テラーノベル
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春の日差し日差しが校舎の窓をきらきらと照らしていた。
入学式を終えたばかりの廊下は、新しい制服に身を包んだ一年生たちで賑わっている。
雨乃こさめは窓際に立ち、青空を見上げていた。
雲一つない空。
昼だから星は見えない。
でも、その向こうにはたくさんの星がある。
そう思うだけで少しわくわくした。
捺「こさめー!」
後ろから聞き慣れた声が飛んでくる。
振り返ると、暇間捺がこちらへ走って来ていた。
こさめ「なつくん」
捺「やっと見つけた!」
こさめ「別に隠れてないけど」
捺「いや、人多すぎん?」
捺は大げさに肩を落とした。
捺「高校ってもっと静かなもんだと思ってたわ」
こさめ「それはなつくんだけじゃない?」
捺「え?」
こさめ「絶対なつくんが一番うるさい」
捺「失礼だなぁ」
捺は口を尖らせる。
捺「俺、静かな美少年だぞ?」
こさめ「誰が?」
捺「俺が」
こさめ「へぇ」
捺「信じてないじゃろ」
こさめ「うん」
捺「即答!?」
二人は思わず吹き出した。
中学からの友人。
捺がいると不思議と緊張しない。
初めての高校生活も、なんとかやっていけそうな気がした。
◇◇◇
放課後。
部活動見学が始まった。
運動部の勧誘の声が校舎中に響いている。
「野球部です!」
「バスケ部見学どうですかー!」
「吹奏楽部です!」
捺は興味津々にあたりを見回した。
捺「部活どうするん?」
こさめ「まだ考え中」
こさめ「天文部とか見てみたいなって」
捺「星見る部活だろ?」
こさめ「うん」
捺「地味そう」
こさめ「言ったな?」
捺「でもこさめ好きそうじゃん」
図星だった。
宇宙の本を読むのも好きだし、星空を見るのも好きだ。
将来何になりたいかはまだ分からない。
でも、宇宙に関わることができたらいいな、とは思う。
こさめ「とりあえず行ってみる?」
こさめが言うと、
捺「行く!」
捺は即答した。
こさめ「即決なんだ」
捺「楽しそうだし」
こさめ「軽いなぁ」
二人は校舎の階段を上った。
三階。
四階。
そして屋上へ続く扉の前。
そこには小さな紙が貼られていた。
___天文部 見学大歓迎!
こさめ「ほんとにあるんだ」
捺「疑ってたん?」
こさめ「ちょっと」
捺「失礼だなぁ」
こさめは扉を開けた。
夕方の風が吹き抜ける。
広い屋上。
フェンスの向こうには街並みが見える。
そしてそこには三人の先輩がいた。
「お?」
最初に声を上げたのは、ピンク色の前髪を揺らした先輩だった。
蘭「新入生じゃん!」
その明るい声に、こさめと捺は少し驚く。
蘭「見学?」
こさめ「は、はい」
蘭「やったー!」
先輩は満面の笑みを浮かべた。
蘭「俺、桜庭蘭! 天文部部長!」
捺「部長さんなんですか!?」
捺が目を輝かせる。
蘭「そうだよ~!」
捺「なんか思ってた部長と違う」
こさめ「それ褒めてる?」
捺「たぶん」
蘭「たぶんかーい!」
蘭のツッコミに思わず笑ってしまう。
その横で、紫髪の先輩が苦笑した。
いるま「らん、初対面なんだから落ち着け」
蘭「えー?」
いるま「俺、深瀬いるま」
いるまは軽く頭を下げた。
どこか頼れる雰囲気がある。
いるま「バスケ部と兼部してるからたまにしか来れないけど天文部です」
こさめ/捺『兼部!?』
いるま「そんな驚く?」
こさめ「めっちゃ忙しそうです!」
いるま「まあな」
いるまは少し笑った。
するとその奥から、柔らかい声が聞こえた。
尊琴「新入生?」
振り返ると、黄色い髪の先輩がこちらへ歩いてくる。
尊琴「俺、黄地尊琴。副部長だよ」
こさめ「副部長!」
尊琴「部長よりしっかりしてるから安心してね」
蘭「おいみっちゃん?」
いるま「いやしっかりはしてないだろ」
尊琴「え!?」
またみんなが笑った。
なんだろう。
もっと静かな部活だと思っていた。
星を見ながら黙って過ごすような。
でも違った。
屋上には笑い声が響いている。
風が気持ちいい。
居心地がいい。
蘭「で?」
蘭がにやりと笑う。
蘭「入る?」
すると捺が真っ先に手を挙げた。
捺「入ります!」
『早っ!』
こさめと先輩たちの声が重なった。
捺「なんか楽しそうなんで!」
『理由軽っ!』
今度は全員が笑った。
こさめもつられて笑う。
そして空を見上げた。
夕暮れが近づき始めた空。
まだ星は見えない。
けれどきっと、夜になれば見える。
たくさんの星が。
まだ知らない世界が。
尊琴「こさめちゃんは?」
尊琴に聞かれ、こさめは少しだけ考えた。
そして、
こさめ「こさも入ります!!!」
その瞬間だった。
蘭が大きく両手を上げる。
蘭「新入部員二人確保ーーー!!」
いるま「うるさっ!」
蘭「部長だぞ!」
いるま「関係ある?」
また笑い声が響く。
春の風が屋上を吹き抜けた。
ただこの日は――
星が好きな少年が、天文部という居場所を見つけた日だった。
コメント
1件
ああ、いいですね…「居場所」が見つかる瞬間の空気感がすごく自然で温かい。こさめが空を見上げる場面、星は見えなくても確かにそこにあるんだって信じてる感じが好きです。先輩たちのキャラも立ってて、特に蘭の元気なノリといるまの冷静なツッコミのバランスが絶妙。捺の「理由軽っ!」の連続ツッコミも、思わず声出して笑っちゃいました。天文部の屋上、風と笑い声が似合う場所だなあ。続きが気になります。