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「もも、おはよう」
珍しく遅い時間に起きてきたのは私の父親である神楽だった。
「神楽!土曜日だってのに、遅いよ」
父親といっても、実の父親ではない。
お父さんは私が5歳のときに交通事故で亡くなり、お母さんも同じく交通事故で亡くなってしまったのだ。
「すまん、変な夢を見たんだ」
「変な夢?」
神楽は本当に具合が悪そうで、それ以上はなにも聞かないことにした。
神楽は朝の支度をして、仕事用のパソコンで作業をし始めた。
昼ご飯は適当にチャーハンでも作ろうと冷凍庫を開けた。冷凍ご飯に卵などを準備する。
__もう今年で10歳なんだからお昼ご飯くらい1人で作れるよ!
__ほんとうか?いや、俺が作る
__大丈夫だってば!
10歳の頃、誕生日パーティで私が料理を作りたいと言っていたことを思い出した。
案の定、卵を割ると殻が入ったし、ごはんは焦げたし、べちょべちょのチャーハンが出来てしまったけれど。
「いい匂いでしょう」
仕事を終えた神楽の前にチャーハンを置いた。
「うん、臭うな」
チャーハンを作るのは誕生日パーティ以来で、神楽は焦げたチャーハンをまずいと言いながらも完食してくれた。
そのあと、神楽は皿洗いをしてくれた。
私は午前中に宿題を済ませ、何もすることが無くなったので、なんとなくテレビをつけた。
その瞬間、ドーンッという大きな音と共に、地面が大きく揺れた。
『繰り返します、この番組が放送されている地域にお住いの方は早急に避難してください。』
『今すぐ逃げて!』
アナウンサーの後ろの映像に映るのは砂ぼこり。その後ろにぼんやりと見えるのは、巨大な黒いナニカ。
「なにこれ」
そう口に出そうとしても、かすれた声しか出なかった。
ドラマか何かだと思い、番組表を見ると、
『○○ニュース』
間違いなくニュース番組で、ドラマではない。
「もも!さっきのなんだ!」
ただテレビを見て目を見開いている私の肩を、神楽が揺らした。
「わかんない、なにこれ」
心臓の鼓動が速まり、冷や汗が出て、足は震えてとても逃げれる状態じゃなかった。
『くり、かえします、この番組が放送されている、ちいきの、かたは、早急に…』
テレビは電波が悪く、カメラが暴風に飲み込まれ番組は中断されてしまった。
バチンッ。
テレビは大きな音を立てて壊れた。
「とにかく逃げよう!」
「う、うん」
なんとか立ち上がり玄関に向かう。
そして、ドアを開ける。
あんな放送がされていたのだから、外はきっと酷いことになっている__
そう思っていたのに、外はいつも通り建物が綺麗に経っていて、チュンチュンと鳥の声も聞こえてきた。
「あれ…」
さっきまでの騒ぎは夢だったかのように、私たちの町は何も変わらない。
「なんだったんだ、さっきの」
デマだったのかと一瞬思ったが、地面は揺れたし大きな音もした。デマではないだろう。
私は部屋の中へ戻った。
「もも!」
カーテンを勢いよく開け、町の反対側を見た。
「あ…」
悲鳴も出なかった。
私の住んでいるところはマンション六階。
そこには巨大な、黒いナニカの赤い瞳と目が合ってしまったのだ。
ジジッ、ジジッ、
『情報、です、未確認、生物の、黒いナニカと、は、目を、合わせないで、ください』
ニュース番組が放送される中、私は黒いナニカに殺された。
『黒いナニカ、は、耳が聞こえず、目を合わせると、襲われて、しまいます』
そんな今更遅い情報を聞きながら私は、
死んだ。