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雨が降っていた。夜の街は静かで、道路に映る街灯の光が揺れている。
「はぁ……」
少年は深いため息をついた。
名前は 天城ユウキ。
どこにでもいる高校二年生――と言いたいところだが、実際はそうでもない。
テストはいつも最下位。
体育も苦手。
友達もほとんどいない。
いわゆる――落ちこぼれだった。
「また怒られるな……」
今日も学校で先生に叱られたばかりだった。
「天城!このままだと進学は無理だぞ!」
クラスメイトたちは笑っていた。
ユウキはただ、黙って下を向くしかなかった。
「俺の人生……何なんだろ」
空を見上げる。
冷たい雨が頬に当たる。
夢もない。
目標もない。
ただ毎日をなんとなく過ごしているだけ。
その時だった。
キキィィィィィィ!!
激しいブレーキ音。
ユウキが振り向くと――
眩しいヘッドライト。
「え……?」
大型トラックが、すぐ目の前に迫っていた。
ドンッ!!
衝撃。
視界が白く弾ける。
音も、感覚も、すべてが遠のいていく。
そして――
意識は消えた。
次に目を開けたとき。
ユウキは、真っ白な空間に立っていた。
「……ここ、どこ?」
周りには何もない。
空も地面も白い。
まるで世界が消えたような場所だった。
「夢……?」
その時。
ふわり、と光が現れた。
光は少しずつ形を変え――
やがて一人の女性の姿になった。
長い銀色の髪。
白い衣装。
まるで神話に出てくる女神のようだった。
「天城ユウキ」
女性が優しく言う。
「あなたは死にました」
「……え?」
あまりにもあっさり言われた。
「え、ちょっと待ってください」
ユウキは慌てた。
「俺、死んだんですか!?」
女性は静かにうなずいた。
「はい。交通事故です」
「そんな……」
ユウキは呆然とした。
まだ高校生だ。
やりたいことだって――
……いや。
よく考えたら、特に何もなかった。
夢も、目標も、ない。
ただ毎日をなんとなく生きていただけ。
「……」
そんなユウキを見て、女性は少し微笑んだ。
「ですが、あなたにチャンスを与えます」
「チャンス?」
「あなたを異世界へ転生させます」
「……え?」
ユウキは固まった。
「い、異世界って……」
「剣と魔法の世界です」
「ゲームみたいな!?」
「はい」
ユウキの心臓がドクンと鳴る。
剣。
魔法。
モンスター。
子供の頃、ゲームや漫画で何度も見た世界。
「本当に……?」
女性は頷いた。
「あなたには特別な能力を与えます」
すると、空間に光の文字が浮かんだ。
スキル一覧。
だがその中で――
一つだけ異様な表示があった。
魔剣適性:∞
「……∞?」
ユウキは首をかしげる。
女性は静かに説明した。
「魔剣とは、意思を持つ特別な武器です」
「意思?」
「普通の人間には扱えません」
しかし。
「あなたは違います」
女性は言った。
「あなたはこの世界で唯一、すべての魔剣を扱える存在です」
「すべて……?」
「はい」
ユウキの胸が高鳴る。
だが女性の表情は、少しだけ真剣になった。
「ただし」
「?」
「その力は、世界を変えてしまうほどの力です」
空間が静かになる。
「あなたの選択が、この世界の未来を決めます」
「……」
ユウキは拳を握った。
学校では落ちこぼれ。
何もできなかった自分。
でも――
もしやり直せるなら。
今度こそ。
「……俺、やります」
女性は優しく笑った。
「その言葉を待っていました」
光が溢れる。
世界が白く包まれる。
「さあ――行きなさい」
「あなたの物語を始めてください」
ユウキの体が光に溶けていく。
そして――
彼の新しい人生が始まった。
気がつくと。
ユウキは草の上に倒れていた。
「……う」
目を開ける。
青い空。
大きな雲。
見たことのない森。
「ここ……本当に異世界?」
体を起こした瞬間。
ピコン!
頭の中に声が響いた。
ステータスを表示します
「うわ!?」
目の前に光のウィンドウが現れた。
名前
天城ユウキ
レベル
1
体力 5
攻撃 3
防御 2
魔力 4
素早さ 3
「弱っ!!」
思わず叫んだ。
完全に最弱。
村人レベル。
「これ大丈夫!?」
だが、その下に一つだけ異常な表示があった。
スキル
魔剣適性:∞
「……これか」
その時だった。
ガサッ。
草むらが揺れた。
「?」
出てきたのは――
緑色の小さな怪物。
牙をむき、棍棒を持っている。
「ゴブッ!」
「ゴブリン!?」
ゲームでよく見るモンスター。
だが実物は普通に怖い。
「ちょっと待って無理無理!」
武器なし。
ステータス最弱。
完全に詰みだった。
ゴブリンが襲いかかる。
「ゴブァ!」
「うわぁぁ!!」
ユウキは後ろに転ぶ。
その瞬間。
ドクン。
地面が震えた。
黒い霧が地面から溢れる。
そして――
一本の剣が、ゆっくりと姿を現した。
黒い刀身。
赤い紋様。
禍々しいほど美しい剣。
「え……?」
その時。
声が聞こえた。
頭の中に。
『……主よ』
「!?」
『我は魔剣』
『選ばれし者よ』
『我を取れ』
ユウキは震える手で剣を握った。
その瞬間――
凄まじい力が体を駆け巡った。
ステータスが爆発的に上がる。
視界が変わる。
体が軽い。
「なにこれ!?」
ゴブリンが飛びかかる。
「ゴブァァ!!」
ユウキは思わず剣を振った。
ズバッ!!
一瞬だった。
ゴブリンは真っ二つになり、地面に倒れた。
静寂。
「……え?」
ユウキは剣を見つめる。
さっきまで最弱だった自分。
でも今は違う。
手の中には――
伝説の力。
そしてユウキはまだ知らない。
この剣が――
世界最強と恐れられる
魔剣の中の魔剣
だということを。
こうして。
落ちこぼれ高校生の少年は、
やがて世界に語り継がれる
究極の魔剣士への道を歩き始めた。