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MAKO
毎晩のように悪夢に魘され、日に日に窶れていく🌸を見ていたナックはギリッと奥歯を噛んだ。
執事たちは元の世界で何があったのかを全て知っているわけではない。
しかし、こうなるまで追い詰められていたということと、こちらに来た時の怪我を思い出すと元の世界の家族や夫を殺してやりたいと思うのだ。
「何か、良い方法がありませんかね・・・」
ナックは書庫に入り、古い魔術の本を片っ端から捲り始めるのだった。
男は苛々していた。
いつも当たり散らしていた便利な女が子供を連れて逃げたのだ。
それも、金も着替えも靴さえも持たずに。
まるで神隠しにでも遭ったようではないか、とさえ思う。
男は酒をぐいっと煽ると部屋から出て、当てもなくふらふらと歩く。
そのうち、変な場所に迷い込んだことに気がついた。
だだっ広く、赤い鳥居が其処此処に乱立している場所なんて家の近くにない。
男は来た道を引き返そうとするが、濃い霧がかかっていて全く後ろが見えない。
[・・・来たぞ来たぞ]
[ようやくじゃ]
[さぁどうしてやろうか?]
そのうち男の周りには何者かの気配がうようよと漂い始めた。
霧が人の背丈ほどの塊を作り、それが話し始めた。
[さてさて、丁度退屈しておったのじゃ]
[精々藻掻いて愉しませろ、罪深き男よ]
[ではまずは、鬼ごっこといこうか・・・]
何者かが手を広げると青い火が幾つも何も無い空間に灯った。
[さあ、お逃げ。捕まると焼かれるぞ]
人ならざる者は愉しそうにケラケラと笑って灯火を操り、1つを男に当てた。
灯火はたちまち男の腕を焼け爛れさせた。
男は悲鳴を上げ、必死に走って灯火から逃げ出した。
背後からはゲラゲラと笑うナニカの声が響いている。
[愉快愉快・・・いつまで逃げるやら・・・賭けでもするか?]
[良いではないか。何を賭ける]
[ではあの子に御守りを渡す権利でどうじゃ?]
[御守りは全員分渡すと決めただろう、阿呆が]
[ふむ・・・そうであったな・・・
では、あの子の娘に渡すのはどうじゃ?]
[ほう?良いな]
[そうしよう、そうしよう]
ナニカは愉しそうに笑い、男が逃げ切れる時間を言い合っている。
男はその間必死に走って灯火から逃げていた。
しかし、走っても走っても景色が変わらず、灯火はいつまでもふよふよと男の近くに浮かんでいる。
「何だよこれ!?どうなってんだよ!!」
男は叫ぶが、ナニカは愉しそうに笑うだけだった。
男は腹が立って灯火を殴りつける。
その瞬間全身を炎に包まれ焼かれてしまった。
[あぁ・・・思ったより短かったのう・・・]
[わしの勝ちじゃ!]
[なんだ、つまらんのう・・・]
絶叫する男の声を虫の鳴き声程度にしか思っていないらしいナニカは賭けの結果で盛り上がっていた。
男は全身を焼かれる痛みに泣き叫び、いつの間にか気を失っていた。
男が目覚めるといつもの部屋の畳の上だった。
火傷の跡など何処にもない。
変な夢を見たものだと水を飲んで顔を洗う。
寝直そうかと部屋に戻ると、大きな幼虫のようなものが何匹も這い回っていた。
[さあさあ、お逃げ]
[逃げなきゃ喰われるぞ]
またナニカの声が聞こえ、幼虫たちが男に群がる。
幼虫たちは鋭い歯で男に噛みつき、少しずつ肉を千切って喰っていく。
男はじわじわと肉を千切られていく痛みに絶叫し、早く殺してくれと泣き叫んだ。
手足を喰い終わる頃には男の涙も声も枯れてしまっていたので、ナニカはつまらなそうに男の身体を一瞬で爆発四散させ、部屋は一瞬で血塗れになった。
男が目覚めるとまたいつもの部屋だった。
慌てて外に出るとマグマが流れる場所に飛ばされた。
[さあ対岸まで泳ぐのじゃ]
そう言われてマグマに突き落とされ、男は身体が溶けていく痛みに絶叫しながら藻掻いた。
男が目覚めるとまたいつもの部屋。
こんどは吹雪の中、雪に埋まった宝物を探せと言われた。
歩き回り雪を掘り返した疲労と空腹で、男は雪にドサリと倒れた。
そんな男目掛けて空から鋭い氷柱が降ってきて、四肢を貫いた。
男は痛みに悶絶しながら失血で冷えていく身体に絶望した。
目覚めるとまた・・・
目覚めるとまた・・・
目覚めると・・・
目覚めると・・・
また・・・
また・・・
また・・・・・・
いつまで続くのだろうか・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
もう何度目だろうか・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
そのうち抵抗を諦めた男にナニカは飽きたようで、数日何も起こらなかった。
ついに解放されたのだと男の目に生気が戻った時、男の周りに禍々しい陣が現れてまばゆい光を放った。
「この男ですか・・・」
「好きなだけ壊してよいのですよね?」
「ただ、殺さないようにね」
「問題ないよ。異常な回復力を得る薬をいれるからね♪」
「主様に暴力を振るった罪を償ってもらおうか」
男を囲むように18人の男達が立っていた。
赤と黒の長髪の男が注射器を取り出し、他の男たちに押さえられている男に薬を注射した。
「さてと・・・効果は出たかな?
