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阿形side
運動場に来たはいいけれど、排球部らしい人はどこにもいなかった。
おかしいと思ってたら、背中にボールが当たった!
ちょー痛い!
?「ちょっとそこの一年! 」
阿形/カゴメ「「…はい?!」」
振り返ると二年生の運動着、一人は人間、もう一人は鬼の、二人の女の子が俺たちを怖い顔で見ていた。
紅代「そこにいたら邪魔よ!とっととどいて!」
牡丹「…あ!こいつ、般若先輩にぶつかった一年じゃん!」
カゴメちゃんを指さしてそう言った。
さっきの案内のときのことかな? カゴメちゃんはぶつかってなかった。
というか般若先輩が突進してきたんだったよね。
阿形「ぶつかっ…」
カゴメ「ぶつかってなんかいませんわ。兄が勝手に抱きついてきましたのよ」
カゴメちゃんに先に反論されちゃった。
すると、目鯨を立てて「嘘つくな!」って怒鳴ってきた。
紅代「つーかアンタどう見ても人間だろ!般若先輩の妹なわけないじゃない!」
カゴメ「失礼ね!確かに血は繋がってませんけれども、私たちは兄妹ですわ!」
牡丹「やっぱ違うんじゃない!この親無し!」
カゴメ「なんですって!」
ケンカが始まっちゃった!
早く止めよう!
阿形「ね、ねぇ、ケンカは…」
カゴメ/二年生「「阿形くん黙ってて/男子は黙ってろ!!」」
ひぇ…無理怖い…誰か助けて
牡丹「血も繋がってないくせに!般若先輩に馴れ馴れしいったらありゃしない!」
カゴメ「感情任せに罵声しか発せないなんて、貴方たちの方がよっぽど惨めだわ!」
紅代「な、この…! 」
鬼の方の女の子がカゴメちゃんの服を掴んで拳を振り上げた!
人間と違って、鬼は子供でも力が強いことが多いから、殴られるとやばいんだ!
カゴメちゃんが危ない!
般若「おい」
ギリギリのところでカゴメちゃんを守ったのは…般若先輩だ!
すっごく怖い顔で二年生の二人を見てる!
カゴメ「に!…いさん……」
紅代「は…般若、先輩…?」
般若「おめぇ、俺ん妹になんしよーったい」
牡丹「ち、違うんです!この一年が…」
般若「黙れ」
さっきの陽気な感じの人だとは思えないくらいドスの効いた低い声で、俺たちの心臓がびくりとした。
カゴメちゃんも、冷や汗かいてる。
般若「次またこげんことしてみぃ…そん首、食い千切るけぇ…!」
二年生「ヒッ…!」
大きい牙をギラっとさせて言われた二人は、真っ青になって逃げていった。
カゴメside
般若「カゴメ!怪我ねぇか?!」
先程の怒りの籠った表情から一変、私を心配そうに見つめる兄。
勢いよく両肩を掴まれたが、手の力は優しく、痛くもない。
カゴメ「え…えぇ、なんともない、わ」
そう言うと、程よく筋肉の付いた両腕に引き込まれ、私は兄の胸元に顔をうずめる形になってしまった。
カゴメ「ちょ、ちょっと…!?」
般若「…よかった、遅くなってごめんな?怖かったよな?」
安堵したような声色と、頭を撫でる優しい手つきで、まるであやされてる子供のような気分だ。
カゴメ「も、もういいわ!人が居るのに!」
人肌のせいなのか顔が熱くなり、私は目一杯の力で兄の胸を押し、優しい両腕から解放された。
阿形「あのぉ…俺のこと忘れてないよね?」
カゴメ「ほ、ほらもう!阿形くんを待たせてるのよ!」
今更気が付いたのか、目を丸くして阿形くんを見る兄。
…なんだか嫌な予感がした。
般若「え?男!?はぁ?!?!」
何を勘違いしたのか、兄は阿形の胸ぐらを掴んで私との関係を問い詰め始めた。
何が何だかわからない!とあわあわする阿形くんを助けるために、兄の誤解を解くことになってしまい、私は当初の目的をすっかり忘れてしまっていた。
コメント
1件
今回の話もとても素敵でした! 次の話も楽しみです!