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まだ丘を抜けていないというのに、ルフィが立ち止まって反対方向に走り出していく。
「ええっ、ルフィ先輩!?」
「やっぱ用事があるから先行っててくれ」
「ルフィ、時間はねえぞ。要件ならすぐに済ませて来い! 東の港で待つ」
「わかった!」
「急ぐぞ!」
「カッコいいこと言ってるとこ悪いけどそっちは南だファンタジスタが!! リード付けんぞ!!!」
また迷子になるんじゃないかとヒヤッとしたが、今度はちゃんと目的地に向かって走っていく。そのまま俺たちは真っ直ぐ東の港へと向かう。道中、ルフィに恩を感じている奴らが道を切り開いてくれて、俺たちは無事に進むことができた。
「ジェディ」
「なに、どうし――うおあっ!?」
ローが俺を担ぎ上げていきなり港じゃない方に走り出す。
「いきなりなんだよ! っておいおいおい! あっちにいるのセンゴク元帥じゃねえか!! 俺怒られたくねえよ! 捕まりたくもねえし!!」
「いいから、おれと来い」
そうしてローはセンゴク元帥の元へ向かった。…あ、もう元帥じゃないのか。
センゴクさんはのんきに海軍おかきを食べていて、何故だか俺たちを捕まえる気はないらしい。
「おかきをどうだ?」
「いらね。早く話せ」
「うむ…………ある日、海兵が1人死んだんだ。そいつは私にとって特別な男だった。ガキの頃に出会い、息子のように思ってた。正直で、人一倍の正義感を持ち、信頼のおける部下でもあった。だが、生涯で一度だけ、私に嘘をついた」
――私は裏切られたんだ。
「しかし、理由があったはず。あの事件で消えたものは4つ。バレルズ海賊団、私の部下の命、オペオペの実、そして当時ドンキホーテファミリーにいた、珀鉛病の少年」
「……ああ、おれだ」
「やはりか。ロシナンテが半年間任務から離れたのは、お前のためか?」
「ああ、病院を連れまわされた」
「それでオペオペの実に手を伸ばし、お前を生かすためにロシナンテは死んだんだな?」
センゴクさんの言葉に、ローは無言で返す。
……俺、ここにいて、この話を聞いていていいんだろうか。どこかに行こうにも、ローが俺の手を離してくれねえし……まあ、仕方ない。大人しく聞いておくか。
「あいつが死んだ理由をはっきり知りたいんだ」
「ああ、そうだ。本当は2人で逃げるはずだった。おれはあの人から〝命〟も〝心〟ももらった。大恩人だ。だから彼に代わって、ドフラミンゴを討つためだけに生きてきた! ……だが、これがコラさんの望む〝D〟の生き方なのかわからねえ」
「D?」
「麦わらと同じように、おれにもその隠し名がある」
「ッ!」
「元元帥のアンタなら、〝D〟について何か知ってんじゃねえか?」
「さあな」
「おい、ごまかすのか!」
「少なくとも、ロシナンテは何も知らなかったはずだ。つまり、そのためにお前を助けたわけじゃない。受けた愛に、理由などつけるな!」
そう言って、センゴクは立ち上がる。そして俺たちに背を向けたままこう言った。
「私がまだ現役なら、お前を檻にぶち込んでゆっくり話しただろうが……ロシナンテの思い出を共有できる唯一の男が、海賊のお前とはな。どうしても奴のために何かしたいのなら、お互いに、あいつを忘れずにいよう」
「ぐ……」
ローが帽子のつばを下げ、目を隠す。
「それでいい。お前は自由に生きればいい。あいつならきっと、そう言うだろう」
それだけ言い残して、センゴクさんは次に俺の方を見た。
「ジェイデン」
「っ、は、はい」
「海賊になるなと言ったのに…」
「いやっ、なってないです! ……いや、さすがに苦しいか……賞金首にもなってるし……」
「フッ、冗談だ。元気そうでよかった」
その言葉に、俺は小さく頭を下げる
「行こう、ロー」
「……あぁ…」