テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
一応rttt付き合ってる設定ではあるが
多分糖度0
最初に不穏がほんのちょっと
独自の世界観(捏造とも言う)大さじ3ほど
rtが人によっては解釈不一致
ここは展開の早いファンタジー
rt sibe
太陽が雲で隠された、暗い日だった。
雨こそ降らなかったものの、比較的強く冷たい風が吹き抜けた。
『警告、警告。ヒーローNo.0817、宇佐美リトの
負傷ゲージが85%以上を突破。
至急本人の撤退と他ヒーローの参戦を求む。』
耳に装着したインカムから、本部が発した警告が鳴り響く。でも、その音声もどこか遠くのものに感じた。
俺のヒーロー衣装はところどころ千切れ薄汚れてボロボロで、そこから露出した肌からは傷がいくつもあり血をダラダラと流していた。
そして目の前には、巨大な姿をしたKOZAKA-C。これまで集めていたがっかりポイントを使い体を強化したのだ。
現場には俺一人しかおらず、Oriensのメンツも他のエリアに発生したKOZAKA-Cの処理でこちらに合流することが出来ない状況だった。
KOZAKA-Cはそんな万事休すの様子の俺を嘲笑うかのように顔を歪め、そのまま住宅街のある方へと歩みを進めようとしていた。
このままでは一般人の危険だ。でも今の俺では到底倒すことは出来ない。ならばどうするのか。
俺は胸元に収まっているキリンちゃんに声をかけた。
「キリンちゃん」
その俺の声色にキリンちゃんはハッとしたように反応し、泣きそうな顔でブンブンと顔を振った。”分かっている”のだ。
「…頼む。
あいつを、止めなきゃ」
KOZAKA-Cを見据え、俺はキリンちゃんに頼み込んだ。キリンちゃんはしばらく目に涙を溜めながらしばらく顔をうつむかせていた。
が、やがて決心したのかきゅっと自身の顔を引き締め、俺の肩に移動した。
「…ごめん。ありがとね、相棒」
俺は差し出されたキリンちゃんの手に自身の拳をコツンとあててグータッチをした。
途端、俺の周りが発光を始める。その光はやがて熱を生み、俺を包んでいく。
バチリ、とひときわ大きな音があたりに響き渡った。
『警告、警告。過度な変身デバイス一致率の上昇を感知。
95%以上を突破する前に変身を解除し直ちに本部に
状況報告をすること。繰り返す…』
そんな警告音を最後に、俺の意識は真っ暗な底に沈んでいった。
tt side
『緊急、緊急。巨大KOZAKA-Cの信号が消滅。
代わりにヒーローNo.0817、宇佐美リトのものと思われる
超級災害レベルの雷鳴信号をキャッチ。
付近のヒーローは一般市民の避難を優先。
直ちに一般市民の安全を確保せよ。』
KOZAKA-Cを倒し終えてリト君の元へ合流しようと動き出す直前にこの報告が耳に飛び込んできた。
思わずバッと振り返ると、同じくそれを聞いたであろうマナ君とウェン君もはっとしたように顔を真っ青にした。
駆けつけてきていた本部の処理班に現場のことを任せると、俺達三人はリト君のもとへ全力で足を動かし向かった。
「これってもしかして…!」
「あぁ、リトのヤツ、無理やりデバイスの一致率
上げたんや!あれだけ無理すんなって言っとったんに…ッ!」
「連絡は?!」
「ダメ、リトだけ反応しない!」
走りながら俺達は焦りながらも会話する。
変身デバイス。それは東のヒーローにおいて重要なアイテムだ。これがないとヒーローに変身することは出来ない。更に、変身デバイスは自分の意志を持って力を貸す相手を選ぶ。
変身デバイスは基本、動物や古代生物などのDNAを元にして作られているため、デバイスとその使用者の間に「一致率」というものが存在する。
デバイスを使って変身したヒーローは一時的に元になった動物の人工DNAを体に取り込むことになる。そのDNAが人体に支障をきたす事はないのだが、例外として一致率が一定を超えると暴走してしまう場合があるのだ。
