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いきなりの申し出に戸惑った。
ホントは、忘れられずにずっと待っていたくせに……
でも、相手はエリート。
彼なら必ず、上まで上り詰める!
そう思ったから、別れてまで海外赴任へ行かせたんだ。
いつの間にか歳だけ増えた私なんて……
美優は、迷っていた。
「なあ! 彼氏でも居るのか?」
「居ないよ、そんなの。もう同期は皆んな結婚しちゃって、呑みの相手をしてくれるのは、いつも井上と山本だけだし……」
「そうか、井上と山本に御礼言わないとな」
「どうして?」
「美優を守ってくれてありがとうって……」
「ふふ、どうしてそうなるのよ!」
「じゃあ、何悩んでんだ?」
「あなたは、エリートまっしぐらな人だから、これからだって、どんどん忙しくなるわよ。私なんてただ歳だけ増えたシガナイOLよ」
「そんなことないよ、さっき役員と話したけど、お前のサポートは完璧だって。それに……お前、変わってない。いや、むしろ綺麗になった」
美優は、洋平に褒められることが一番嬉しい。
でも、すごく恥ずかしかった。
「美優?」
「ん?」
「今度は、結婚を前提に、付き合って欲しい!」
「また、足手纏いにならないかなぁ?」
「なるわけない! 俺には、お前しかいない」
「ありがとう。分かった! でも、1つ条件が……」
「何?」
「2人が付き合うことは、公表しない。」
「え? どうしてだよ」
「洋平の邪魔をしたくない」
「なんで、邪魔になるんだよ」
「出世するには、私なんて……」
「すぐ、私なんて……って言う! 美優の悪いくせだよ」
「だって……」
「だって! も禁止!」
「とにかく、あなたには才能があるから、行けるところまで行って欲しいの。そのお手伝いならする!」
「分かった。じゃあ、公表はしない。
でも、2人の時は、めいっぱい愛し合うこと!」
「ふふ、何よそれ」
「だから、今から行く」
「え? 今からって……」
ピンポ〜ン
「あ、誰か来た、ちょっと待ってて」
「よ!」
「えーー⁈」
「何? どういうこと?」
「俺、隣に越してきた」
「えーー!」
洋平は、日本に帰って来て、
会社の人に、住むところを探してもらうのに、
チラッと、美優の住所を見つけた。
──変わってない!
そう思ったから、同じマンションで空きがないか?
調べてもらった。
すると、偶然にも隣室が空いていたのだ。
「これからも、よろしく隣人さん!」
そう言って、玄関ドアから強引に中に入り
いきなり美優を抱きしめて、キスをした。
美優は、驚き過ぎて放心状態のまま
抱きしめられていた。
「何? どういうこと?」
「まあまあ、ゆっくり話しましょう」
そう言って、また熱いキスが降ってきた。
「ちょっと! 5年ぶりなのに……こんな所で……」
「え? なら、どこならいいの? いきなりベッド?」
「そんなこと言ってないけど……」
「お邪魔しま〜す。相変わらず、綺麗にしてるな」
グイグイ来る洋平に、呆気にとられる。
「何も無いだけよ」
「お、ビール呑んでたのか? 俺も呑もうかな」
「うん」
美優は、あまりにも突然のことで、ホントは物凄くドキドキしていた。
でも、動揺を隠しながら、冷蔵庫からビールを出し、
冷えたグラスと洋平の分のお箸と小皿を用意した。
「サンキュー! じゃあ乾杯しようか? 再会に……」
「うん」
「乾杯〜」
「乾杯!」
「あ〜美味っ! どうした?」
「突然現れて、何がなんだか……」
「ふふふ、美優!」
ソファーの隣の席をトントンと叩いてる
──あ〜ダメだ、その仕草、好きなんだよね〜骨抜きになる
そっと近づき、隣にゆっくり座る。
隣からマジマジと顔を覗き込んで、ニコニコしながら、見てる
「何?」
「いや〜美優だなぁ〜って思って……」
「当たり前じゃん」
「よく見えない」と、私の膝に膝枕をして、下から
ジーっと眺めてる
──うわっ!近っ!ヤバッ!
