酔った勢いでーー
夜中――
玄関の扉が勢いよく開く音に、🌸はベッドから顔を上げた。
「……てつくん? 大丈夫?」
返ってきた声はいつもより低く、ふらついていた。
「🌸〜、会いたかった〜……」
普段の余裕顔じゃなくて、
頬は赤く、目はとろんとして、
まるで子どものようにすり寄ってくる。
「もう、飲みすぎだよ」
「んー? だってぇ……会いたいんだもん。
早くぎゅーさせて?」
甘い声。いつもより素直すぎる気持ちのまま、
抱きしめて、名前を呼んで、
眠る直前までずっと離れなかった――
🌸が安心して目を閉じる頃。
黒尾の指先が、髪をそっと撫でて囁いた。
「……大好き。絶対離さない」
大人しくしてたと思ったら、黒尾の手つきが怪しくなって、反抗する前には服を脱がされていた。
――そこからは、柔らかい記憶の断片だけ。
⸻
◆ 翌朝
「…………ぅ、最悪だ」
頭痛と共に目を覚ますと
隣には眠る🌸。
シーツは少し乱れていて、服を着てない。
彼女の頬はほんのり赤い。
黒尾は青ざめた。
(やべ……俺、昨日……
もしかして、やっちゃった…?無理矢理しちゃったか……?)
曖昧な記憶。
でも、彼女の寝顔はどこか安心してる。
(……嫌がられてない、よな?)
胸がぎゅっと締めつけられた。
普段は余裕ぶってる黒尾が、
こんなにも不安げな顔をするのは珍しい。
そっと手が伸びる。
しかし、触れた瞬間――
🌸「……てつくん?」
黒尾「っ、ご、ごめん!
昨日のこと、もし無理矢理で、ほんとに――」
異例の慌てっぷり。
言い終える前に、🌸は微笑んだ。
「違うよ。
てつくん、ちゃんと聞いてくれた。
『いい?』って何回も」
その一言で、黒尾の肩の力が抜ける。
「……そっか。良かった……
いや、よくないな………」
安堵と同時に、自分の焦りを隠すように
へらっと笑ってみせた。
「記憶がちょい飛んでんのは悔しいけどさ。
俺、そんなヘマしてないならまだ、」
🌸「ふふ。いつものてつくんだったよ」
「俺いつも紳士だもんネ?」
くすくす笑いながら、
黒尾はそっと彼女の手を握った。
「でもさ。
昨日の『好き』、覚えてないのは……ちょっとズルい」
「え?」
黒尾は彼女の額に唇を落とす。
「じゃあ、もう一回言う。
ちゃんと起きてる🌸に」
目を合わせ、いつになく真面目に。
「大好き。世界で一番、愛してる」
彼女の頬が染まるのを見て、
黒尾はようやく、いつもの余裕を取り戻した。
「よし。じゃ、朝ごはん作るわ。
お嬢さんは寝てて?」
布団をかけなおす手が優しすぎて
胸があたたかくなる。
キッチンに向かいながら
彼は小さく笑った。
(記憶なくても、この気持ちは残ってるから)
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