テラーノベル
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ユキ
28
夜風が静かに吹いていた。
波の音だけが、遠くで聞こえている。
しばらく黙って景色を見ていたヤマが、小さく息を吸った。
「……なあ。」
私は隣を向く。
ヤマは少しだけ笑っていた。
「より戻さへん?」
たった、それだけだった。
長い言葉も。
かっこいい告白もなかった。
でもそれが”ヤマト”という人間だなとも思った。
私は少しだけ笑って、小さく頷く。
「……うん。」
その一言だけで十分だった。
ヤマは安心したように笑った。
その笑顔を見た瞬間、張りつめていた何かがほどけていくのが分かった。
久しぶりに、彼に触れた。
温かかった。
ああ。
やっと帰ってきた。
そんな気がした。
あの日、離した手を。
今度はもう離したくないと、心のどこかで願っていた。
コメント
1件
うわ、めっちゃ普通にグッときた……「より戻さへん?」って、あのヤマトらしいストレートな言い方だけで全部伝わるのがすごい。夜の海辺の静けさとか、波の音だけの二人の距離感が、じわじわ心に染みた。最後の「やっと帰ってきた」って言葉、彼女の気持ちそのままで泣きそうになったよ。戻れてよかったね、本当に。