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空は暗く、月明かりだけが私を照らす。
手には少しばかりの小銭と袋、そして一枚の写真だけ。
周囲の家はもうとっくに明かりが消えているから、静かに道路を歩く。
清洲「…!」
ふと、遠くから明かりが近づいてきてるのが見える。
向きを変え、足早に歩を進める。
清洲「急ご…」
頻繁に振り返りながらも歩みを緩めずに進み続ける。
次第に明かりは遠ざかっているけど、まだ安心はできない。
清洲「いたっ…!」
後ろを振り向いていて気づかず、コンクリ塀に体をぶつけてしまう。
そのときの音のせいか明かりがさっきよりはやく私の方に向かってきた。
清洲「やばい…やばい…」
私は極力音を出さないようにしながら、必死に走り出す。
走っているから、どうしても重い音がなってしまい不安になる。
道路に跡が残っていないか、落ちていないか。
確認したくても後ろから追いかけてくる明かりから逃げているから確認することができない。
清洲「どうしよう…」
しばらく走り、また後ろを振り向くと、あの明かりは私がさっき音をならしてしまった地面を照らしている。
そのには、人の腕が落ちていた。
清洲「はやく…はやく逃げないと…!」
明かりを持っている人の口元が照らされていて、なにかを話しているのがわかる。
きっと仲間に報告してるんだろう、だとしたら逃げ切れるかわからない。
清洲「……」
仕方ない。これは仕方ない。
重い音を出しながら。人に近づいていく。
その人は私のならしてる音に気づいたようで、こちらに明かりを向けてきた。
警官「なっ…!?」
その人が驚いて腰が抜けたのか、明かりが道路に落ちて転がる。
そのせいで、私の周りがはっきりと照らされる。
警官「と…止まれっ!さもなければ…!」
怒号に構わずに近づく。
もう手が届くという距離にまで来た時、額に冷たい金属が当たる。
警官「これが最後の警告だ…!大人しくと─」
清洲「うるさい。」
重い音が、住宅街に何十回と響く。
周りの家の明かりも少しずつついてきてしまっている。
私は少しばかりの小銭と大きい袋、そして一枚の写真を持ち、重い音をたてながら立ち去った。