一定を超えると体内に一時的に取り入れていた動物のDNAが活性化してしまい、精神がその動物に蝕まれ最終的には本来の力をかかる負担や被害に構わず全開放し、自分の意志が完全に塗り替えられてしまう。
つまり今まさにリト君がその状況になってしまったのだ。
一致率は自分の意思でしか上げられないはず。となるとリト君が自分から危険性を加味して上げたことになる。
「ッ?!」
雷鳴信号が発せられているというところに着いた時、あまりの有り様に息を呑んだ。
目の前には、ある高層ビルの屋上に浮かびひたすら雷を発し続ける大きな光の玉。ゴーグル越しに分析すると、その光の中に眠っているようにぐったりした様子のリト君がいた。
「リト君!!」
思わず大声で彼の名前を呼ぶ。が、当然反応が返ってくるわけもなかった。
「テツ、あの中にリトがいるの?!」
「ぅん、さっきゴーグル越しだけど見えた…ッ」
「あかん、雷のせいで近づけん!」
ゴロゴロ、ビカビカ。
そんな調子であたりに雷が落とされ続けるため、俺達はリト君に近づくことが出来ない。
と、瓦礫に隠れてキリンちゃんがぴいぴいと泣いている事に気がついた。驚いてマナ君がその小さな体を掬い上げるとキリンちゃんは光の玉を指して更に泣いた。まるで「りとを、たすけて」と訴えているようだ。
さらに狙いすましたかのようにこちらに向かって雷が飛んでくる。俺達はそれぞれ避けてバラバラになった。
なんとかしようとインカムに手をかけるが、雷にやられたのか繋がらなくなってしまった。
まさに詰み。どうすれば。
「テツ!!ウェン!!聞こえるか?!」
マナ君だ。マナ君が俺達に向かって大声で叫んでいた。
「あの光は多分、リトの”そのまま”を反映しとる!!
やから視野が狭いはずや!!音で反応する!!」
「俺が雷を引き付ける!!ウェンはテツを、
あの屋上まで飛ばしたれ!!」
「やれるか?!」
「まっかせてよ!!」
「うん!!マナ君、気をつけて!!」
マナ君は俺達の返事を聞くとキリンちゃんを自身のヒーロー衣装のポケットに収め走り出した。よく見ると、自身のレイピアの先端をコンクリートで作成されている地面に接させ、キィィィィィ、と音を立てさせていた。
その音に反応したのか、雷はマナ君が走っていった方向に飛んでいく。
今しかない。
「ウェン君!!」
「振り落とされんなよテツ〜!!」
俺はすぐさまウェン君のもとに駆け寄ると、ウェン君の武器である大剣に飛び乗った。
ウェン君はそれをしっかりと確認すると、大剣を握って力を込め始めた。ウェン君の周りの地面がバキバキ、と割れ始める。
「うぉりゃぁぁぁぁああ”ッ!!」
ウェン君は雄叫びのような声を上げると思い切り大剣を俺ごと振った。ブォン、と凄まじい風切り音がなる。
それとともに俺は空中に勢いよく飛ばされる。ひゅんひゅん耳に風が通り過ぎていき、一瞬あまりの勢いに動揺しながらもビルの屋上のフェンスを掴み屋上に上がった。
バチバチバチ、と近くだとより雷の激しい音が聞こえる。
ゴーグルから見た光の中にいるリト君は、苦しそうに顔を歪めている。
俺はすぐにその光に駆け寄り、その中にいるリト君に向かって手を伸ばした。
光に飲み込まれた手がバチバチと電気を喰らい、焼けただれるような痛みが走る。
「…ッ”、ぐ、ア”〜〜”、!!」
そのあまりの痛さに顔を歪め、苦痛の声が上がり、目には涙が滲む。
だけれど、光の中に自身の身体を飲み込ませていくスピードは一切緩めない。
俺の体が光に飲み込まれるのと比例して、異物である俺を追い出すかのように痛みも強くなる。
「ッリト君”!!」
声を振り絞り最後に俺の足が飲み込まれた時、不思議ととぷん、と水のような音がした。
「…ぁ、れ」
俺はいつの間に意識を失っていたらしく、次に目を覚ました場所は、なにもないような真っ白な空間だった。天井すらもない。どこまでも広がる光のような場所だ。その実ちゃんと足場はあるので不思議である。
そして違和感なのは、ずっと口の中にほんのりとしょっぱい味がする。
それにしても、あれから…リト君が暴走してから、どれくらい時間がたった?マナ君とウェン君、キリンちゃんは無事だろうか?何より、光の中にいたリト君は?
