気がつけば、ある人の家の前にいた。
ななもり「着いちゃったね、」
莉犬「そうだね、」
俺は、そっと彼の手を握った。
ななもり「ん?どうかしたの、?」
莉犬「ううん。なんでもないよ」
ななもり「そっか」
本当は、なんでも無くはない。
本当は、お兄ちゃんを少しでも安心させるために手を握ったんだ。
でも、俺の手は小さいから、きっと何にもならないのだろう。
ななもり「インターホン押すよ、?」
莉犬「うん。」
インターホンを押す彼の手は小さく震えていた。
春になってようやくぽかぽかしてきた頃だというのに、自分たちの周りだけ氷が張っているかのように冷たく感じた。
「ピーンポーン」
静寂の中に、インターホンの音が鳴る。
本当の地獄はこれからなのだ。
この、待っている時間で怯えている場合では無い。
そんなことは分かっている。
分かっているつもりなのに、。
それでも、俺の、俺たちの体は小さく震えていた。
「がちゃ」
家の扉が開いた。
おばさん「あら、あなたたちw」
おばさん「また来たの?ww」
おばさん「うんざりなんだけどぉww」
ななもり「ッ…」
ななもり「すみません…ッ」
おばさん「あら?久しぶりに見たわあなた。」
莉犬「お久しぶりです、」
おばさん「まぁいいわ、さっさと入って」
ななもり「失礼します、、」
莉犬「失礼します、、」
俺たちは、家に入った。
重い家の扉は、ガチャリと閉まる。
おばさんは、扉に鍵を閉める。
まるで、外に出られないように、逃げられないようにしているように見えた。
おばさん「あなた達にあげるお金ないんだどぉ
ww」
ななもり「そこをなんとかッ…」
莉犬「お願いします…ッ」
おばさん「最近イライラしてんのよねぇ?」
おばさん「ストレス解散道具が来て便利だ
わぁ?ww」
ななもり「何でもしますッ…」
おばさん「あらぁww」
おばさん「それじゃあ、ちょっと殴らせてもら
うわねぇ?ww」
ななもり「あのっッ…」
おばさん「何よ」
ななもり「この子だけは殴らないでくださ
いッ…」
ななもり「殴るなら、俺を殴ってくださいッ」
おばさん「あらぁ、そんなの決められるとでも
思ってんの?ww」
おばさん「ウザイんだよ!!!!」
ななもり「ガハッ…ポロポロ」
莉犬「兄ちゃんッ…!!」
おばさん「うるっさいわねぇ!!」
莉犬「ヴッ…ポロポロ」
おばさん「そんなとこで泣かないでよww」
おばさんは、止まらない。
俺たちが、泣こうが喚こうが止まらなかった。
泣くほどに、殴られる。
対抗なんてもってのほかだ。
俺たちは、ただただ殴られるサンドバッグだ。
でも、俺が、俺たちが苦しむだけで、
みんなが笑っていられるのであれば。
それでいい。そう思えた。
莉犬「はっはっはぁ、ッ」
おばさん「キモ、ww」
莉犬「ウグッ…はっはっはぁ、ッ」
ななもり「莉犬くんッ…!!」
ななもり「息を吐いてッ…!!」
ななもり「吸っちゃダメだッ…!!!」
莉犬「はっはっはっ、、はぁ、ッ」
おばさん「うるさいうるさいうるさい!!」
ななもり「ウガッ…ゲホゲホッ…!!」
莉犬「兄ちゃッ…ポロポロ」
莉犬「ゲホゲホッ…ゴホッゴホッ…ポロポロ」
おばさん「はい、お金」
おばさん「私が優しくて良かったわねww」
ななもり「ありがとッ…ございます…」
莉犬「ありッ…がとうございます…ゲホ」
おばさん「汚い、さっさと出てって」
ななもり「はいッ…ゲホゲホ」
莉犬「すみませんッ…」
俺たちは外に出た。
その瞬間、俺 の頬に、乾いた衝撃が走った。
けれど、声は出なかった。
