲笑、そして壊れたギターの映像が走馬灯のように頭の中を巡っていた。
若井side
俺は、涼架が自分を認識したことに安堵し、彼女の頬を包んでいた両手をそっと離した
しかし、若井の温もりが離れた瞬間、涼架は再び現実に引き戻された。
「ごめ…なさい…っ」
涼架の目から、大粒の涙がとめどなく溢れ出した。
彼女は、自分の頬を両手で覆い、まるで悪夢からまだ覚め切っていないかのように、何度も謝罪の言葉を繰り返した
「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…っ…」
彼女の肩は震え、全身を震わせて泣きじゃくる
俺の目の前にいるのに、彼女の心はまだ体育館に置き去りのままだった
俺は、何も言わずに涼架の手を優しく外し、彼女の顔についた涙をそっと拭いた。
「謝らないで。涼架は、何も悪くないから」
涼架side
若井君の優しい声が私の耳に届く
彼は、私を抱きしめるように、そっとその体を包み込んだ
私は、若井君の温かい腕の中に顔をうずめ、まるで迷子になった子どものように泣き続けた
次回予告
[シンデレラの結末]
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コメント
2件
涼ちゃん 何とかしてあげたい…🥺
涼ちゃん可哀想