ナック君、脚を折ってみてくれる?」
「はい!」
にこやかな返事が聞こえた瞬間、男の脚があり得ない方向に曲がる。
汚い叫び声を上げる男だが、脚は勝手に元の位置に戻り骨もすぐに繋がった。
「これは・・・素晴らしいですね!」
「うん、ちゃんと戻ってるね」
2人は傷跡を確認してニコニコと笑いあった。
そして、男から離れるとこう言った。
「鬼ごっこをしようか。鬼は私達。君は逃げてね。鬼は君を殺しに来るから、頑張って逃げるんだよ?」
男は腰を抜かしながら後ずさる。
「あら、私に殺してほしいのですか?」
黒髪で片目の隠れた青年が刀を抜く。
そして一瞬で何箇所か突かれ、血が噴き出す。
悲鳴を上げて逃げ出した男の前に三つ編みの少年が立ち塞がり、ナイフを両手に構えた。
その瞬間男の四肢は切り落とされ、腹に深くナイフが突き刺さる。
ナイフで内臓を掻き回され、腹を開かれて臓物を引き摺り出される。
空になった腹の内側からナイフで刺されて男は声にならない悲鳴を上げた。
血まみれになって満足した少年は男から離れ、回復していくのをじっと見守る。
ほぼ傷が塞がると、緑の髪の青年と金髪の青年が男を挟んで立った。
緑の髪の青年が男を殴りつけると後ろの金髪の青年が殴り返し、男をサンドバッグのように殴り続ける。
元の顔が分からなくなるくらいに殴られ、打ち捨てられた。
また傷が治ると、今度はボールの様に蹴り飛ばされ、4人の青年たちに遊ばれた。
傷が治ると、刀で全身の皮を剥がれた。
傷が治ると、弓の的にされてハリネズミになるまで矢を当てられた。
傷が治ると、様々な毒を飲まされては様子を見られ、何時間も苦しめられた。
回復すると斧で末端から少しずつ切り落とされた。
傷が治ると・・・
傷が治ると・・・
傷が治ると・・・
傷が治ると・・・
傷が治ると・・・
傷が治ると・・・
傷が治ると・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
男たちは好き放題男を痛めつけ、満足したら首に縄をかけて木に吊るした。
男は死ぬことができず、延々と窒息の苦しみを味わうことになった。
・・・もう殺してくれと男は叫んだ。
しばらくすると、男は何も無い黒い空間に居た。
そこには先程の18人と同じように男を見下ろすナニカが居た。
〔さぁどうする?〕
〔まあ、焦らなくていいよ〕
〔だって、永遠に私達の玩具になるのですから〕
男は死んだことを悟り、これ以上なく後悔した。
悪魔たちは男の魂を玩具にして、永遠に遊び続けるのだった・・・
コメント
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うわ、これは…めちゃくちゃ重い回でしたね。でも、逃げた🌸さんを思うと「ざまあ」と思ってしまう自分がいます。ナックが必死に魔術書を調べてる姿にグッときたし、その「執事団総出での復讐劇」、設定の徹底ぶりがむしろ清々しかったです。「♡♡♡ない」って拷問が一番エグい。悪魔たちのノリの軽さも不気味で良かったです。