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中学受験の合格発表日の夜。本当は安堵しているはずだった。本当はもうあいつらと顔なんて合わせなくて良いと思っているはずだったんだ。
もう一回言う。あいつらと顔なんて合わせなくて良いと思ってたはずだった。本当は安堵しているはずだった。
そう、志保は落ちたのだーー中学受験に。
志保が不合格と知ったその時、一番最初に気持ちを吐き出したのは陸斗にだった。
「陸斗……」
そう志保が涙目で言うと陸斗は志保の結果を察したのか優しく抱きしめて
「志保……大丈夫だ。絶対に俺が志保の味方であり続けるから。心配しなくて良い。志保は一人じゃ無い」
そう言って励ましてくれた。
「なんでなの……なんで私が‼︎私はきちんとやったのに‼︎一生懸命頑張ったのに‼︎あいつらと……もう顔なんて合わせなくて良いように、頑張ったのに……」
そう言って志保の目からはボロボロと涙が溢れ出す。
「もうヤダ……辞めたいよ」
『辞めたい』この言葉が何を表しているのかという事は陸斗も想像できる。
『これから俺はきちんと志保を支えてられるのだろうか』そんな事を考えた。
だが、そんな事を考えていたらキリが無いと思い。陸斗はそれ以上考えないようにした。
「志保ちゃん……」
いつから居たのか、陸斗の母親が志保をなだめる。
「大丈夫よ、志保ちゃん。そんなに落ち込まないで。あなたには陸斗がついてる。私だって相談に乗るから、なんか陸斗に言いにくい事があったらいつでも来て良いからね」
そんな事を言われた。
「はい……ありがとうございます」
志保は泣きながらそう言った。
そんな事があり、今日は中学校の入学式。
反志保グループの中枢の人達とは別のクラスになったが、志保達の学年は2クラスしか無いため、中枢以外の取り巻きのような奴らと一緒のクラスになっていた。嬉しい事に、陸斗と同じクラスになれた。
「あっれ〜。志保〜。なんで私らと同じ中学にいるの〜」
そう言って来たのはもう少しでグループの中枢から気に入られ中枢の仲間入りになりそうな女子からだった。
「えっ……いや、じゅ、受験落ちちゃってさ」
そう志保が言うとその女子が大きなそして馬鹿にしたような声で
「えー!志保ちゃん中学受験に落ちちゃったのー!かわいそー!」
そう言った。
『悔しい……』そう思った。普通はムカつくと考えるがそれを通り越して悔しいという気持ちが志保を襲った。
限り無く襲ってくるこの悔しいという感情。自分が自分で無くなってしまう程のこの気持ちはまだ、志保の心を棲家(すみか)として志保の心を侵食していた。
「おい。そんなに笑うなよ。可哀想だろ」
そう言ったのは紛れもない、陸斗だ。
「なっ……なによ!突然!突然女の子同士の会話に入って来るなんて、変態よ!変態!」
そう言って女子はどこかに行ってしまった。
「なんなんだろう。あいつ」
陸斗がそう言う。
「なんなんだろうね。一体……」
そう志保が言うと陸斗は志保の肩を抱き寄せ
「あいつらになんか言われても、なんかされても、いちいち気に病むなよ。なんかあったら俺がどうにかしてやっから。安心しろ」
そう陸斗が言うと志保は笑って
「陸斗になにが出来んのよ。女子より背低いくせに、女子より喧嘩弱いくせに〜」
と言う。
陸斗は頬を赤らめながら
「なっ、なんだよ〜。それは今関係無いだろ〜」
と言う。
ニッと志保は微笑む。この頃最近の遊びはこうやって陸斗をからかって陸斗の反応を楽しむことだ。
だが、普通のからかって楽しむのではなくその中にある可愛い反応を楽しんでいるのだ。
「陸斗くんかわいー」
志保がからかった口調でそう言う。
「うっ……うるさいなぁ、もー!」
陸斗がそう反応する。
ここで志保はやっぱり私立中学校に行かなくて良かったと思ったのだった。
「これ後で知った話なんだけどさ、私が中学受験落ちた理由って賄賂で押収された学校がこの事がバレないよう口実として合格圏の人から適当に選んで解答用紙も改変してたんだって」
病院のベットの上で腕の中にいる子どもをあやしながらそう言う。
「マジ。本当にそういうのってあるんだね」
陸斗が買ってきたお菓子やら何やらの袋をテーブルに置きながらそう言う。
「ねー。マジ信じらんないよね。こちとら頑張って勉強してたのにさ」
そう志保が言うとこくりと陸斗が頷く。
next……