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氷咲 吹雪❄
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氷咲 吹雪❄
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――その甘い空気は、唐突に破られた。
ガタンッ! ギギギギギッ……!!
「きゃっ!?」
「葵!」
突如、激しい揺れが車内を襲った。
汽車の速度が尋常ではない勢いで上がっていく。
窓の外の景色が恐ろしい速さで後ろへ流れていき、悲鳴を上げる乗客たちの間を縫うように、異様な熱気が立ち込めてくる。
「な、なに!? 脱線する気!?」
「違う……葵、これを見て!」
正一が指さした客室の扉の隙間から、ドロリとした黒いモヤ――禍々しく渦巻く『妖気』が溢れ出してきていた。
それと同時に、車体を激しく打ち叩くような不気味な振動と、鉄を握り潰すような咆哮が響き渡る。
『グラアアアアアッッ!!』
「なんなのこの凄まじい妖気……! 誰かを狙ってるんじゃない、汽車そのものを乗っ取って暴走させてるんだわ!」
「葵、危険だ! かなりの大物だよ!」
「乗客を乗せたまま脱線されたら全滅よ! 機関室へ行くわよ!」
わたしは真鍮で補強した新しい仕込み棒を握り締め、激しく揺れる車内を駆け出した。
正一も険しい表情で漆黒の符を構え、ピタリと背後に滑り込んでくる。
凶悪な妖の息の根を止めるべく、機関室の重い扉を勢いよく開け放った。
「そこまでよ、悪党――……って、え……?」
熱風と黒煙を吹き散らし、わたしは言葉を失った。
そこにいたのは、人を喰らう恐ろしい怪物などではなかった。
巨大な鉄の歯車、太い蒸気パイプ、打ち込まれた無数のボルト――それらが、生きている妖の肉体に無理やりぶすぶすとめり込んでいた。
血と油が混ざり合った黒い液体を流しながら、鉄の構造物と強制的に癒着させられていたのは、かつて街道で旅人の安全を見守っていたはずの優しい土地神――『道祖神』だった。
『あぁぁぁぁぁっ! 熱い……痛い、苦しい……! 誰か……止めっ……て……!』
先ほどの咆哮は、襲撃の雄叫びなどではない。 無理やり動かされるギアに肉体を内側から削り取られる、地獄のような『激痛の悲鳴』だったのだ。
「そんな……嘘でしょ……? こんなの、あんまりだわ……!」
わたしは息を呑み、仕込み棒を握る手に固く力を込めた。
コメント
1件
えっ、ちょっと待って……道祖神がこんな形で出てくるの衝撃すぎる。機械と無理やり癒着させられて苦しんでる描写、めっちゃ胸にくるわ……これ、敵かと思ったら被害者ってのがまた。葵の怒りと悲しみ、すごく伝わってくる。続きが気になる展開、びゃさんらしい絶妙な世界観の見せ方だわ🔥