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外は、酷い雨風が吹き荒れていた。
轟音と稲光が目を眩ませるような荒天の中、私はゴミだらけの路地で声を殺してひたすら泣いた。
やがて涙が枯れる頃には雷は収まり、雨もかなり小降りで辺りはもう真っ暗だった。
泣きはらした顔のまま、私はフラフラとホテルの入り口へと辿り着く。
もうみんなはとっくに寝静まっていて、誰とも顔を合わせずに済んだのが幸いだ。
暗い自室に入り、元々少なかった荷物を片端からまとめる。
〇〇(もう、ここにはいられない・・・・・・ごめんね、みんな)
何も言わずに出て行くことを、どうか許して欲しい。
優しいみんなは、例え事情を知ったとしてもきっと私の手を取ろうとしてくれるのだろう。
そこがみんなの大好きな所なのだが、今回はその優しさが問題なんだ。
その優しさはいずれ、彼ら自身を傷つける引き金になってしまいかねないから。
一通りの荷物を鞄に詰めて、クローゼットを開ける。
するとそこには、まだ見慣れない一着のコートが掛かっている。
アラスター『“こういうときは、相手の顔を立てるものですよ”』
あの日、アラスターからもらったコートだった。
特別な日に着ようと綺麗に掛けておいたのに、まさか“初めて”がこんな日になるだなんて。
〇〇「・・・・・・・・・ごめんね」
ぽつりと小さく呟いて、大切なコートを羽織る。
あの日のことを考えていると、ふとテーブル端の楽譜が目に留まった。
あの時、震える私を助けてくれたアラスターが弾いてくれた、書きかけの楽譜。
完成が楽しみだと笑ったあの笑顔が、今でも忘れられない。
気がつけば私は楽譜を手に取り、何かに取り憑かれたようにその続きを書き紡いでいった。