ただ――何かが「ひび割れる」ような感覚だけが残った。
視界の端が白く滲み、
世界が静かに歪んでいく。
体はまるで薄い硝子でできていたみたいに、
音も立てずに崩れていった。
意識がふっと離れていくその瞬間、
赫の瞳は、どこか寂しげに光を手放した。
ななもり「莉犬くんッ…!!!」
目の前には倒れた莉犬がいた。
いつもは1人だから、2人でいた事もあっていつもよりも楽に思えた。
それでも、犠牲者はいる。
その犠牲者は俺よりも体が弱い。
本当は連れて行ってはいけないことぐらいわかっていた。
それでも、「自分だけがなんで…」という感情が俺の中で渦巻いいた。
だから、莉犬くんを否定できなかった。
彼を抱いて、ゆっくり歩く。
タクシーを捕まえて、病院まで行く。
運転手「あのぉ、大丈夫ですか?」
ななもり「え、と、その、」
運転手「誰かに相談するんだよ?」
ななもり「はい、ありがとうございます」
運転手「何があったのか?」
運転手「さっき、そこの家から出てきたよね」
ななもり「ッ…」
言ってしまおうか。言わないか。
言ってしまえば、お金が貰えないかもしれない。
もう二度と兄弟の笑顔が見れないかもしれない。
そう思うと、どうしても言えなかった。
それでも、言えば楽になれるかもしれない。
そう思う気持ちもある。
今、助けを呼べば。もしかしたら、。
そう思ってしまう。
その謎の期待に任せて、俺は全てを話していた。
運転手「そんなことがあったんだね…」
ななもり「はいッ…ポロポロ」
運転手「泣くな、泣くな笑」
ななもり「すみませんッ…」
運転手「警察には相談した?」
ななもり「いいえッ…」
運転手「そうか、そうか…」
運転手「とりあえず、病院行こうね。 」
運転手「お代はいらないよ。」
ななもり「そんなッ…!!」
運転手「病人からは貰えないよ」
ななもり「ありがとッございます…」
運転手「隣の子は弟くん?」
ななもり「はい」
運転手「そうか…」
運転手「待ってるね君たちのこと。」
運転手「その後、警察に行こう。」
ななもり「ありがとうございます…」
運転手「いいのいいの笑」
運転手「若い子は笑ってなきゃね」
ななもり「ふふ笑」
運転手「さぁ行ってらっしゃい。」
運転手「俺も君達と行こうか?」
運転手「君も疲れてるだろう?」
ななもり「お願いします…ッ」
運転手「うん。」
運転手「じゃあ、その子背負うね」
ななもり「ありがとうございます…」
運転手「いいのいいの。」
優しいおじさんだなぁ。
そう思った。
運転手「よかったね、入院にならなくて」
ななもり「はい」
莉犬「兄ちゃんごめん…ゲホゲホ」
ななもり「無理しないで」
莉犬「運転手さんも、ありがとうございます」
運転手「いいのいいの笑」
運転手「そろそろお昼だけどなんか食べる?」
ななもり「お腹すいてなくって…笑」
莉犬「俺も…」
運転手「じゃあ、なんか買ってくるから待って
てね」
ななもり「はい」
莉犬「兄ちゃん…ごめんねゴホッ」
ななもり「謝らないで。俺も悪かった。」
莉犬「違うよ。」
莉犬「俺がわがまま、言ったからだ。」
ななもり「…」
莉犬「自分を責めないで兄ちゃん。」
ななもり「兄ちゃんは悪くない…」
コメント
24件
みんな返信早いなぁ笑笑 返してくれて、ありがとう!! 今コメントしてくれた人も、してない人も。コメント沢山待ってるよ!
運転手さんやっさし… 神じゃん…w この物語優しい人多いなぁ… そして酷い人も多いなぁ…( ; ; )
運転手さーん(´;ω;`)