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すごい、、昔の自分に囚われえたのかな、次はコンちゃんとかかな?、、 ゆっくり休憩しつつ、頑張ってください💪
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『ひさしぶり』
アカ色に染まる電車の中。
通路を挟み座る、自身の”赤”を持つ彼等。
赤色は目を覚ますと同時に、自分の手に持たされていた一冊の小説を覗いた。
『”どうせ、全部演技なんだから”』
仏蘭西人形が4体。
膝下まで浸かる透明な水に写っているそれは、じっと彼を見つめ、口から唄を奏でた。
童謡
かごめかごめ__
きりきりと、何処からか締め付けるような音が聞こえる。
静かな空間に妙に響く音たち。
籠の中の鳥は__
4人の人形は水面からふらりと浮かび上がり、彼に手を伸ばしてはくるくる…くるくると彼の周りを歩き出す。
よく見るとその小さな手には光に照らされないと分からない程の細い糸が握られていた。
いついつ出会う__
キリキリ…キリキリ…
夜明けの晩に__
対面する”紅色”が席を立ち、”赤色”へと手を伸ばす。
『”面倒なら捨てればいいのに”』
パチン__
電車の外はアカ色に染まるばかり。
ちらりと視線を逸らしても、どこまでも続く先の見えない車両。
走行音と振動だけが、唯一彼等を動かした。
挟んでいた廊下に1つ、黒い液体を撒き散らす”何か”が浮き上がる。
赤色の瞳に映る紅色を持つ男。
苦虫を噛み潰したように顔を歪める男。
その腕からは先程の黒い”それ”をぼたぼたと垂れ流し、水面に溶け込んでいった。
『ッ、』
赤色の動作1つ1つに、先程まで糸を巻き付けていた人形たちがぶつかり合いカラカラと無機質な音で泣く。
紅色の額から滲み出る汗が1つになり、頬、鼻、顎と多数の箇所に大きな水滴を作り、やがて
空中で止まる。
『甘い、w』
先程までの走行音、振動、肌に触れる生ぬるい空気の感触が一瞬にして気配を消した。
赤色の体は、まるで金縛りにあったかのように固まってしまっている。
目の前の相手は得意気な、自信に満ちたような顔を上げた。
頬に伝っていた汗は張り付いたようにその場で動きを止めている。
『結局何者でも無いんだよ、お前は』
赤色の投げた本は水面から遥か下、泡を立てながら沈み沈み、綴られた文字がパラパラと水に溶けていく。
『”偽物”』
紅色の片手が赤色の首を勢いよく掴んだかと思えば、次の瞬間、視界からそれは姿を消した。
再度、黒い液体が吹き出すと同時に赤色がゆらりと体を動かし始める。
「何者にもなれなかったよ」
言葉を綴る彼。
「知ってる?空の上にいる神様ってのは僕らを助けようとしない…けど僕らを作ったって言うんだよ」
水を掻き分け、紅色の目の前に立つ彼。
カラカラ…カラカラと鳴るそれを引き千切りながら。
「そんなヘンテコな理想論よりさ、実在する、目の前にいてくれる”本物”を見た方がいいってさ」
紅瞳が音もなく見開かれる。
「お前が偽物だよ、”〇〇”」
電車の窓から差し込む光がパッと青色に変わった。
走行音が止めることはない。
『でも、”アレ”はお前を見てくれない』
震えた声で言う紅色。
そんな彼に、赤色はふわりと笑った。
「見てくれてるよ」
水の中に座り込む紅色の肩を持つ彼。
炎のように、けれど柔く燃える赤色を持つ彼。
どこまでも優し過ぎた男に惹かれてしまった男_
「神様になろうとする方がおかしかったんだよ」
恐怖に染まっていた目の前の顔がふわりと安堵の表情に変わると音もなくサラサラと空気中に溶けていく。
眠るように、静かに。
「さようなら、”昔の自分”」
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