「そんなにマジマジ見られたら……」
そこまで言ったら、カラダを起こした洋平の唇は、
もう美優を捉えていた。
「ごめんな、長い間 待たせて」
そう言われると、涙が溢れた
「遅いよ……」
黙って彼の背中に腕を回していた。
「美優、愛してる」
「う……ん……」
「2人の時は、めいっぱい愛し合うって言っただろ?」
「うん」
「美優は?」
「愛してるよ」
熱い熱いキス
5年分の愛を込めて……
そして、ベッドまで運ばれた
洋平は、美優のカラダを順番に隅々まで
優しく愛した
ホクロ1つ見落とさないように
丁寧に丁寧に確認しながら……
「俺の美優だ。綺麗だよ」
「ふふ、ありがとう」
優しく優しく、じっくり時間をかけて
美優が感じる場所を愛する
美優も洋平のカラダを確かめるように
大好きな人の匂いを感じながら、愛する
ようやく探し物が見つかったような感覚で
涙が溢れる
「美優、大丈夫か?」
「うん、嬉しいだけ……」
「俺も嬉しいよ、また美優に会えて……
美優〜〜」
お互いに、ぎゅーーっと強く強く抱きしめ合う。
「ね〜彼女も居なくて、どう過ごしてたの?」
「ほとんど毎日、仕事。休みの日は、ず〜っと寝てた」
「嘘〜」
「暇な時は、自転車に乗っていろんな所を走ってた」
「ふ〜ん、ご飯は?」
「ほぼ外食、たまに知り合いの人の家に招かれて、
奥さんが作ってくれる料理をご馳走になったり……」
「そうなんだ」
「だから、美優のことばかり考えてた」
「ふふ、ホントかな?」
「ホントだよ。別れなきゃ良かった。なんとしてでも一緒に連れてくれば良かったって、ずっと後悔してた」
「でも、電話1本よこさなかったじゃない!」
「俺は、5年もの間、帰れないって分かって、年頃の美優に待ってて! なんて言えなかったよ。美優なら他にも周りにたくさん男が居たし、誰かとすぐに結婚するかと思ってた」
「しないわよ。正直、しよう! って思ったこともあったけど……でも、やっぱり、皆んなも私が洋平と付き合ってたのを知ってたし、杉野さんの後は、プレッシャーが大きい! って言われたこともあったなぁ〜洋平のせいだからね!」
「え? 俺のせい?」
「そうだよ、だから、責任とってもらおうと思ってたの」
「そっか、じゃあ良かった。責任取ります」
チュッ
「もう結婚するか!」
「え? ダメよ、洋平は大事な時期なんだし……」
「じゃあ、いつならいいんだ? もう俺は、いつでも良いぞ」
「う〜ん、もっと上を目指してから……」
「上って?」
「洋平が行きたい場所まで行った時」
「そっかあ〜じゃあ、もうすぐだな」
「え? そうなの?」
「うん。美優、ずっと一緒に居ような」
「うん、よろしくお願いします」
「オーー!」
チュッ
こうして、秘密の交際がまた、始まった。
会社では、あくまでも、変わらず上司と部下。
洋平は、26歳の時、電気事業部から海外事業部へ。
5年間の海外赴任を終え、31歳にして大抜擢され、
今回、電気事業部の課長となった。
異例のスピード出世だ。この先も、『部長』は約束されており、その先は……美優も楽しみにしている。
だから、邪魔なんてしたくない!と思っているのだ。
美優より、年上の人たちは、昔、2人が付き合っていたことを知っているから、たま〜にその話題が出る。
「お〜杉野くん、帰って来たか?」
「あ、ご無沙汰しております」
人事部の部長だ。
「昇進おめでとう! 大出世だな」
「ありがとうございます」
「キミも課長になったことだし、そろそろ結婚か?
ほら、付き合ってただろ? あの彼女と……」
「あ〜そうですね、でも、今はまだ仕事のことで頭がいっぱいで……」
「そんなこと言ってたら、相手もどんどん歳を取るぞ」
「そうですね……」
美優は、思っていた
──まったく! 余計なことを……大きなお世話よ!
人事部長と別れた洋平は、チラッと美優を見たが
物凄い形相で仕事を熟していたので、思わず目を逸らしてしまった。
──怖っ!でも、なんで美優は、あんなに怒ってるんだ?
そんな顔をするなら、
早く俺と結婚すれば良いのに……
もう一度、美優と真剣に話そうと、洋平は、思った。