きょろきょろと起き上がってあたりを見渡す。そうすると、彼はすぐに見つかった。俺は「…リト君」と声をかけ向き合った。
「…てつ、」
俯いていてよく表情の見えないリト君はどこかふらふらとした足取りで俺に近づくと、急にぎゅっと抱きしめた。
思わず俺の口から声にならない悲鳴が上がる。なにこれ、ぇ?!と困惑していたが、肩に濡れた感覚がするとその困惑も潮を引いていった。
「…ッ、ふ、ぅ、っ”」
次に、嗚咽が聞こえてきた。
泣いている。あのいつも底抜けに明るい、太陽みたいなリト君が。
「…ごめん、てつ、おれ、
てつを傷つけた…まなにもうぇんにも、
キリンちゃんにもめいわくかけた…」
「いたかっただろ、ごめん、ごめんなぁ、
てつ、ごめん…ッ」
リト君は俺の肩にグリグリと額を擦り付けながら、言葉を覚えたてで素直な子供のように感情を吐露し涙を流し続けた。
俺はそこで、口の中のしょっぱい味の正体に気がついた。
これは、リト君の感情だ。リト君の溢れんばかりのこの気持ちが涙のようにしょっぱくなって俺に流し込まれていた。
さっきとぷんと水のような音がしたのも、きっとリト君が泣くほどの感情を背負っていたからだろう。
俺は泣きじゃくるリト君の背中に、今まで行き場がなくて宙に浮かせていた両手を回し、ぽん、と軽く叩く。
「…仕方ないやつだなぁ、君は」
「確かに痛いよ、痛かったけど、
俺はそれでもリト君を助けたかったからここにいる」
「迷惑とか、マナ君もウェン君もキリンちゃんも、
もちろん俺も思ってないよ。そんなの気にしてたら
キリがないじゃないか。
それを言うんだったら俺なんてもっと迷惑かけてるよ」
「ほら、ここから出ようよ。
責任感じてるなら、言葉もだけど行動で
取り返していかないと」
俺はリト君の背中を一撫ですると力が抜けている隙を見て離れ、ナイフを持った。
ヒーロー衣装を解除していないので、そのままゴーグルをかけて反応を確認する。
反応があったところは一見透明で実態がないように見えたが、ナイフを突き立てると紙のようにびり、と音がなる。
そのまま思い切りナイフを振り抜くと、案外綺麗に外につながる穴が空いた。
俺はリト君に向き直りこちらに来るよう促すように手を差し出す。
少し泣き止んで落ち着いたのか、リト君は目元を赤くしながら戸惑ったようにその場に立ち止まったままだ。
「…ッでも、テツ、俺」
「あ”〜〜〜〜もう!うるせーーー!!知らねーーー!!」
まだなにかありそうなリト君に俺は大声を上げずんずんと近づいた。リト君は突然上がった俺の大声に驚いたようで固まっている。
「いいから、ここから出る!
ほら、リト君!!」
「____俺と!握手!!」
俺はリト君に向かって手を差し出し半ば無理やり手を握った。が、次の瞬間にはリト君自身が俺の手を握り返した。
その感覚を嬉しく思い安心しながらそのまま作った外への出口に向かう。
なぁ、リト君。君は誰よりも優しいから溜め込みやすい。さっきみたいにきっと、その溜め込みが爆発する時があるはずだ。
でも、大丈夫。何度でも…たとえリト君が涙の海の底に沈んでも、今みたいに手を差し伸べて、握って、引き上げるから。
俺はそんな想いを本人には秘密にして抱え、一緒に仲間の待つ外に出た。
END.
コメント
1件
一番最初からわぁーとなってしまいました!人一倍優しいrt君がこうなっちゃうのめっちゃわかります!!今回も面白かったです